ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

高橋淑郎(2005.3)大学講義を対象とした類型的文体分析の試み

高橋淑郎(2005.3)「大学講義を対象とした類型的文体分析の試み」中村明ほか編『表現と文体』明治書院. 要点 話し言葉・書き言葉という枠組みを超えて、討論との比較に基づいて、講義の言語的特徴を明らかにしたい。 講義と討論のコミュニケーション成立上…

川瀬卓(2021.6)副詞「ひょっとすると」類の成立 : 副詞の呼応における仮定と可能性想定の分化

川瀬卓(2021.6)「副詞「ひょっとすると」類の成立 : 副詞の呼応における仮定と可能性想定の分化」『語文研究』130/131. 要点 ヒョットスルト類(スルト/シタラ/シテ)が擬態語に由来することと、類義語であるモシカスルトが同じ構成要素を持つことに注目…

山西正子(1979.2)連体形「タル」のあらわれかた:「中華若木詩抄」のばあいを出発点に

山西正子(1979.2)「連体形「タル」のあらわれかた:「中華若木詩抄」のばあいを出発点に」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社. 要点 タリ・タについて、中世後期においては、終止形・連体形ではタが優勢であるが、連体修飾の場合にはタルの存在も無…

山本佐和子(2012.6)中世室町期における「ねまる」の意味

山本佐和子(2012.6)「中世室町期における「ねまる」の意味」『國學院雑誌』113(6). 要点 抄物に以下のような~テネマルがあることに注目して、ネマルの語史を記述する。 盆瓶ヲ洗テネマル婦女ノアルマテソ。(四河入海) 本動詞のネマルは名語記に初例が…

中野伸彦(1996.12)Ⅲ型の確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語

中野伸彦(1996.12)「Ⅲ型の確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語」『山口大学教育学部研究論叢 第一部 人文科学・社会科学』46. 要点 「叙述内容を聞き手に対して獲得させようとするタイプ」(僕の勝手でしょ)のⅢ型の確認要求の平叙文について…

中野伸彦(1996.6)確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語

中野伸彦(1996.6)「確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語」『山口明穂教授還暦記念国語学論集』明治書院. 要点 現代語において、聞き手にも既に共有されている事柄を述べる平叙文ではネが必須になるが、ネがなくても、「まともに叙述内容を獲得…

中野伸彦(1993.2)江戸語の疑問表現に関する一つの問題:終助詞「な」「ね」が下接する場合の自問系の疑問文の形成

中野伸彦(1993.2)「江戸語の疑問表現に関する一つの問題:終助詞「な」「ね」が下接する場合の自問系の疑問文の形成」『近代語研究9』武蔵野書院 要点 現代語における自問系の疑問文には、カ・カシラ・ウ・ケなどがないとナ・ネを用いることができない(例…

劉玲(2003.2)情態副詞「セイセイト(清々ト)」の発生:抄物における「X字(原漢文)⇒XXト・ニ(抄文)」という表現法を通じて

劉玲(2003.2)「情態副詞「セイセイト(清々ト)」の発生 抄物における「X字(原漢文)⇒XXト・ニ(抄文)」という表現法を通じて」『日本語と日本文学』36. 要点 抄物に見られるセイセイトは、中国語の「清々」とは意味が異なり、漢語出自とは認められ難い…

金水敏(2012.11)疑問文のスコープと助詞「か」「の」

金水敏(2012.11)「疑問文のスコープと助詞「か」「の」」『国語と国文学』89(11). 要点 前稿(近代語研究16、前記事)で未検討の問題について考える。 カの出現と働き/他の疑問詞との対比/「いったい」「だろう」、丁寧体がノの出現に与える効果 カの出…

金水敏(2012.3)理由の疑問詞疑問文とスコープ表示について

金水敏(2012.3)「理由の疑問詞疑問文とスコープ表示について」『近代語研究』16. 要点 必然的に焦点とみなされる「なぜ」の疑問詞疑問文を用いて、ノダ文の形成史を考える。 以下の、久野・田窪の一般化を踏まえる。 否定辞「ない」と疑問詞「か」のスコー…

徳永辰通(2010.1)「~ヤ-連体形」から終助詞カへの交替:天草版『平家物語』に見る交替の諸相

徳永辰通(2010.1)「「~ヤ-連体形」から終助詞カへの交替:天草版『平家物語』に見る交替の諸相」『人文学部研究論集(中部大学)』23. 要点 原拠本の~ヤ―連体形の天草版への置き換えについて。 まず、対応関係については、ヤで訳される例より、―カ。に置…

磯部佳宏(2000.2)古代日本語の疑問表現(下):要判定疑問表現の場合

磯部佳宏(2000.2)「古代日本語の疑問表現(下):要判定疑問表現の場合」『山口大学文学会誌』50. 要点 古代語の要判定疑問文についての、著者のこれまでの研究の整理。 形式に以下のものがある。 文中のヤにかかわるものとして、 a ―ヤ―。 b ―ヤ。 c ―ニ…

磯部佳宏(2004.2)古代日本語の疑問表現(上):要説明疑問表現の場合

磯部佳宏(2004.2)「古代日本語の疑問表現(上):要説明疑問表現の場合」『山口大学文学会志』54. 要点 古代語の要説明疑問文についての、著者のこれまでの研究の整理。 形式に、以下のものがある。 a Wh(…)カ― b Wh(…)カ。 c Wh―ニカ―。 d Wh―ニカ。 …

