ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

橋本博幸(1990.6)漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合

橋本博幸(1990.6)「漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合」『訓点語と訓点資料』84.

要点

  • サダメテをケースに、「(漢文)直訳語がどのように国語文に受容されていったか」(例えば、意味や用法はそれをそのまま踏襲するのか?)を考える。
  • 訓読文におけるサダメテの用法は以下のように整理され、
    • 1 推量表現中のもの
    • 2 断定表現中のもの
      • a 既定の事柄を表す表現中のもの(定めて亡ぜり)
      • b 説明表現中のもの
      • c 恒常的な事柄を表す表現中のもの(≒必ず~)
    • 3 意志表現中のもの
    • 4 命令表現中のもの
    • 5 質問表現中のもの
  • 国語文においては、
    • 記録体においてはほとんどが、「定~歟」の形式を取り、これは(疑問というよりは)推量表現に甚だ近い。また、「定知」も慣用的に用いられる(→2a)。
    • 和文において受容されたのは 1 のみ(2aも見られるが、訓点特有語とともに現れ、使用に制限がある)
    • 片仮名交じり文においては訓読文的用法も認められるが、今昔での改変箇所は多くが推量表現中での使用であり、「国語文中での基本的用法は「サダメテ」を推量表現中で使用するものである」と結論される。
  • この意味差についての説明、
    • サダメテが国語文中に原則的に導入されなかったのは、訓読文のサダメテと国語文のカナラズの用法が類似することによる。
    • カナラズも推量表現中で使用されるが、サダメテは「より冷静な、客観的判断としてのキット」である(旧大系今昔補注)であり、カナラズの「強い信念、もしくは積極的な主張」と意味差があるために併存し得た。
      • この意味差はもともと存したものではなく、サダメテが記録体などで使われる間に微妙に意味を変化させたことによるものと考えられる。(三宝感応要略録に「定」、今昔に「必ズ」の箇所がある)

メモ

  • 「本来は訓読文に由来する語であっても時間の経過とともに、次第に特定位相に偏らずより一般的・日常的に使用されるようになっていく場合もあり得る」(まとめ、p.60)

雑記

  • 学会の発表の感想(特にマイナスの)をTwitterにバカスカ書き込むの、あんまりいいことじゃないと思う