ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田永弘(2012.3)平家物語と日本語史

吉田永弘(2012.3)「平家物語と日本語史」『愛知県立大学説林』60 要点 原拠本と天草版との対照による研究方法のあり方について 前提 一般的な諸本系統図のモデル(図1)は、書写過程以外における「作られた本文」を持つ異本の発生のある平家においては適用…

荻野千砂子(2007.7)授受動詞の視点の成立

荻野千砂子(2007.7)「授受動詞の視点の成立」『日本語の研究』3-3 要点 授受動詞の視点制約について、テ形補助動詞に生じた制約が本動詞に影響した可能性があることを示す 前提 敬語形・テ形補助を持つクレル・ヤル・モラウの3語について考える あなたが私…

森勇太(2011.9)授与動詞「くれる」の視点制約の成立:敬語との対照から

森勇太(2011.9)「授与動詞「くれる」の視点制約の成立:敬語との対照から」『日本語文法』11-2 要点 クレルが持つ視点制約について、 中古においてはそれが存しなかったこと、クレル・テクレルがタブ・テタブと共通性を持つことを示し、 「話し手を高めな…

小柳智一(1996.3)禁止と制止:上代の禁止表現について

小柳智一(1996.3)「禁止と制止:上代の禁止表現について」『国語学』184 要点 上代(・中古)の禁止について、 禁止する対象によって、禁止(事前阻止)、制止に分けられ、ナーソ・ナーソネ・ナーはその両方(その中間の抑止)を表すが、ーナは強い禁止の…

秋田陽哉(2015.5)源平盛衰記に見られる命令を表す「べし」

秋田陽哉(2015.5)「源平盛衰記に見られる命令を表す「べし」」松尾葦江『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院 要点 ベシの命令の意について、以下の点を示す 中古にはほぼ見られないが、中世に多く見られるようになること 盛衰記には多く見られ、覚一本…

山田昌裕(2000.6)主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較

山田昌裕(2000.6)「主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較」『国語学』51-1 要点 原拠本平家と天草版平家に対照によるガの勢力拡大について、主に以下の3点を示す 対象を明示化する指向があること 疑問文におい…

青木博史(2004.9)複合動詞「~キル」の展開

青木博史(2004.9)「複合動詞「~キル」の展開」『国語国文』73-9 要点 複合動詞キルの用法が切断→遮断→終結→極度→完遂と展開したことを明らかにしつつ、 九州方言における可能の~キルとの関係性についても述べる 前提 以下のような複合動詞キルの用法は、…

吉田永弘(2015.5)『源平盛衰記』語法研究の視点

吉田永弘(2015.5)「『源平盛衰記』語法研究の視点」松尾葦江『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院 要点 延慶本・覚一本との比較により、源平盛衰記の後代的言語現象を探る 前提 源平盛衰記は14C前半成立だが、現存伝本は16C中頃以降成立 慶長古活字版に…

青木博史(2004.9)ミ語法の構文的性格:古典語における例外的形式

青木博史(2004.9)「ミ語法の構文的性格:古典語における例外的形式」『日本語文法』4-2 要点 ミ語法のヲを、対象語を示すヲとして捉える 前提 ミ語法に残る問題 ヲを対格、ミを他動詞性のものとしてよいか 属性形容詞―主語(命を惜しみ)、感情形容詞―対象…

竹内史郎(2004.1)ミ語法の構文的意味と形態的側面

竹内史郎(2004.1)「ミ語法の構文的意味と形態的側面」『国語学』55-1 要点 ミ語法をマ行四段動詞と関連付けることが不適切であり、形容詞的に見るべきであることを、ミ語法の構文と形態が持つ形容詞性の観点から述べる 前提 ミ語法をマ行四段動詞と関連付…

竹内史郎(2008.4)古代日本語の格助詞ヲの標示域とその変化

竹内史郎(2008.4)「古代日本語の格助詞ヲの標示域とその変化」『国語と国文学』85-4 問題 現代語の格助詞ヲは他動詞文の目的語標示で、自動詞などの述語の唯一項を標示しない。すなわちヲは、 少なくとも2つの補語が含まれる構文に現れる 複数の補語のうち…

小柳智一(2004.7)「ずは」の語法:仮定条件句

小柳智一(2004.7)「「ずは」の語法:仮定条件句」『万葉』189 要点 特殊語法「ずは」について、通常の「ずは」と共通する解釈(仮定条件句)を提示し、 その差異について、前句と後句の関係性が、通常の場合は順行的、特殊語法の場合は逆行的であるものと…

古川大悟(2019.1)助動詞マシの意味

古川大悟(2019.1)「助動詞マシの意味」『国語国文』88-1 要点 マシの意味を「対象事態を可能性として提示し、別の可能性と比較する」こととして捉え、その有効性を示す 問題 マシの意味を反実仮想とすることの問題点(山口1968)*1 反実・反事実は表現対象…

土岐留美江(1992.6)江戸時代における助動詞「う」:現代語への変遷

土岐留美江(1992.6)「江戸時代における助動詞「う」:現代語への変遷」『都大論究』29、(2010)『意志表現を中心とした日本語モダリティの通時的研究』ひつじ書房 を参照 要点 虎明本、近松世話浄瑠璃、浮世床を対象として、助動詞ウの変遷を見て、 積極…

