2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧
増井典夫(2015.2)「形容詞終止連体形の副詞的用法」『近代語研究』18 要点 今で言う「すごいおいしい」の近世・近代におけるあり方 上方ではえらい→きつい 江戸・東京ではきつい→おそろしい→すごい この用法の語は、一時代に一語だけが要請される、とする…
吉井健(2018.6)「「結果的表現」から見た上代・中古の可能」『井手至博士追悼 萬葉語文研究 特別集』和泉書院 ユ・ラユ、ル・ラル ユ・ラユの場合、前接動詞は忘る・取る・寝のみで、否定を伴う例ばかり 平安のル・ラルも同様 肯定可能も、「見おろさるる…
青木博史(2018.3)「非変化の「なる」の史的展開」『国語語彙史の研究』37 計算的推論を表す「非変化」の「なる」の史的展開について このあたりは葛飾区になる。 三上の枠組みでは「かみつく」は他動詞になる。 併せて、「対人的行為」を表す「非変化」の…
森勇太(2018.5)「中世後期における依頼談話の構造:大蔵虎明本狂言における依頼」高田博行・小野寺典子・青木博史『歴史語用論の方法』ひつじ書房 要点 虎明本における依頼の談話構造について、配慮表現史の観点から 同論文集所収川瀬論文と相補的 hjl.hat…
小柳智一(2012.12)「被覆形・情態言・形状言・情態性語基」高山善行・青木博史・福田嘉一郎編『日本語文法史研究 1』ひつじ書房 小柳(2011)とセット hjl.hatenablog.com 要点 いわゆる被覆形周辺の概念整理と、未然形の成立 有坂の「被覆形」 単独語形を…
山本真吾(2017.9)「訓点特有語と漢字仮名交じり文:延慶本平家物語の仮名書き訓点特有語をめぐる」『訓点語と訓点資料』139 要点 『つきての研究』以降における「漢文訓読語」の批判的総括 漢文訓読語、訓点語、訓点特有語 築島裕『平安時代の漢文訓読語に…
川瀬卓(2018.5)「前置き表現から見た行為指示における配慮の歴史」高田博行・小野寺典子・青木博史『歴史語用論の方法』ひつじ書房 要点 行為指示場面における、定型的前置き表現 すみませんが、この書類に署名をお願いします。(恐縮・謝罪) お菓子を作…
大堀壽夫(2012.11)「文の階層性と接続構造の理論」『国語と国文学』89-11 要点 南モデルに、RRG(Role and Reference Grammar)の理論を導入し、南モデルの現代的意義を検討する RRG RRG*1は、文の構造を3つの層からなるものと考える 内核(nucleus)、中…
山田潔(2015.3)「『玉塵抄』の並列表現:「ツ」「タリ」の用法」中村綠郎編『日本語史の研究と資料』明治書院 要点 ツ・タリによる並列表現に関して、玉塵抄の定点観測に基づき、タリがツを侵食する過程を見る ツの用法 V1V2ツ:アガツヽサガツヽ -対義と…
小柳智一(2011.3)「上代の動詞未然形:制度形成としての文法化」万葉語学文学研究会編『万葉語文研究 6』和泉書院 要点 上代の未然形が表す機能を整理することで未然形の機能を分割し、成立論に及ぶ 未然形の整理 上代の動詞活用に対する2つの立場 成立論…
鈴木浩(1990.9)「接続助詞「し」の成立」『文芸研究(明治大学文学部紀要)』64 要点 接続助詞「し」の成立に関して、 仕事はないし、他にすることもない 不十分終止から発生したとする考えがあるが、そこを詳しく検討する 「マイシ」に関して 初期の例は…
石山裕慈(2018.10)「「漢字音の一元化」の歴史」『国語と国文学』95-10 要点 日本漢字音の呉音・漢音などからなる複層性の区別が、明治以降に薄れていくことについて 明治以降に屋名池(2005)*1があるが、それ以前にも「一元化」の文脈に位置付けられるも…
岩田美穂(2006.12)「並列形式「ナリ」の変遷」『待兼山論叢』40 要点 鈴木(1993)の修正 hjl.hatenablog.com ナリの並列とこれまでの問題点 基本的な機能:ある事態の要素を例示的に列挙していくこと 選択的不定性の含意:それらの要素から想定される背後…
高山善行(2014.1)「条件表現とモダリティ表現の接点:「む」の仮定用法をめぐって」益岡隆志・大島資生・橋本修・堀江薫・前田直子・丸山岳彦(編)『日本語複文構文の研究』ひつじ書房 要点 「む」の文中用法の一つである仮定用法についての記述 仮定のム…
佐々木隆(2012.3)「二つの目的語をもつ上代語の構文:助詞「を」の機能」『人文』10 要点 上代の「二重ヲ格」(に見える)構文についての分析 上代の場合、2つの目的語のうち1つめだけがヲを伴う「二重目的語構文」と呼ぶべきもの 上代の二重目的語構文 上…
