山田潔(2001.9)「平家物語における助動詞「つ」の文章論的考察:助動詞「き」との比較を通して」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1986
これのつづき hjl.hatenablog.com
要点
- ツの完了・強意以外の意味用法の分析を、(ヌではなく)キと比較する形で行う
- 平家の異本にはツ・キの互用が多く、重なり合う部分があるようである
- 一方で、ツ・キの差異を考えると、
- ツは会話文中に多く、一方でキは少ない
- 会話文中にツ・キの両方が現れる点を見ると、既に指摘があるように、キは遠い過去、ツは近い過去を表している
- ただし、ツは過去というより、現在にほとんど近接する「直接の事柄」に用いられやすい
- キは既に「閉じられた世界」の話で、ツは、話者がその世界の中に自ら身を置いている
- ツの「過去」は、話者の中で(主観的な)「脈絡」(cf. 永野賢)として意識されていると考える
- ツは存続(テシマウ)用法を持つとされるが、あくまでも「ゐたりつ」の「たり」や、副詞・状態動詞が存続の意味を持つのであり、ツそのものが存続の意味を持つわけではない
雑記
- 修論とか書きて~