ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中川祐治(2004.3)「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに

中川祐治(2004.3)「「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに」『文学・語学』178.

要点

  • 大野(1993)の「副詞表現の発達が係り結びの衰退の要因となった」という指摘を踏まえつつ、係り結びとマコトニ文の交替の例を見る
    • 心のうちこそむざんなれ(平家) / 心の内はまことに無慚な(天草平家)
  • マコトニ文は以下のようにモデル化され、以下の特徴を持つ
    • 形容詞文ではなく、儀・事+ジャ/ゴザルとなる(話し手の判断を示す構文)
    • 特にジャとの共起が多く、マコトニはアハレ・サテモなどの感動詞と同等の、主体的意味の強い語として認められる
    • すなわち、「XハマコトニYヂャ」は一種の感嘆文で、しかし感動喚体ではないので、「本質的機能は、厳密には話し手の心情が最も直接的に表現される「感嘆」や「感動」といったものではなく、その後に生起するしみじみとした情意、より話し手の判断や認識に近づいた情意、即ち「詠嘆」にある」*1

p.17

  • マコトニ文に交替しない平家の係り結びは以下の3通り
    • 既にマコトニに準ずる陳述副詞がある
    • チカゴロなどの別の副詞に交替する
    • 他の構文に交替する
      • 訪ひ給ふぞ哀なる / ~弔はれたと申す。哀れや

雑記

  • 擬人化されたグロスが日常を過ごすアニメ「あぶりび!」どうですか?

*1:メタ言語でこういうのをやることの難しさをしみじみと感じる