ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

宮内佐夜香(2007.6)近世後期における情意的逆接表現の実態:ノニ・モノヲの用法の差異について

宮内佐夜香(2007.6)「近世後期における情意的逆接表現の実態:ノニ・モノヲの用法の差異について」『都大論究』44 要点 近世後期の不満・非難を表す逆接確定条件表現「情意的逆接表現」の様相と差異、通時的変化について考える 洒落本~人情本の例は以下の…

宮内佐夜香(2003.4)江戸後期から明治初期における接続助詞ニ・ノニの消長

宮内佐夜香(2003.4)「江戸後期から明治初期における接続助詞ニ・ノニの消長」『日本語研究(都立大)』23 要点 ニ・ノニの仕様比率(消長)と、意味用法の変化について考える ノニの成立は準体助詞ノと関わる 明和以降洒落本において、ノは極めて少なく、…

近藤泰弘(1997.7)「文の構造」をどう扱うのか:古典語の複文構造の概観

近藤泰弘(1997.7)「「文の構造」をどう扱うのか:古典語の複文構造の概観」『国文学解釈と鑑賞』62(7) 要点 南の従属節分類に従って源氏の従属節を分類すると以下の通り A:て(様態)、つつ、ながら、で(否定)、連用形 B:とも、ば(仮定)、は(仮定)…

須田淳一(2005.11)ミ語法の時と主体

須田淳一(2005.11)「ミ語法の時と主体」『国語と国文学』82(11) 要点 ミ語法のミは、意味的には属性と活動、機能的には修飾と述定に跨る(須田1997) これを踏まえて、統語論的振る舞いを考えたい (i) ミは形態的テンスを欠き、キ・ケリやムとも共起しない…

須田淳一(1997.7)「単語」をどう扱うのか:「を+ミ語形」構文の場合

須田淳一(1997.7)「「単語」をどう扱うのか:「を+ミ語形」構文の場合」『国文学解釈と鑑賞』62(7) 要点 ミ語法のミの位置付けについて、「品詞相互が緩やかに連続している」という考え方に基づいて考える 意味的・形態的・構文的に、動詞性・形容詞性を…

ノートPCから4Kディスプレイに出力したい

問題の所在 大きいのはよいことらしいので43インチの4Kディスプレイ(LG 43UD79T-B)を買ったのだが、ノートPCに繋いでも1920*1080でしか表示されない。設定 > ディスプレイの解像度では、1920*1080以上が表示されないし、インテル謹製(インテル グラフィッ…

山本淳(1996.12)「古今集」俗言解に見える主格表示:『遠鏡』『鄙言』間の訳出の差異から

山本淳(1996.12)「「古今集」俗言解に見える主格表示:『遠鏡』『鄙言』間の訳出の差異から」『米沢国語国文』25 要点 山本(1996)の続き 遠鏡と鄙言の格表示を比べると、特に連体修飾のノの訳出に差異がある 遠鏡はノ>ガ 鄙言はガ・ノが拮抗 同時代の他…

山本淳(1996.9)『古今集遠鏡』訳文における主格助詞の取り扱いについて

山本淳(1996.9)「『古今集遠鏡』訳文における主格助詞の取り扱いについて」『国学院雑誌』97(9) 要点 遠鏡におけるガ・ノ・φの扱いについて考える 訳出の傾向として 無助詞で訳出される例は極めて少なく、 主格の場合はガで訳すことが多く、 連体修飾節(…

伊藤雅光(1982.2)『古今集遠鏡』・『古今和歌集鄙言』間の剽窃問題について

伊藤雅光(1982.2)「『古今集遠鏡』・『古今和歌集鄙言』間の剽窃問題について」『国語研究(国学院)』45 要点 『鄙言』による『遠鏡』の剽窃について考える 遠鏡は寛政5には成立しており、刊行作業は千秋側の事情により、やや遅れる 寛政8の書簡から、宣…

