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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

木部暢子(2019.3)諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差

木部暢子(2019.3)「諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版

要点

  • COJADSモニター版を使って諸方言の推量表現を整理する
  • 述語のタイプ(名詞・動詞・形容詞)、テンス分化を基準に分類すると、
    • 北海道~北関東にかけて、動詞述語のときベ系、名詞述語のときダ+ベ系
    • 南関東は述語タイプに拘らずダンベ系で、これは名詞述語ダンベが拡張したもの
    • 長野・山梨・静岡は名詞・動詞述語にズラ、動詞述語ではラもあり、過去形にツラ・ズが使われる
    • 岐阜県中津川ではすべてのタイプでラに画一化
    • 新潟・愛知・徳島ではすべてのタイプでダローに画一化
    • 北陸~関西はすべてのタイプでヤロに画一化
    • 山陽・四国・九州は名詞述語にジャロ・ヤロ、動詞述語にウ、動詞述語否定にマイ系、形容詞にカロ、すべての過去にタロと、使用形式が多い
    • 高知市は名詞・動詞にロ、過去にツロで、過去はタロへの変化が進行中である
  • 四国・九州は、多くの方言に見られる統一の傾向に反して多種多様である
    • これは古典語の形式を今も継承しているためで、機能的にも、ウ系が意志・推量の両方の意味を表す
    • 多くの方言では意志をウ、推量をダロウ系が担うが、必ずしもウ・ダロウで分担する必要性がないことに基づけば、
    • 東京などにおいては「推量表現をコピュラ由来の形式(ダロ・ヤロ)で画一化するという変化がまず起き」た結果、ウ・ダロウの分担が生じたと考えられる

雑記

  • za を打つとき思いっきり左手が出張して、人差し指 z と中指 a で打つ癖があります