平塚雄亮(2019.3)福岡市方言の準体助詞にみられる言語変化
平塚雄亮(2019.3)「福岡市方言の準体助詞にみられる言語変化」『中京大学文学会論叢』5
前提
- 福岡市の若年層によって、伝統的なトだけでなく、ノ・ンも用いられるようになっている
- が、どのような環境でそうなるかは報告されていない
- どういった環境で非伝統形が受容されやすく、どういった環境では伝統形で保持されやすいか、を考えたい
- 「方言の維持と変化が同時に観察される項目について分析することで、現在進行中の言語変化のあり方をとらえることができるのではないか」(p.88)
調査と分析
- 資料は自然談話に基づく
- 以下の3類に分けて考え、b, c は対象を用言+準体助詞に絞る
- a 代名詞的用法(あの赤いの)
- b 名詞節用法(本を貸すの)
- c ノダ文
- 代名詞的用法:
- 用言+準体:高年層でノ・ト併用、若年層でノのみ
- 名詞・連体詞・形容動詞の場合、連体詞にンが先行する
- ソンナンなどの固定化された表現が先行し、そこから生産的になっているのではないか
- 名詞節用法:大名詞的用法と同様、高年層ではト・ノ併用、若年層でノのみ
- ノダ文:
- 以下の環境でトが出現しやすい
- 言い切り
- 疑問文
- 伝統方言的な終助詞類が接続する場合(ッタイ<トタイ、ッチャン<トヤン)
- 以下の環境でトが出現しにくい
- ヤケドが接続する場合(ンヤケド)
- 非伝統方言的な終助詞類が接続する場合(ンヨ、ンヨネ)
- 以下の環境でトが出現しやすい
まとめ
- 「代名詞的用法や名詞節用法においてはノ専用になる一方、ノダ文においてはトが用いられている。」
- モダリティに関わらない用法が、非伝統方言に置き換わりやすいのではないか
- 「ノダ文においてはトが用いられているものの、その現れ方は一様ではなく、出現する環境によって違いがある。準体助詞に非伝統方言的な要素が接続する場合は、非伝統方言的なノ・ンが現れやすくなる。」
- 接触によってもたらされた要素が後接する場合に、トが現れにくくなるのであろう
雑記
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