于康(1996.11)「いかに」の述語用法

于康(1996.11)「「いかに」の述語用法」『国語国文』65(11). 要点 「いかに」は修飾用法(いかに~。)とは区別される述語用法(~はいかに。)を持ち、 これは、漢文訓読語の用法である。 訓読文では「述格に立つ」用法(築島1963)があり、 平安和文では…

于康(1996.3)『天草版平家物語』における「なぜに」の意味用法

于康(1996.3)「『天草版平家物語』における「なぜに」の意味用法」『広島大学日本語教育学科紀要』6. 要点 天草版平家を中心に、ナゼニとそれまでの不定語との関係性を記述することで、ナゼニの史的位置について考える。 天草版平家では、ナゼニ以外にイカ…

樋渡登(2005.6)洞門抄物から見た疑問詞疑問文について

樋渡登(2005.6)「洞門抄物から見た疑問詞疑問文について」『日本近代語研究4』ひつじ書房(『洞門抄物による近世語の研究』おうふう を参照). 要点 外山(1957)、矢島(1997, 2002)を踏まえつつ、洞門抄物の疑問詞疑問文について検討する。 ① 体言性述…

矢島正浩(2002.3)疑問詞疑問文文末ゾの使用よりみた近松世話浄瑠璃

矢島正浩(2002.3)「疑問詞疑問文文末ゾの使用よりみた近松世話浄瑠璃」『日本近代語研究3』ひつじ書房. 要点 近松世話浄瑠璃の疑問詞疑問文におけるゾの使用状況と、近松世話浄瑠璃の資料性についても考える。 外山(1957)と矢島(1997)を踏まえる。 hjl…

矢島正浩(1997.7)疑問詞疑問文における終助詞ゾの脱落:近世前・中期の狂言台本を資料として

矢島正浩(1997.7)「疑問詞疑問文における終助詞ゾの脱落:近世前・中期の狂言台本を資料として」加藤正信編『日本語の歴史地理構造』明治書院. 要点 疑問詞疑問文のゾの脱落について、以下のことに注目しながら考える。 外山(1957)の「虎明本では第一類…

小林賢次(1996.10)大蔵流虎光本狂言集における疑問詞疑問文:終助詞「ゾ」を中心に

小林賢次(1996.10)「大蔵流虎光本狂言集における疑問詞疑問文:終助詞「ゾ」を中心に」『日本語研究領域の視点 下巻』明治書院. 要点 虎光本(1817写)の諸本の異同について、疑問文のゾに注目して比較する。 古典文庫本の底本・山岸清斎文政6書写本と、対…

林禔映(2017.5)副詞「所詮」の史的変遷

林禔映(2017.5)「副詞「所詮」の史的変遷」『日語日文學研究』101(1). 要点 所詮が否定的意味を持つこと、「詮ずるところ」と訓読される例に注目しつつ、その歴史について考える。 史的変遷、 原義は仏教語の「大乗の経典によって表されること」であり、中…

佐田智明(2002.3)副詞「決して」の成立について

佐田智明(2002.3)「副詞「決して」の成立について」『日本近代語研究3』ひつじ書房. 要点 「決して」は当初(近世文化頃まで)、「さだめて」「必ず」の意を持ち、否定とも呼応するようになる。 化政期以降、例えば八笑人では否定との呼応に偏り、文政期以…

樋渡登(2002.3)副詞「総別」「総じて」と洞門抄物

樋渡登(2002.3)「副詞「総別」「総じて」と洞門抄物」『日本近代語研究3』ひつじ書房.(2007『洞門抄物による近世語の研究』おうふう を参照) 要点 洞門抄物における「総別」「総じて」の差異を、以下の分類に従いつつ考える。 全体用法:全体を概括的に…

ronbun yomoː

この記事は、言語学な人々 Advent Calendar 2022 の5日目の記事として書かれました。 adventar.org はじめに 論文を読んで箇条書きにするだけのブログを始めてもう4年半ほどになるみたいで、自分でびっくりしています。専門は日本語文法史で、それに関係する…

川瀬卓(2011.4)叙法副詞「なにも」の成立

川瀬卓(2011.4)「叙法副詞「なにも」の成立」『日本語の研究』7(2). 要点 ナニモに以下の2種があることを踏まえ、その歴史的変化について考える。 数量詞相当:ごはんをなにも食べなかった。 叙法副詞:なにも野菜が嫌いなわけじゃないよ。 一方で室町には…

佐々木文彦(2012.3)副詞「ふと」の意味・用法の変遷について

佐々木文彦(2012.3)「副詞「ふと」の意味・用法の変遷について」『近代語研究16』武蔵野書院 要点 『三四郎』の「三四郎はとんだことをしたのかと気がついて、ふと(≒あわてて・急いで)女の顔を見た」の現代語からの違和感を手がかりとして、その意味変化…

坂詰力治(2002.12)抄物に見える「サテ」(不可)について:「カナ(叶・適)ハヌ」との比較を通して

坂詰力治(2002.12)「抄物に見える「サテ」(不可)について:「カナ(叶・適)ハヌ」との比較を通して」『近代語研究11』武蔵野書院. 要点 「不可」の意味を表すサテが抄物に見られることについて、他ジャンルのカナハヌとの比較を通して考える。 感動詞化…

田中志瑞子(2007.3)伝三条西実隆筆『毛詩国風篇聞書』について

田中志瑞子(2007.3)「伝三条西実隆筆『毛詩国風篇聞書』について」『訓点語と訓点資料』118. 要点 景徐周麟講、清原宣賢聞書による『毛詩国風篇聞書』(以下、『聞書』)の性格と、写真・翻刻。 まず、概括的に。 『左伝』の抄物との合冊。 永正7[1510]…