ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

三宅清(2005.3)推定の助動詞「めり」と「なり」の意味用法:証拠の在り様をめぐって

三宅清(2005.3)「推定の助動詞「めり」と「なり」の意味用法:証拠の在り様をめぐって」『国語学研究』68

要点

  • メリは視覚、ナリは聴覚に基づく推定とされるところ、Evidential の観点から改めて、視覚・聴覚という分析を超えて考えたい
  • 先行論、メリ・ナリは未然バ節の帰結にならないのでいずれも「現実性」を表すと括ることができ、すなわち、構文上はメリ・ナリに顕著な差は見られない
  • 証拠の類型を分類すると、メリは近く、ナリは遠い
    • メリの場合、
      • 1 見て判断している場合:透影見え侍り。…かしづく人侍るなめり。
      • 2 状況から判断している場合:昨日待ち暮ししを、なほあひ思ふまじきなめり
      • 3 話・音から判断している場合:(会話を承けて)人違へにこそ侍めれ
      • 4 自分自身の体験から判断している場合:それにつけて…思ひ給へ嘆き侍る
      • いずれも、証拠と判断対象との距離が極めて近い関係にあると言え、この特徴が婉曲(断定してもよいようなことを遠回しに言う)ことにも繋がる
    • ナリの場合、
      • 1 声・音から判断している場合
      • 2 話から判断している場合
        • 判断のもとになる話は、判断主体の目の前にいない場合がほとんどを占める
        • メリの場合は例が少なく、かつ主体の目の前にいる場合しかない
    • 「証拠と判断対象との間にそれ相当の距離が設けられる」と言える
    • 上代のナリは全て声・音の場合で、かつ「鳴く」「音す」など、音源に直接している例が多い(すなわち、証拠との距離が近い)

雑記

  • 働きたく……!!