吉田永弘(2016.3)副詞「たとひ」の構文

吉田永弘(2016.3)「副詞「たとひ」の構文」『国学院大学大学院紀要 文学研究科』47 要点 副詞たとひ(たとへ)について、以下の点を示す 位相の偏りが中世後期にはなくなる 意味レベルでは逆接仮定で変わらないが、形式レベルでは主にトモと呼応しつつ、様…

岡﨑友子(2006.4)感動詞・曖昧指示表現・否定対極表現について:ソ系(ソ・サ系列)指示詞再考

岡﨑友子(2006.4)「感動詞・曖昧指示表現・否定対極表現について:ソ系(ソ・サ系列)指示詞再考」『日本語の研究』2-2 要点 文脈を照応しないソ系列指示詞の史的変化について、以下のようなソ系列の周辺的表現が、かつてはむしろ中心的な用法であったこと…

荻野千砂子(2003.12)不定詞「ドウ」の発達

荻野千砂子(2003.12)「不定詞「ドウ」の発達」『語文研究』96 問題 イカ・何ト・ドウの三種の不定詞 ドウが近世に伸長、近世前期までの疑問には何トが主でドウは未発達 室町末から近世前期のドウを分析する 近世前期 コソア三系統に対応する不定称として、…

浅川哲也(2014.6)江戸時代末期人情本の活字化資料にみられる諸問題:「あるのです」は「あるです」

浅川哲也(2014.6)「江戸時代末期人情本の活字化資料にみられる諸問題:「あるのです」は「あるです」」『日本語研究(首都大学東京)』34 問題 人情本の活字化資料には人情本刊行会版があるが、その本文は問題を孕む 版本本文と人情本刊行会版の本文を比較…

梁井久江(2009.6)「役割語」としての〜チマウの成立

梁井久江(2009.6)「「役割語」としての〜チマウの成立」『都大論究』46 問題 チマウは後発のチャウの使用拡大により現代ではほぼ用いられないが、シナリオではなお用いられる 困ろうが何しようが、とにかく、クーはお前を母親と思い込んじまってんだ、いや…

仁科明(2018.11)「ある」ことの希望:万葉集の「もが(も)」と「てしか(も)」

仁科明(2018.11)「「ある」ことの希望:万葉集の「もが(も)」と「てしか(も)」」沖森卓也編『歴史言語学の射程』三省堂 要点 仁科の叙法形式の整理のうち、「非現実事態を表しながら、未然形に接続しない」という問題を持つ形式として、もが(も)、て…

山口響史(2016.7)テイタダクの成立と展開

山口響史(2016.7)「テイタダクの成立と展開」『国語国文』85-7 要点 授受補助動詞テイタダクの成立と、テモラウの敬語形としての地位を確立するまでの過程について、 当初話し手起点だったイタダクが受け手起点の機能を獲得することでテモラウの敬語形とな…

青木博史(2005.7)複文における名詞節の歴史

青木博史(2005.7)「複文における名詞節の歴史」『日本語の研究』1-3 要点 コトを表す補文の名詞節の歴史に、「準体型・コト型・ノ型」の三種を考え、 コト型がその性質を変化させていないことに基づき、 コト・ノによる準体型の補償はなく、むしろノの伸長…

榎原実香(2018.9)文の階層構造からみたモの周辺的用法の分類

榎原実香(2018.9)「文の階層構造からみたモの周辺的用法の分類」『日本語文法』18-2 要点 周辺的なモの統語論的位置付け 周辺的なモ 基本的なモ 太郎は大学生です。わたしも大学生です。 大学生={わたし、太郎、花子} 累加性の見られない、周辺的なモ …

梁井久江(2009.1)テシマウ相当形式の意味機能拡張

梁井久江(2009.1)「テシマウ相当形式の意味機能拡張」『日本語の研究』5-1 要点 テシマウのアスペクト意味内での拡張と、評価的意味への意味拡張について 問題 テシマウが持つアスペクト的意味(広義の完了) 完遂:おやつを食べてしまってからにしなさい …

矢島正浩(2010.9)近世期以降の当為表現の推移

矢島正浩(2010.9)「近世期以降の当為表現の推移」『日本語文法』10-2 要点 近世期以降の当為表現について、 肯定的当為表現・否定的当為表現ともに、それぞれの中央語(上方語と東京語)で文法形式として発達し、地域語の使用状況に中央語の影響関係を見い…

森勇太(2013.7)近世上方における連用形命令の成立:敬語から第三の命令形へ

森勇太(2013.7)「近世上方における連用形命令の成立:敬語から第三の命令形へ」『日本語の研究』9-3 要点 いわゆる連用形命令法の成立に、敬語助動詞「や」(<やれ)の異分析を想定する 従来説の問題 なされ省略説は、村上(2003)で提示されたものに加え…

中納言と学外VPNのJapanKnowledgeを連携させよう

前提 学外VPNでJapanKnowledgeを使うことはできるのに、 学外でCHJを使うとき、JapanKnowledgeに飛べなくて悔しい こうなる 中納言で検索→近いところをJapanKnowledgeで検索し直す→これはちょっとめんどくさいので、 ブラウザ上で学外VPNのURLに置換してみよ…

村上謙(2003.4)近世後期上方における連用形命令法の出現について

村上謙(2003.4)「近世後期上方における連用形命令法の出現について」『国語学』54-2 要点 いわゆる連用形命令法の成立に、「一段動詞の命令形イ形」からの影響を想定する 前提 「早う行き」「さっさと帰り」のようないわゆる連用形命令法 これは宝暦以後の…