鶴橋俊宏(2013.1)人情本の推量表現(2)為永春水の人情本におけるダロウ・ノダロウ ほか
鶴橋俊宏(2013.1)「為永春水の人情本におけるダロウ・ノダロウ」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出1998『日本文化研究』10
要点
- 春水人情本に下って考える
- 形態的に、
- 形容詞・マス・ナイなどにダロウが拡張するが、依然としてタダロウはない
- 一方ノダロウにはタノダロウが早くから見られ、春水人情本にも同様に見られる
- 下接語について、
- 洒落本にはダロウカが享和まで見られなかったが、春水人情本には見られる。その他は洒落本と同様
- ノダロウの場合は終止がほとんどで、まだ疑問・接続の用法が発達していない
- 用法について、
- 原因・理由を推量するノダロウはこの時期から確認できる
- 天保期以降の人情本も概ね同じ傾向を示し(5章3節「天保期以降の人情本におけるダロウ・ノダロウ」)、
- 三馬滑稽本は洒落本から変わるところがないが(6章1節「式亭三馬の滑稽本におけるダロウ・ノダロウ」)、
- 『八笑人』にはナゼ~ノダロウの例があり人情本の調査を遡る(6章2節「滝亭鯉丈の滑稽本におけるダロウ・ノダロウ」)*1
まとめ抜粋
- 江戸語のダロウの用法はおおよそ次のとおりである(p.172)
- A 単純推量(安永~)
- B 確認要求表現(明和~)
- C 原因理由推量「ナゼ~ダロウ」(天明~)
- D 疑い(ダロウカ)(享和~)
- これまでの調査に基づき、江戸語におけるノダロウの用法を仮に分類を試みるとおおよそ次の通りになる(p.174)
雑記
- これで一旦(無理やり)一区切り
*1:5章と6章、なぜこの順番なんだろう