金水敏(2012.11)「疑問文のスコープと助詞「か」「の」」『国語と国文学』89(11).
要点
- 前稿(近代語研究16、前記事)で未検討の問題について考える。
- カの出現と働き/他の疑問詞との対比/「いったい」「だろう」、丁寧体がノの出現に与える効果
- カの出現に、直接疑問文であるか間接疑問文であるかが大きく関与することを踏まえておく。
- 間接疑問文の場合、カ(と「かどうか」)が疑問のスコープを示す(このカは補文辞的)。
- 直接疑問文の場合、節末にカは必須でなく、狭い意味での終助詞か、文末の音調が音形化したものと見られる。
- ノと疑問のスコープの関係性について、
- 「いったい」とノの呼応関係は、ノが、「いったい」の主観的な意味と連動している可能性を示唆する。
- 田窪は、マルチプル・チョイス式ではなく、穴埋め式の場合にはノが義務的であるとするが、マルチプル・チョイスの「どっち」の疑問文に「いったい」を付加すると、ノが義務的になる(一体どっちがうまいのか)ことは、この一般化に反する。
- 間接疑問文や潜在(潜伏)疑問文の場合、ノは使用されにくい(だれが源氏物語を書いたか答えなさい/源氏物語の作者を答えなさい)。
- λ(x) [xが源氏物語を書いた] のような関数構造を、疑問詞とカが作り出していると考える。
- 真偽疑問文の場合、ノはそれ自体で主観的な意味を表すのではなく、焦点のスコープ明示に用いられる。
- 「いったい」とノの呼応関係は、ノが、「いったい」の主観的な意味と連動している可能性を示唆する。
- 焦点のスコープ明示のためにノが必要な構文を「焦点卓立構文」と呼ぶとき、上の事例は以下のように一般化される。
- 疑問詞疑問文は疑問詞と「か」や音調によって関数的に解釈されるので、(ノを持つ)焦点卓立構文である必要はない。
- 「いったい」は、焦点卓立構文を要求する。
- 普通名詞句の場合でも(久野の一般化)、マルチプル・チョイス式焦点として解釈される場合(ここまでは電車で来ましたか)は関数的な解釈を受けるので、焦点卓立構文である必要がない。
雑記
- 心変わりが禁止カード解除!?