村上謙(2012.3)「明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する」『近代語研究』21
要点
- 否定辞ヘンの成立にはハセヌ→ャセヌ→ャセン→ャヘン→ヘンが想定されるが、以下の4点の問題がある
- 成立要因が問われていない
- そもそも音変化説に無理がある(SH交替は出現環境が限定的)
- 接続面の揺れ(イカヘン・イケヘン)に対する説明が場当たり的
- 上接語の偏りが考慮されていない(アラヘンは多いがアリャヘンは僅少、など)
- アラヘンへの偏りを重視し、「アルを否定するための新たな否定辞としてヘンが成立した」と考え、
- 動詞の場合は動詞+ヌであるのに対し、アルの場合はアラヌではなくナイが用いられる
- 「この非対称性が強調される機会」が、口語文典類による話しことばの分析やデアル文の多用によって訪れ、
- その非対称性の克服のためにアラヘンが創出され、他の動詞にも用いられるようになったと考える
- 成立過程にはオマヘン・マヘン(1820~)からの異分析(オマヘ/ン→オマ/ヘン)を想定する
- オマス・マスでSH交替が起こるのはン下接の場合に限られる(*オマヒテ)、語の分析に問題が生じる
- 異分析説で残る問題については、
- ャヘンまでの成立は音変化説でよい
- イヘン(しーへん)・エヘン(せーへん)はよく分からないが、拍数を維持しながらヘンとの承接形態へ向かう中間段階として出現したといった過程が想定されるか
雑記
- 山口謠司、虚言癖なんだろうか?