ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

田中牧郎(2015.5)明治後期から大正期に基本語化する語彙

田中牧郎(2015.5)「明治後期から大正期に基本語化する語彙」斎藤倫明・石井正彦編『日本語語彙へのアプローチ―形態・統語・計量・歴史・対照―』おうふう 要点 明治後期から大正期にかけて基本語化する語彙には以下の3類がある 口語性の強い語 新概念を表す…

田中牧郎(2015.4)近代新漢語の基本語化における既存語との関係:雑誌コーパスによる「拡大」「援助」の事例研究

田中牧郎(2015.4)「近代新漢語の基本語化における既存語との関係:雑誌コーパスによる「拡大」「援助」の事例研究」『日本語の研究』11(2) 要点 雑誌コーパスの頻度の調査により、漢語の基本語化を捉える 拡大・援助の基本語化は既存語との類似性を高める…

近藤泰弘(2000.2)モダリティ表現の変遷

近藤泰弘(2000.2)「モダリティ表現の変遷」『日本語記述文法の理論』ひつじ書房、原論文は近藤(1993.5)「推量表現の変遷」『言語』255 前提 ム・ラム・ケム・ベシ・マジ・ジ・メリ・ナリの現代語への変遷について考えたい 分類 以下の3分類とする A ベシ…

近藤泰弘(1991.3)中古語におけるモダリティの助動詞の体系

近藤泰弘(1991.3)「中古語におけるモダリティの助動詞の体系」『日本女子大学紀要(文学部)』39、近藤(2000)による 前提 中古語の(広義)モダリティの体系を構文的性格から考えたい 助動詞の分布と従属度 まず、述語としての性格から、とりうる形態の…

鈴木丹士郎(1999.10)近世における形容詞シシ語尾の展開

鈴木丹士郎(1999.10)「近世における形容詞シシ語尾の展開」『近代語研究』10 要点 近世の形容詞シシ語尾には終止法と中止法があり、 終止法が典型的に、強調の場合に用いられた その他形容詞の特殊な用法について シシ語尾の用法 終止法に使われる場合と特…

松尾弘徳(2008.3)因由形式間の包含関係から見た天理図書館蔵『狂言六義』

松尾弘徳(2008.3)「因由形式間の包含関係から見た天理図書館蔵『狂言六義』」『文献探究』46 要点 天理本の因由形式の包含関係は中世末のそれと、天理本の内部変異を反映する 前提 李(1998)の観点に基づき、天理本における因由形式の包含関係を調べたい …

李淑姫(2002.8)『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層

李淑姫(2002.8)「『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層」『筑波日本語研究』7 要点 応永本論語抄のニヨッテは、キリシタン資料・虎明本と比べると階層的にはホドニに近い 前提 抄物における因由形式についての小林1973の記述 ホドニ・ニヨッテは口語…

李淑姫(2000.8)キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に

李淑姫(2000.8)「キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本ではC類だったトコロデ・アイダが、キリシタン資料ではB類だった 前提 虎明本を分析した李(1998)では、 ニヨッ…

李淑姫(1998.10)大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために

李淑姫(1998.10)「大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために」『筑波日本語研究』3 要点 虎明本の因由形式を、南の従属句の観点に基づいて分類する 前提 中世の因由形式の包含関係を階層的分類と関連付けて考えたい ホドニ…

竹内史郎(2018.3)動詞「ありく」の文法化:平安時代語のアスペクト表現における一考察

竹内史郎(2018.3)「動詞「ありく」の文法化:平安時代語のアスペクト表現における一考察」『国語語彙史の研究』38 要点 アスペクト的に使われるアリクの文法化について記述し、 文法化研究と琉球諸語研究に位置付ける 琉球諸語の「歩く」 伊江島方言におい…

小島聡子(2002.3)古典語のテ型の一用例:「~てやる」

小島聡子(2002.3)「古典語のテ型の一用例:「~てやる」」『明海日本語』7 要点 中古において、補助動詞と解すべきテヤルの例はない 前提 テ形補助動詞のテヤルについて、現代語訳と古文の意味との関係に注意しつつ、中古の例を検討する ヤルの意味を確認…

竹内史郎(2011.11)近代語のアスペクト表現についての一考察:ツツアルを中心に

竹内史郎(2011.11)「近代語のアスペクト表現についての一考察:ツツアルを中心に」青木博史編『日本語文法の歴史と変化』くろしお出版 要点 ツツアルの歴史と意味変化を、ヨル・トルとの共通性に基づいて体系的に見つつ、 共通語による文法史研究の有用性…

福嶋健伸(2011.3)中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形

福嶋健伸(2011.3)「中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形」『国語国文』80(3) 前提 ウ・ウズ(ル)が連体節内に生起することについて、 この学者を殺さうことは本意ない / 不慮の恥にあわうずる事わ家のため、 山口(1991)は「ムードという主…

高山百合子(2015.8)佐賀方言における用言の「語幹化」

高山百合子(2015.8)「佐賀方言における用言の「語幹化」」『人間文化研究所年報(筑紫女学園)』26 要点 佐賀方言「ハヤカ」「リッパカ」など、カ語尾が語幹に取り込まれていることを指摘し、 これがラ行語末促音形にも見られることも示し、種々の現象を「…

京健治(2003.12)否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察

京健治(2003.12)「否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察」『語文研究』96 要点 否定過去のナンダの成立と、特に連用形ナンデ、並立助詞的ナンダリに注目しつつ、 ナンの由来にはヌアッタ説を採る 前提と問題 ナンダ→ナカッタへの交替については詳しい…