ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

外山映次(1957.12)質問表現における文末助詞ゾについて:近世初期京阪語を資料として

外山映次(1957.12)「質問表現における文末助詞ゾについて:近世初期京阪語を資料として」『国語学』31.

要点

  • 16世紀末まで、疑問詞を用いた質問表現の基本的形式は「疑問詞+ゾ」であるが、17世紀中葉に至って、ゾの消滅した形式が多く見られるようになる。
  • このゾは以下の2種に分けられ、質問以外の場合に用いられる第2類のゾは極めて少ない(質問の場合には普通にみられる)。
    • 第1類:相手へのもちかけ(陳述)の働きを持つ。単なる文末助詞。「清盛の嫡子をば何と言うたぞ」
    • 第2類:指定判断(叙述)と相手へのもちかけ(陳述)との働きとを持つ。叙述性をも持った文末助詞。「いつの間に変りはてた御心ぞ」
  • この第2類のゾがヂャにおかされる形で次第に消滅していき、
  • それによって疑問詞+ゾの呼応が一部崩れたため、その影響を受けて第1類でもゾの脱落が起こったと考える。
    • なお、近松・虎寛本では、疑問代名詞の場合に副詞・連体詞に比してゾの脱落が起こりにくく、
    • キリシタン資料でも「いかなこと」などの慣用的な場合にはゾの脱落が早く、
    • 浄瑠璃では敬意が高いほど(響きの強い)ゾが脱落する傾向にある。

雑記

  • 飲み物をのんもんというとき、諺文のこと考える