ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

金水敏(2015.3)古代日本語の主格・対格の語順について

金水敏(2015.3)「古代日本語の主格・対格の語順について」江原浩樹ほか(編)『より良き代案を絶えず求めて』開拓社.

要点

  • 古代語において、Nノ・ガとNヲが一文に共起する場合に、ヲ>ガ(ヲがガに先行する)と考えたことがあるが(言語学会夏期講座2002)、反例を見落としていた
  • 特に、ノ・ガとヲの組合わせについて、上代語を対象に調査を行うと、以下の両方が現れる
    • ヲ>ガ:つぎねふや山代河を河上り我が上れば…(記57)
    • ノ・ガ>ヲ:春雨の避くれど我を濡らさく思へば(万1697)
  • 分布の特徴①
    • ヲ>ノ・ガは圧倒的にガが多く、「我が」に偏り、「我が」は動詞に近接する
  • 分布の特徴②
    • 主格と係助詞の順番は係り句>ノ・ガ主格が一般的である(野村2002など)が、ヲの場合はこれが自由である
    • [①][②係り句][③]ノ・ガ主格[④]動詞 の①~④いずれにも例があり、
      • ①我を闇にや妹が恋ひつつあるらむ
      • ②糸をぞ我が搓る
      • ③いづくにか君がみ舟を我が待ち居らむ
      • ④そこもか人の我を言成さむ
    • これは、「ノ・ガ主格が厳密にCPないしTPの中に留まるのに対し、ヲ対格は「を」を持ったまま係助詞を付加されて焦点化されたり(②)、さらに「を」を持ったまま主題化されて左方移動されたり(①)することを表すのだろう」

雑記

  • そこはさすがに自分の論文引いてくれやと思ってた人が今年の紀要ではアホほど引いていて、それはそれでなんやねんとなった