ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

佐伯暁子(2017.3)平安時代から江戸時代における「~ヲバ~ヲ」文について:二重ヲ格との比較も含めて

佐伯暁子(2017.3)「平安時代から江戸時代における「~ヲバ~ヲ」文について:二重ヲ格との比較も含めて」『岡大国文論稿』45 ヲバ~ヲの類型 対象ヲバ対象ヲ:女御殿、「笛をば聲をこそ聞け、見るやうやは有」とて(栄花) 相手ヲバ内容ヲ:適ニ出入スル人…

竹内史郎・岡﨑友子(2018.1)日本語接続詞の捉え方:ソレデ,ソシテ,ソレガ,ソレヲ,ソコデについて

竹内史郎・岡﨑友子(2018.1)「日本語接続詞の捉え方:ソレデ,ソシテ,ソレガ,ソレヲ,ソコデについて」『国立国語研究所論集』14 doi.org 要点 指示詞を含む接続詞に関して、照応関係のあり方と統語環境からの整理を試みるもの 田村(2005)*1 モーダル…

杉山俊一郎(2018.5)動詞「むくいる」の格支配について

杉山俊一郎(2018.5)「動詞「むくいる」の格支配について」『論輯(駒澤大学)』44 以下と関連して、動詞の格支配について hjl.hatenablog.com 問題 「むくいる」の格支配のあり方について 現代語は「~に報いる」 古代語は「~を報ゆ」 この交替は、 格助…

堀尾香代子(2013.3)上代語にみるヤによる係り結びの異型

堀尾香代子(2013.3)「上代語にみるヤによる係り結びの異型」『北九州市立大学文学部紀要』82 id.nii.ac.jp 要点 上代における正常でないヤの係り結びの例に関して 間投助詞ヤから係助詞ヤへの過渡的な姿として捉える 上代の助詞ヤ 係助詞・終助詞・間投助…

堀尾香代子(2018.3)『万葉集』にみる非活用語に下接する文末助詞「や」

堀尾香代子(2018.3)「『万葉集』にみる非活用語に下接する文末助詞「や」」『北九州市立大学文学部紀要』88 id.nii.ac.jp 要点 一見特異に見える、活用語につかない文末の「や」の性質 多くは終止形・已然形に下接して疑問・反語を表すが、それとは性質が…

土井光祐(2018.2)明恵関係聞書類の一般性と特殊性:言語変種とその制約条件をめぐって

土井光祐(2018.2)「明恵関係聞書類の一般性と特殊性:言語変種とその制約条件をめぐって」『駒澤国文』55 問題意識 明恵資料群全体を等質の言語データとして扱うことは非常に困難 鎌倉時代口語研究に必要な6つの視点(土井2007) 資料的性格:資料の本来的…

山本真吾(2018.4)鎌倉時代の言語規範に関する一考察:「古」なるものへの意識をめぐる

山本真吾(2018.4)「鎌倉時代の言語規範に関する一考察:「古」なるものへの意識をめぐる」藤田保幸編『言語文化の中世』和泉書院*1 要点 前後の時代と画される(引き裂かれる)「中世」が、国語意識史の中でどのように捉えられるかを、「古人」のあり方か…

小田勝(2012.3)動詞「着換ふ」の格支配について

小田勝(2012.3)「動詞「着換ふ」の格支配について」『 岐阜聖徳学園大学国語国文学』31 id.nii.ac.jp 要点 中古における「着換ふ」の格支配の特殊なあり方について 問題点 「着換ふ」の格配置、現代語では「旧服ヲ新服ニ着替える」だが、中古では無助詞で…

大塚望(2004.7)「たい」と「たがる」:主語の人称を中心として

大塚望(2004.7)「「たい」と「たがる」:主語の人称を中心として」『新潟大学国語国文学会誌』46 要点 「たい」は一人称、「たがる」は三人称という主語の人称制限があるとされるが、実態は異なるので記述し直す これまでの「人称制限」の原則と反例 「た…

