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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

川瀬卓(2019.8)不定の「やら」「ぞ」「か」の東西差と歴史的推移

川瀬卓(2019.8)「不定の「やら」「ぞ」「か」の東西差と歴史的推移」金澤裕之・矢島正浩『SP盤落語レコードがひらく近代日本語研究』笠間書院

要点

  • 不定のヤラ・ゾ・カの歴史を、地域差を踏まえて考えたい
  • 近世後期においては、上方はゾ>ヤラ>カ、江戸はカ>ゾ>ヤラ
  • 落語SPレコードでは、
    • 東京でカ、大阪はゾという地域差があり、
    • 大阪ではゾが使用されつつも、カの使用が拡大する
  • 関連する複合的な現象として、
    • 副詞ドウカが東京で発達するのはカが活発であることと関連し、
    • 一方、ドウゾがゾが活発でない東京でも用いられ、独自に歴史的に展開する側面もある
    • 副助詞も同様、ナンカが東京で新たに用いられるようになる一方、ナンゾは独自に展開する
  • 他の近代大阪語資料も含めて見ると、
    • 上方・大阪において、近世後期に多かったゾを、戦後、カが上回るようになる
    • 「中央語としての東京語ないし標準語が、地域語としての大阪語に影響を及ぼしている」(p.265)

雑記

  • 3ヶ月ぶりに再開します