三村一貴(2020.10)「上古漢語のモダリティーマーカー「蓋」について:その本質的機能」『中国語学』267.
要点
- 上古漢語の「蓋」の機能について考える。
- 「蓋」について、以下の仮説を提出する。
- 本質的機能:「「蓋」は、モダリティーマーカーであり、発話時に先行する事柄について、真偽判定を行わずに陳述する心的態度を表す」
- 派生的機能:「蓋」はポライトネスを表示する機能を語用論的に生ずることがある。
- この枠組により、「蓋」の以下の例が統一的に説明できる。
- 真偽判定の保留
- 発話時との前後関係:発話時に先行し、その過去志向性が論理関係に及ぶと、遡及推論が行われることもある
- 伝聞表現の共起:非断定の心的態度を取るために、「聞」「云」などの伝聞表現と共起しやすい
- ポライトネス:「どっちつかず」から派生して、控えめな語気(~かもしれないし、~ないかもしれない)を持つ*1
- 「蓋」を確信度の高いものとする説があるが、確信度の高低や、情報取得経路も文脈に依存するため、従い難く、むしろ、確信度に言及しないことが本領であると考えられる。
雑記
- こっそり再開できるかもしれないし、できないかもしれない
*1:山岡政紀(2016)「カモシレナイ」における可能性判断と対人配慮 っぽい