中本茜(2016.2)「天草版『平家物語』の副詞「まことに」の付加について」『国文学論叢』61.
要点
- 天草平家が評価の語にマコトニを付加するのは、「物語理解のため」という理由を超えた編纂態度であり、編者の関心の所在や主題の所在を窺うことができるのではないか。
- 中川(2004)はコソ・ゾの係り結びがマコトニと交替する例を多く挙げるが、以下の例も同程度見出され、交替関係とまでは言い難い。「このことから天草本の「まことに」の付加は、編者の意志によるものであると十分に考え得る」。
- マコトニが付加される例を見ると、特に、登場人物の置かれた状況が「盛から衰へ」と一変する場合に偏る。
- このことから、編者の関心は、因果応報よりも仏教的無常観・人間の梅井の不定さにあるものと考えられる。
- ハビアンは『妙貞問答』でも「人間の運命の不定さ」によって神の存在を見るが、これ以前のキリシタン書には運命の不定さを用いる例は確認できない。
雑記
- 授業のストックがなくなるとき、ストック天皇のことを考える
*1:確かに「交替とはいえない」ことの論拠にはなるが、「マコトニの付加が編者の意志による」ことの論拠に加えていいのか?