百留康晴(2017.3)中古における「~わづらふ」の文法化について

百留康晴(2017.3)「中古における「~わづらふ」の文法化について」『国語教育論叢(島根大学)』26 要点 タイトルまんま 中古の「~わづらふ」の分類 A 病気になる 乱り脚病といふ物ところせく起り患ひ侍りてはかばかしく踏み立つることも侍らず(源氏・若…

神戸和昭(2017.7)『浮世風呂』における「せ゜」「そ゜」をめぐる問題 : 江戸語研究の「常識」と「誤解」

神戸和昭(2017.7)「『浮世風呂』における「せ゜」「そ゜」をめぐる問題 : 江戸語研究の「常識」と「誤解」」『語文論叢(千葉大学)』32 要点 江戸期版本において「さ゜」が/tsa/を写すのと同様に、「せ゜」「そ゜」が/tse/, /tso/とされることがある(旧…

衣畑智秀(2016.1)係り結びと不定構文:宮古語を中心に

衣畑智秀(2016.1)「係り結びと不定構文:宮古語を中心に」『日本語の研究』12-1 doi.org 高山(2016)と関連して hjl.hatenablog.com 要点 係り結びが間接疑問・選言・不定といった構文(不定構文)の発生を抑制するという仮説を、宮古語方言を対象として…

近藤泰弘(2007.11)平安時代語の接続助詞「て」の機能

近藤泰弘(2007.11)「平安時代語の接続助詞「て」の機能」『国学院雑誌』108-11 要点 中古の「て」は、従属度の高さによって2種に分けられることを主張 中古語の接続助詞の従属度 近藤(2000)*1 高い順に、 A類:て・つつ・ながら・で(否定)・連用形 TAM…

岡﨑友子(2018.5)「頃」の用法と歴史的変化:現代語・中古語を中心に

岡﨑友子(2018.5)「「頃」の用法と歴史的変化:現代語・中古語を中心に」藤田保幸・山崎誠編『形式語研究の現在』和泉書院 要点 形式名詞・接続助詞的な「頃」の現代語・中古語でのあり方と歴史的変遷について - 東京へ出てきた頃、この鞄を買った 接続助…

志波彩子(2018.3)受身と可能の交渉

志波彩子(2018.3)「受身と可能の交渉」『名古屋大学人文学研究論集』1 要点 「ラレル」文がどのようにして「受身」と「可能」という離れた意味を表すか、その原理について 併せて、志波彩子(2018.4)「ラル構文によるヴォイス体系:非情の受身の類型が限…

岡部嘉幸(2018.4)「非情の受身」のバリエーション:近代以前の和文資料における

岡部嘉幸(2018.4)「「非情の受身」のバリエーション:近代以前の和文資料における」岡﨑友子他編『バリエーションの中の日本語史』くろしお出版 要点 量的に少ないとされる近代以前和文の非情の受身(非情物主語の受動文)が、大きく以下の2つのタイプに分…

山本真吾(2014.9)鎌倉時代口語の認定に関する一考察:延慶本平家物語による証明可能性をめぐる

山本真吾(2014.9)「鎌倉時代口語の認定に関する一考察:延慶本平家物語による証明可能性をめぐる」石黒圭・橋本行洋編『話し言葉と書き言葉の接点』ひつじ書房 要点 日本語史研究において「鎌倉時代口語を反映する」とされる延慶本平家物語について、その…

高山善行(2016.12)ケム型疑問文の特質:間接疑問文の史的研究のために

高山善行(2016.12)「ケム型疑問文の特質:間接疑問文の史的研究のために」青木博史・小柳智ー・高山善行編『日本語文法史研究 3』ひつじ書房 要点 間接疑問文の成立に関して、ケム型疑問文を考察の対象とし、二文連置的な注釈構文との関連性を見る 研究史…

志波彩子(2016.1)近代日本語の間接疑問構文とその周辺:従属カ節を持つ構文のネットワーク

志波彩子(2016.1)「近代日本語の間接疑問構文とその周辺:従属カ節を持つ構文のネットワーク」『国立国語研究所論集』10 間接疑問文の発達について、高宮(2003*1, 2004, 2005)を承けて、明治期の共時的なあり方がどうであるかを報告 2004, 2005について…

