森野崇(2021.12)「奈良時代の係助詞「なも」に関する考察」『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊』ひつじ書房.
要点
- 上代の宣命に見られるナモを、中古と比較しながら記述する
- まず前接語と結びについて、
- 前接語はト・テがほとんどで、中古のナムよりも種類に乏しい(まだ用法が広がっていない)
- 結びは動詞・ク語法がほとんどで推量の助動詞がなく、森野(1987b)の、「確かだと認めた内容の明示」と同様に捉えられる
- ナモと「思ふ」は、以下のような文型で、多く共起する
- ~トナモ・ミナモ思フ
- ~「思ふ類」テナモ
- また、「ナモ~。是を以ちて」のように、同様に「表現主体が判断を下した理由の特立」を行う例がある
- 以上の分析から、以下の2点が言える
- 中古のナムと上代のナモは、推量を取らない、聞き手にもちかける点など、連続性がある
- 「文中にかなり自由に投入されうる」助詞で、ゾ・カのような二文連置は成り立たず、「ク語法言い切りの文にナモを加えた文の、ク終止を連体形終止文に変えたのがナモ―連体形である」という指摘(伊牟田1976)が妥当であると考えられる
- ただし、伊牟田はク語法・連体形終止を「詠嘆表現」とするが、むしろ解説的用法のク語法(と連体形終止法)とナモの語性との相性がよかったものと見ておきたい
雑記
- これを読もうと思ってたのねん