鈴木浩(1993.6)「ナリによる並立表現における選択用法成立の経緯」『国語学』173 要点 並立助詞ナリの成立と、用法派生に関して 聯立のナリの成立 此島説「AなりともBなりとも」→「AなりBなり」は受け入れがたく、不十分終止からの発達を想定する 近松の例…
大木一夫(2012.9)「不変化助動詞の本質、続貂」『国語国文』81-9 hjl.hatenablog.com 要点 金田一の論証方法に従って分析を進めると、実は金田一の結論とは異なる帰結(文末に現れる形式も客観的である)が導き出される 併せて、金田一の指摘の現代的意味…
尾上圭介(2012.3)「不変化助動詞とは何か:叙法論と主観表現要素論の分岐点」『国語と国文学』89-3 hjl.hatenablog.com 要点 現代のモダリティ論は非現実形式としてのモダリティ(A説)と話者の主観表現としてのモダリティ(B説)に分かれ、金田一の不変化…
このあたりを読む 金田一春彦(1953)「不変化助動詞の本質:主観的表現と客観的表現の別について」『国語国文』22-2, 3 金田一春彦(1953)「不変化助動詞の本質、再論:時枝博士・水谷氏両家に答えて」『国語国文』22-9 尾上圭介(2012.3)「不変化助動詞…
大川孔明(2017.9)「和漢の対立から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『訓点語と訓点資料』139 要点 計量的観点による平安時代の和文体・漢文訓読体の文体対立・類型の分析 文体類型 CHJを用いて、語彙の対立を文体対立として見ることで分析 漢語の使…
小柳智一(2014.10)「「じもの」考:比喩・注釈」『萬葉集研究』35(塙書房) 要点 次のような「じもの」について 鳥じもの海に浮きゐて沖つ波騒くを聞けばあまた悲しも(万1184) 吾妹子が形見に置ける緑児の乞ひ泣くごとに取り委す物しなければ男じもの腋…
青木博史(2011.6)「日本語における文法化と主観化」澤田治美編『ひつじ意味論講座5 主観性と主体性』ひつじ書房 要点 いわゆる「主観化」に関する批判的検討 これが一方向的な変化かどうか 「文法化」と関連付けられるものかどうか 「~キル」 語彙的複合…
衣畑智秀(2007.7)「付加節から取り立てへの歴史変化の2つのパターン」青木博史(編)『日本語の構造変化と文法化』ひつじ書房 要点 係り結び、間接疑問文はいずれもその成立に注釈節が想定されるが、異なる特徴(係り結びは直接疑問)を持つ 「注釈節のよ…
Tomohide Kinuhata. 2012. Historical development from subjective to objective meaning: Evidence from the Japanese question particle ka. Journal of Pragmatics 44. 著者Webサイトにプレプリントあり(PDF) 要点 日本語におけるカの間接疑問文の発達…
諸星美智直(1992.4)「近世武家社会におけるナ変動詞の五段化について」『国学院雑誌』93-04、(2004)『近世武家言葉の研究』清文堂 所収 ナ変・五段シリーズ、これにて一旦終了 hjl.hatenablog.com hjl.hatenablog.com hjl.hatenablog.com 要点 武士道と…
辛島美絵(1989.6)「国語資料としての仮名文書:鎌倉時代の二段活用の一段化例、ナ変の四段化例等をめぐって」『奥村三雄教授退官記念 国語学論叢』桜楓社、同(2003)『仮名文書の国語学的研究』清文堂所収を参照 引き続き、ナ変動詞の問題を取り上げる。 …
坂口至(2001.4)「近世中期上方歌舞伎脚本資料に見えるナ変・下一段の四段化について」迫野虔徳編『筑紫語学論叢 奥村三雄博士追悼記念論文集』風間書房 要点 タイトルまんま ナ変の四段化 当期のナ変の四段化率は低い*1 イヌの方がシヌよりも進んでいる 「…
山内洋一郎(2002.3)「ナ変動詞の通時相:ナ変の四段化はなかった」『国語語彙史の研究』21 概説書で「そしてナ変も四段化した」みたいに適当に説明されてることが多いので… 要点 ナ行変格活用の四段化(五段化)に関して、 ナ変の「死ぬ」が衰退してもとも…
原田大樹(2009.12)「昭和30年代の共通語指導における「懲罰」と「奨励」:鹿児島県の方言札・表彰状等を通して」『広島大学大学院教育学研究科紀要 第2部』58 要点 懲罰としての方言札が強調されがちだが、実はそうではない共通語使用の奨励という側面もあ…
福元広二(2014.6)「初期近代英語期における仮定法の衰退と I think の文法化」金水敏・高田博行・椎名美智編『歴史語用論の世界:文法化・待遇表現・発話行為』ひつじ書房 要点 挿入詞的 I think の発達を、近代の仮定法の衰退と結び付けて考える 挿入詞的…