村上昭子(1976)『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞

村上昭子(1976)「『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社 要点 下二段動詞が、尊敬・可能・受身の用法を持つこと その「尊敬」のあり方の検証 下二段動…

新田哲夫(2018.7)石川県白峰方言と日本語史:推量意志の「うず」を中心に

新田哲夫(2018.7)「石川県白峰方言と日本語史:推量意志の「うず」を中心に」『日本語学』37-7 要点 白峰方言における、日本語史で問題となる文法的特徴について 意志推量のオ段拗音 意志推量のウズ 白峰方言に関して 石川県南部の白峰、方言的特徴概ね西…

藤井俊博(2017.12)古典語動詞「う(得)」の用法と文体:漢文訓読的用法と和漢混淆文

藤井俊博(2017.12)「古典語動詞「う(得)」の用法と文体:漢文訓読的用法と和漢混淆文」『同志社日本語研究』21 要点 「得」の用法に漢文訓読の影響から生じたものがあり、和文・和漢混淆文に取り入れられている 和文・漢文訓読文に共通して用いられる語…

三宅知宏(2017.11)日本語の発見構文

三宅知宏(2017.11)「日本語の発見構文」天野みどり・早瀬尚子編『構文の意味と拡がり』くろしお出版 要点 「外に出てみると、雨が降っていた」のようなものを「発見構文」として扱う。課題として、 型の記述 テミルが生起しやすいこととその特性 英語との…

小柳智一(2018.5)文法変化の研究

小柳智一(2018.5)『文法変化の研究』くろしお出版 斜め読み

早瀬尚子(2017.11)懸垂分詞からの構文化例:分詞表現の談話標識化とその条件

早瀬尚子(2017.11)「懸垂分詞からの構文化例:分詞表現の談話標識化とその条件」天野みどり・早瀬尚子編『構文の意味と拡がり』くろしお出版 要点 主語不一致の懸垂分詞構文が談話標識へ変化していく現象について Strictly speaking... , Talking of birds…

江口正(2018.4)大分方言における動詞終止形の撥音化とその意味するところ

江口正(2018.4)「大分方言における動詞終止形の撥音化とその意味するところ」『日本語の研究』14-2 小特集「越境する日本語研究」として 要点 九州方言の動詞(論文では大分方言)に見られる二段活用という古い形、一段活用の五段化という新しい変化の共存…

小笠原一(1992.3)「七夕」考 用字を中心に 織女から七夕へ

小笠原一(1992.3)「「七夕」考 用字を中心に 織女から七夕へ」『学芸国語国文学』24 要点 なぜ「たなばた」を「七夕」と表記するか、について、その表記の実態を歴史的に見るもの 賀茂真淵『古今和歌集打聴』にある記述 たなばたと云に七夕の二字を書はあ…

砂川有里子(2000.10)空間から時間へのメタファー:日本語の動詞と名詞の文法化

砂川有里子(2000.10)「空間から時間へのメタファー:日本語の動詞と名詞の文法化」青木三郎・竹沢幸一編『空間表現と文法』くろしお出版 要点 空間概念を表す自立語が格助詞・接続助詞・助動詞へと変化する機能語化の類型について(論文では文法化、ここで…

矢島正浩(2018.3)タラ節の用法変化

矢島正浩(2018.3)「タラ節の用法変化」『国語国文学報(愛知教育大学)』76 この論文とセット hjl.hatenablog.com 要点 「ナラバ節史に対して、タラ節はどのような歴史を描くのか」がテーマ 同じく、タラ用法・ナラ用法の別で見ていく タラ用法:前件と後…

矢島正浩(2017.11)中央語におけるナラバ節の用法変化

矢島正浩(2017.11)「中央語におけるナラバ節の用法変化」有田節子編『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版 矢島(2017)による、「ナラバ」「タラバ」に関する小林(1996)説のまとめと問題提起 完了性仮定条件:未来時における動作…