ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(3)蒙求抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察:史記抄との比較を通して

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1976「蒙求抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察:史記抄との比較を通して」『学芸国語国文学』12

要点

  • 史記抄・キリシタンで得られた結論と、ウズ衰退期の蒙求抄(寛永15版)を比較する
    • ウは推量・自発的な意志を表し、ウズはベシの意味用法を網羅する
  • 1 ウズは「確かな推量」を表すとは言い難い
    • サダメテなどもウと呼応するようになっている
  • 2 「理性的な意志」の例は比較的根強い
  • 3 ウズ特有の意味領域を一部侵食している
    • ウズ(ル)ヤウガナイ(可能)と、ウズ(ル)コトヂヤ(当然・可能)がウに偏る
  • 4 史記抄同様、ウは仮定表現に用いられるが、
  • 5 蒙求抄では逆接においてもウがかなり現れる
    • シリゾケラルトヨマウガ、…
  • 「ウズの意味領域をウが襲ったということになろうが、しかし、実際は、ウズの方がその本来の意味を曖昧にすることによって、自らウとの間の緊張関係を緩めているように思われる」
    • ウは呼応や文脈によって、結果的に確かな推量や可能・当然を表すのであり、ウそれ自体にそのような意味があるのではない*1

雑記

  • 玉塵抄の語法には意外と玉塵抄以外の論文がある

*1:ここ、疑問との呼応や仮定表現などのウ本来の用法も普通にあるから、本来的でないとすると「ウの意味領域は甚だ奇異なことになる」とあるけど、そしたらウズにも同様のことが言えるのでは?と思ってしまう(多分そう)