ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

高橋淑郎(2005.3)大学講義を対象とした類型的文体分析の試み

高橋淑郎(2005.3)「大学講義を対象とした類型的文体分析の試み」中村明ほか編『表現と文体』明治書院

要点

  • 話し言葉・書き言葉という枠組みを超えて、討論との比較に基づいて、講義の言語的特徴を明らかにしたい。
  • 講義と討論のコミュニケーション成立上の違いは「独話か対話か」「情報の伝達か意見の主張か」にまとめることができ、この相違点を言語的に捉える観点として、以下の3つに注目する。

p.36

  • ①疑問表現:話し手は疑問を持っておらず自分で答える疑問表現(自問自答形式の疑問表現)が、講義には多い。
    • 「今週からはどんな勉強をするのか,っていうと,2つの変数を同時 に取り上げて分析する方法について勉強していきます。」
    • これは、「本来ならやりとりのある言語表現で使われるはずの疑問表現による問答を,独話の世界で擬似的に再現することで聞き手を引き込もうとしている」ものである。
  • ②接続詞:講義では、説明が多く、事実・出来事を対象の側の時間的・論理的展開にそって述べる姿勢が強いのに対し(そうすると、そして、つまり)、討論では、前の文と後ろの文を話し手の積極的な判断で結びつけたり、前の文に対して反論したりする姿勢が強い(だから、つまり、それから)。
  • メタ言語表現:特に「先行発言焦点化」に着目すると、講義では自分の選考発言に言及するものだけしか見られないのに対し、討論では、他者の発言に言及するものもある。*1
    • 「結論としてはTさんが言われたように、~」(討論)
    • 「で、しかし、今ちょっと見たように、~」(講義)
  • メモ:「表1で示した成立上の条件に対応すると考えられる分析観点はほかにも終助詞,挿入語句,倒置文,指示表現等が挙げられるが,具体的な分析は今後の課題である。」(p.44)

雑記

  • 講義の文体やってると、講義のときもじもじしちゃいそう

*1:現象としては面白いし、でもそうまとめられると、それはそうだろうと思うところもある