ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

奥村彰悟(1996.8)江戸語における「ないければ」:洒落本における打消の助動詞を用いた条件表現

奥村彰悟(1996.8)「江戸語における「ないければ」:洒落本における打消の助動詞を用いた条件表現」『筑波日本語研究』1

要点

  • 江戸語のナイケレバをネバ・ズハと比較して考える
  • 使用傾向として、
    • 明和期は、打消にはヌ・ズとナイが並用され、ナイの勢力は極めて弱い(小田切1943)が、寛政に至るとナイへと勢力が移る
    • バがつくナイケレバ・ネバ・ズハはこの傾向には沿わず、寛政に至ってもネバ・ズハ>ナイケレバ である
  • 条件表現体系内で担う位置を見ると、
    • 仮定条件は、
      • ズハが多く:もしまだ来ざア
      • ナイケレバにも仮定条件が確認される:そふいわねへけりやア、おけへりなさるめへ
    • 恒常条件にはナイケレバが多い:おれをしらねへけりやアはじのよふにおもふ世の中だ
    • 確定条件はカラ・ユヘ・ニヨッテ
    • 当為表現はネバ・ナイケレバが優勢で、ズハは特殊(ズハナルマイに偏る)
  • まとめ、
    • 恒常条件はネバからナイケレバへ、
    • 仮定条件はズハからナイケレバへという変遷の途中である

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雑記

  • 2月3月をバイアウトした~い!