軽部利恵(2018.3)上代仮名遣いの「違例」について

軽部利恵(2018.3)「上代仮名遣いの「違例」について」『叙説』45 要点 上代特殊仮名遣の違例について考える 木簡にはツ婆木(椿)や波支(萩)などがあり、 「木簡は万葉集より書き分けがルーズ」とされてきたが、それは違例それ自体の意味づけにはならず…

岡部嘉幸(2004.11)近世江戸語におけるラシイについて

岡部嘉幸(2004.11)「近世江戸語におけるラシイについて」『近代語研究』12 要点 江戸語のラシイについて、以下の点を考える ラシイの「推定」の内実 助動詞ラシイと接尾辞ラシイの関係 米八は元気らしく(≒そうに)二階へ来る(梅暦)のような接尾辞ラシイ…

吉井健(2015.11)現代語の「~かねる」覚書

吉井健(2015.11)「現代語の「~かねる」覚書」『日本言語文化研究』20 要点 現代語で不可能を表すカネルの前接動詞を考える 前接動詞は、判断・認識に関わる動詞が多く、 A1 判断するなどの認識・判断 A2 賛成するなどの相手の意に添う意 B 発話動詞 言う、…

岡部嘉幸(2002.10)江戸語におけるソウダとヨウダ:推定表現の場合を中心に

岡部嘉幸(2002.10)「江戸語におけるソウダとヨウダ:推定表現の場合を中心に」『国語と国文学』79(10) 要点 江戸語の終止ソウダとヨウダの使い分けについて考える 終止ソウダの用法とヨウダの用法比較 Ⅰは洒落本・滑稽本・人情本(梅暦・辰巳園)、Ⅱは幕末…

吉井健(2002.3)平安時代における可能・不可能の不均衡の問題をめぐって

吉井健(2002.3)「平安時代における可能・不可能の不均衡の問題をめぐって」『文林(神戸松蔭女子学院大)』36 要点 中古の可能表現は否定(不可能)の例がほとんどで、肯定の例は少ない 渋谷(1993)は、文献・方言・言語変化(・調査のしやすさ)において…

深津周太(2013.4)動詞「申す」から感動詞「モウシ」へ

深津周太(2013.4)「動詞「申す」から感動詞「モウシ」へ」『国語国文』82(4) 要点 16C後半成立のモウシの成立事情についての問題 どのような文脈に用いられたモウスからモウシが生まれたか 動詞としての構文的機能をどのように喪失したか 呼びかけの意味を…

川口敦子(2002.9)キリシタン資料の「口語資料」と「文語資料」:「ござる」の用法を手がかりに

川口敦子(2002.9)「キリシタン資料の「口語資料」と「文語資料」:「ござる」の用法を手がかりに」『国語国文』71(9) 要点 ゴザルの使われ方を手がかりに、キリシタン資料における「口語」「文語」について考える 天草平家における「世話」のようなものが…

大倉浩(1993.7)和泉家古本にみる狂言用語の整理・統一:「おりゃる」と「まらする」

大倉浩(1993.7)「和泉家古本にみる狂言用語の整理・統一:「おりゃる」と「まらする」」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 オリャルとマラスルの使用状況を通して、天理本(1624-44)と古本六議(1652-1703)のことを考える 古本は、固定化…

岡部嘉幸(2000.9)江戸語における終止形承接のソウダについて

岡部嘉幸(2000.9)「江戸語における終止形承接のソウダについて」『国語と国文学』77(9) 要点 標記の問題について、以下3点を考える 終止ソウダの「推量」「推定」の具体的内容は何か 終止ソウダの推量・推定と電文の関係性 連用ソウダの意味と、終止ソウダ…

上野左絵(2012.3)『古今和歌集鄙言』里言における「ゲナ」と「サウナ」

上野左絵(2012.3)「『古今和歌集鄙言』里言における「ゲナ」と「サウナ」」『十文字国文』18 要点 「つねのことは」「時俗のくちふり」をうつすという方針の『鄙言』(1796刊)が、あゆひ抄や遠鏡よりも自然な口語を得示すのではないか、という予測のもと…

