ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

ジェネリック『文法と意味Ⅱ』をつくろう

尾上圭介(近刊)『文法と意味Ⅱ』はもう20年ほど「近刊」となっていて、そのこと自体がややネタと化している。

editech.hatenablog.jp

*1

Ⅱの目次は実は『文法と意味Ⅰ』に載っていて、Ⅰ・Ⅱはあわせて2005年に博論『文法と意味の交渉に関する研究』として提出されているので、元が論文であるものはそれに当たり、講義・講演資料の部分は博論を取り寄せればジェネリック『文法と意味Ⅱ』が作れるのでは?

ということで、Ⅰに示された目次と、その初出を示します。

(2022/11/30、博論の目次と中身も複写したので、Ⅰとの差分と、分かっていなかったところについても追記しました)

  • 第1章 「は」、「も」、題目語
    • (重出)文核と結文の枠―「ハ」と「ガ」の用法をめぐって―…言語研究63(1973年→文法と意味Ⅰ)
    • 第1節 提題論の遺産…月刊言語6(6)(1977年)
    • 第2節 助詞「は」研究史における意味と文法…神戸大学文学部三十周年記念論集(1971年)
    • 第3節 「象は鼻が長い」と「ぼくはウナギだ」…月刊言語10(2)(1981年)
    • 第4節 「は」の係助詞性と表現的機能…国語と国文学58(5)(1981年)
    • 第5節 「ぼくはうなぎだ」の文はなぜ成り立つのか…国文学(学燈社)27(16)(1982年)
    • (重出) 不定語の語性と用法…副用語の研究(1983年→文法と意味Ⅰ)
    • 第6節 「は」の文法的性格と表現上の働き…"Wa: its grammatical properties and discourse roles" Working Papers from First SDF Workshop in Japanese Syntax (1986)
    • 第7節 認知文法的に見た助詞「は」「も」…第3回CLC言語学集中講義発表資料(1994年)
    • 第8節 「は」の意味分化の論理―題目提示と対比―…月刊言語24(11)(1995年)
    • 第9節 主語にハもガも使えない文について…国語学会昭和62年春季大会(1987年)、認知科学会第13回大会ワークショップ「日本語の助詞の有無をめぐって」(1996年)
    • 第10節 書評・青木伶子著『現代語助詞「は」の構文論的研究』…国語学202(51-2)(2000年)
    • 第11節 係助詞のニ種…国語と国文学79(8)(2002年)、Ⅰの目次にはなく博論のみ
  • 第2章 主語、ラレル文
    • 第1節 主語・主格・主題…日本語学4(10)(1985年)
    • 第2節 ラレル文の認知文法的把握…第5回CLC言語学集中講義資料(1996年)
    • 第3節 日本語の主語の認知文法的把握…第6回CLC言語学集中講義資料(1997年)
    • 第4節 文法を考える・主語(1)~(4)…日本語学16(11,12), 17(1,4)(1997-98年)
    • 第5節 国語学認知言語学の対話 主語をめぐって…月刊言語26(12)(1997年)
    • 第6節 文法を考える・出来文(1)~(3)…日本語学17(7,10), 18(1)(1998-99年)
    • 第7節 二重主語とその周辺 日中英対照…月刊言語27(11)(1998年)
    • 第8節 ラレル文の多義性の構造と主語…文法学研究会第2回集中講義(2000年)、文法学研究会2002年度連続公開講義(2002年)
    • 第9節 話者になにかが浮かぶ文―喚体・設想・情意文・出来文―…月刊言語31(13)(2002年)、Ⅰの目次にはなく博論のみ
    • 第10節 ラレル文の多義性と主語…月刊言語32(4)(2003年)、Ⅰの目次にはなく博論のみ
  • その他メモ
    • 尾上(2004)「主語と述語をめぐる文法」尾上編『朝倉日本語講座6 文法Ⅱ』(朝倉書店)には、以下の2本が「尾上2004近刊に収録」として挙がっている。
      • 係助詞の二種…国語と国文学79(8)(2002年)
      • ラレル文の多義性と主語…月刊言語32(4)(2003年)
    • これはくろしおの近刊情報(冒頭リンク)の目次にも入っており、その目次には次の論文も挙がっている。
      • 話者になにかが浮かぶ文―喚体・設想・情意文・出来文…月刊言語31(13)(2002年)
    • 日本語文法学会編(2014)『日本語文法事典』(大修館書店)には、Ⅱがもはや(近刊)ではなく尾上(2014)として載っており*2、「出来文」の項目(pp.292-293)の参考文献に、「尾上圭介(2014)『文法と意味Ⅱ』くろしお出版,第5章第8, 9, 10, 14節.」とある。

*1:不定語の語性と用法を読んでたのかな

*2:だから、私達がたまたま出版されてない方の世界線に乗ってるだけなのかもしれない(2015年度の理論言語学講座の概要でも近刊になっていないし)