日本語文法学会第19回大会@立命館大学
日本語文法学会 The Society of Japanese Grammar
昨日の続き
チュートリアル 野間純平「方言におけるノダ文の機能」
- 要点:方言のノダ相当形式について、「提示」(私、用事があるんだ)、「把握」(きっと用事があるんだ)の形式分担がある方言(複数のノダ相当形式を持つ方言)のあり方や、いわゆる命令のノダのあり方、標準語との異なり方を示すことにより概観
- おもしろかった
第19回シンポジウム「歴史的観点から見た日本語文法」
ジョン・ホイットマン「上代日本語と琉球諸語・西南九州の格類型について」
大西拓一郎「方言から考える動詞否定辞中止形」
- 要点:否定中止(しないで)の方言におけるあり方三種類、「否定辞+助詞」、「否定辞+補助動詞」(行カンジョッテ<行かんでおいて)、「コナシ」の三種の型の分布と解釈
- コナシはコソナシ>コナシでなくコトナシ>コナシではないかという聴衆コメントについて、「(っ)こ」の初例は安永頃だが、幕末に「のがれッこのない兄弟縁者」(毬唄三人娘)で~コの名詞句を作っていたり、 明治期に入って「そう高く売れっこはないさ」(漱石・門)、「喧嘩の起りッこは無い」(たけくらべ)の例(こちらは異分析の可能性あり)があり、コトナシ>コナシが支持される(ただし、これと否定中止のコナシが同源かは別の話)
- 「連用形なのは名詞句作るからそれでいい」という三宅先生の同調コメントは正しいが、室町の「連用形ゴト」に類似するものが、時代的に連続しない近世後期に(しかも江戸に)現れるのはかなり奇妙
青木博史「「補助動詞」の文法化―「一方向性」をめぐって―」
- 要点:「てくれる」(補助動詞が先行)、「てござる」(補助動詞が先行)の例から、本動詞→補助動詞という意味の波及の反例を示し、一方向性に疑義を投げかける
- 補助動詞側で変化が起こるのは当たり前だし、それが本動詞側に波及するのもまあ当たり前で、金水2001の文言を殊更引いて言うことだろうか?という感じはした(本当に誰しもが「本動詞→補助動詞」という意味変化の経路を想定しているのか?という)
雑記
- シンポジウム何回こういうテーマでやんねんと思っていたら、文法学会で「歴史」に焦点があたった回はなんと今回が初めてだったと知る