坂詰力治(1993.7)室町時代における助詞「バシ」について

坂詰力治(1993.7)「室町時代における助詞「バシ」について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 鎌倉時代語のバシが室町にどのように推移したかを観察したい バシの例は文語よりも口語資料に目立つ キリシタン資料には少ないが、これは宣教…

山内洋一郎(1970.9)「もが」「がな」と「が」

山内洋一郎(1970.9)「「もが」「がな」と「が」」『月刊文法』2-11 要点 もが類の変遷は もか>もが>もが+な>も+がな / を+がな>がな と理解される 「女常世に母加母」(古事記歌謡97)の例より、古くは清音か なお、俊成『古今問答』にも(濁でない)声…

高山善行(2016.11)準体句とモダリティの関係をめぐって:中古語の実態

高山善行(2016.11)「準体句とモダリティの関係をめぐって:中古語の実態」福田嘉一郎・建石始(編)『名詞類の文法』くろしお出版 要点 以下の観点から、中古における標記の問題について記述する 準体句内のモの生起 モの後接要素 準体句内のモと述部のモ…

高瀬正一(1992.3)『古今集遠鏡』における「已然形+ば」の訳出について

高瀬正一(1992.3)「『古今集遠鏡』における「已然形+ば」の訳出について」『国語国文学報(愛知教育大学)』50 要点 遠鏡において已バがどのように訳出されているかを明らかにしたい 近代語への変遷の過程で、已バは仮定条件を表すようになっており、 確…

インターネット上で閲覧できる古辞書一覧

新学期の準備をしつつ、「そういえば結構複製本が公開されてる*1よな」というところから思い立って、コロナの諸々で暇すぎるので作りました。 当然ながら網羅するものではないですが、とりあえず公開します。*2 篆隷万象名義 高山寺本 崇文叢書1-32, 33, 34,…

佐藤宣男(1974.10)平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして

佐藤宣男(1974.10)「平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして」『藤女子大学国文学雑誌』16 要点 終助詞ナムは中世以降に古語化したとされるが、実態について触れられたことはない まず平安期において見ると、 和歌の例が多いが…

山口堯二(1980.3)「て」「つつ」「ながら」考

山口堯二(1980.3)「「て」「つつ」「ながら」考」『国語国文』49(3) 前提 古代語のテ・ツツ・ナガラを、その前句・後句の関係性から考える テ テの基本的な意味は並列性 「二つ(以上)の事態がただ空間的または時間的に並列されているという関係」で、継…

村上昭子(1993.7)『大蔵虎明本狂言集』における終助詞「ばや」について

村上昭子(1993.7)「『大蔵虎明本狂言集』における終助詞「ばや」について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 舞台言語の文体の問題として、虎明本のバヤに焦点を当てて考える 「名乗り」とその後の独白による「行動予定の提示」を類型化す…

山本真吾(1994.5)延慶本平家物語に於ける古代語の用法について:「侍り」「めり」「まほし」を軸として

山本真吾(1994.5)「延慶本平家物語に於ける古代語の用法について:「侍り」「めり」「まほし」を軸として」水原一編『延慶本平家物語考証3』新典社 要点 延慶本における「新しい語法」が注目されがちだが、「古い語法がどうなっているか」の検討も併せて行…

堀川智也(1998.3)希望喚体の文法

堀川智也(1998.3)「希望喚体の文法」『大阪外国語大学論集』18 要点 山田が挙げる希望喚体の例には、「N+終助詞」という条件を厳密には満たさないものがある 別れの無くもがな/長くもがな/鳥にもがも これが、希望喚体のプロトタイプからのどのような拡…

山本真吾(2010.12)平家物語諸本と中世語:延慶本の言語年代をめぐって

山本真吾(2010.12)「平家物語諸本と中世語:延慶本の言語年代をめぐって」『国文論叢(神戸大学)』43 要点 延慶本平家は鎌倉時代語資料とはされるが、転写は応永まで下るので、当時の言語現象を含む可能性がある このことを踏まえて、延慶本の資料性を、…