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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

長崎靖子(2004.3)『浮世風呂』『浮世床』に見る断定辞としての終助詞「よ」の位相:断定辞としての終助詞「さ」との比較から

長崎靖子(2004.3)「『浮世風呂』『浮世床』に見る断定辞としての終助詞「よ」の位相:断定辞としての終助詞「さ」との比較から」『会誌(日本女子大学)』23. 要点 江戸語で断定を表すヨの位相を、サ(長崎1998)との比較から考える ヨは、 男女ともぞんざ…

長崎靖子(1998.3)江戸語の終助詞「さ」の機能に関する一考察

長崎靖子(1998.3)「江戸語の終助詞「さ」の機能に関する一考察」『国語学』192. 要点 現代語では終助詞サは仲間内のぞんざいな会話に使用されるものとされるが、 江戸・東京語では、幕末までは丁寧な会話にも使用される (福助→金)さやうさ 是ぢやア豊年…

勝又隆(2014.7)古代日本語におけるモノナリ文と連体ナリ文の構造的差異について

勝又隆(2014.7)「古代日本語におけるモノナリ文と連体ナリ文の構造的差異について」『西日本国語国文学』1. 要点 古代語の主節述部におけるモノナリと連体ナリは、以下の特徴を持つ。 Vナリは係り結びと共起しないが(高山2002)、モノナリはNナリ同様共起…

葛西太一(2020.8)日本書紀における語りの方法と定型化:文末表現「縁也」による歴史叙述

葛西太一(2020.8)「日本書紀における語りの方法と定型化:文末表現「縁也」による歴史叙述」『和漢比較文学』65. 要点 書紀における、述作者の立場による注釈的記事が双行ではなく本行に現れるケースを「語り」として取り上げ、各記事の述作方針について考…

大坪併治(1969.6)提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に

大坪併治(1969.6)「提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に」『佐伯博士古稀記念国語学論集』表現社. 要点 提示語法(「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与える形式」)は、訓点資料に幅広く認められ、 和漢混…

妙摩光代(1979.8)『中華若木詩抄』に見る文末の「也」と「ソ」

妙摩光代(1979.8)「『中華若木詩抄』に見る文末の「也」と「ソ」」『田邊博士古稀記念国語助詞助動詞論叢』桜楓社. 要点 中華若木詩抄のナリ・ゾについて、以下の特徴を得た 先行論が博士家系を対象とすること、中華若木詩抄が単純な聞書でない(手控的性…

大鹿薫久(2007.4)「連体なり」の性格:源氏物語の文章を通して

大鹿薫久(2007.4)「「連体なり」の性格:源氏物語の文章を通して」加藤昌嘉(編)『講座源氏物語研究 第八巻 源氏物語のことばと表現』おうふう.*1 要点 連体ナリが以下の性質を持つことに基づいて、その意味と、連体ナリの性格について考える ①ナリ∅(ナ…

坂詰力治(1972.9)清原宣賢講『論語抄』における文末表現について:指定辞「ゾ」「ナリ」を中心として

坂詰力治(1972.9)「清原宣賢講『論語抄』における文末表現について:指定辞「ゾ」「ナリ」を中心として」『国語学研究』11. 要点 論語抄(宣賢抄)と論語聴塵におけるゾ・ナリについて、 聴塵においては文はナリもしくは動詞・助動詞で終止するが、抄にお…

岩間智昭(2022.2)近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に

岩間智昭(2022.2)「近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に」『国文学論叢』67. 要点 以下の3点の分析より、『浄土勧化文選』(宝暦11[1761]刊)が、「「非中立的」な表現を内包する」資料であり、文語性の高い資…

田島光平(1964.3)連体形承接の「なり」について:竹取物語を中心にして

田島光平(1964.3)「連体形承接の「なり」について:竹取物語を中心にして」『国語学』56. 要点 結論を先に挙げる ① 平安時代初期の連体ナリは、連体形が体言的である場合(いまだ見ぬ(モノ)なり)を除き、根拠をもって相手に説明する場合に用いられる辞…

中川祐治(2001.3)中世末期における指定辞「ぢゃ」の構文的機能について:『天草版平家物語』と原拠本『平家物語』との比較を手がかりに

中川祐治(2001.3)「中世末期における指定辞「ぢゃ」の構文的機能について:『天草版平家物語』と原拠本『平家物語』との比較を手がかりに」『国文学攷』169. 要点 平家の対照に基づいて、ヂャの機能について考える ヂャは登場人物の会話・心情、喜一の相づ…

高山善行(1994.8)〈体言ナリ〉と〈連体ナリ〉の差異について

高山善行(1994.8)「〈体言ナリ〉と〈連体ナリ〉の差異について」『国語語彙史の研究14』和泉書院. 要点 中古のNナリとV連体ナリは、以下の差異を持つ p.234(先にまとめ) 分析 下接語について Vナリは否定と結びつきにくい:ニアリが連体ナリの役割を果た…

大坪併治(1981)提示語法

大坪併治(1981)「提示語法」『平安時代における訓点語の文法』風間書房. *1 要点 「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与へる形式」を「提示語法」と呼ぶと、平安時代の訓点語にはそれを幅広く認めることができる 第一義、…

近藤泰弘(1989.3)中古語の分裂文について

近藤泰弘(1989.3)「中古語の分裂文について」『日本女子大学紀要 文学部』38(近藤2000「中古語の分裂文」を参照). 要点 中古語の分裂文には、主語がモノ・ヒトとして解釈されるが、これが石垣法則に反するという問題がある [たけきものゝふの心をもなぐ…

矢島正浩(1989.1)近松世話物における断定ナリ終止形残存の意義

矢島正浩(1989.1)「近松世話物における断定ナリ終止形残存の意義」『文芸研究 文芸・言語・思想』120. 要点 旧形式ナリを以下のように分類すると、 A 文を完結させ得ない(いわゆる並列) B 文を完結させ得る イ 話手の判断の加わる余地無し ロ 話手の判断…

ハイコ・ナロック(2004.10)メリ、ベシの過去と「連体ナリ」

ハイコ・ナロック(2004.10)「メリ、ベシの過去と「連体ナリ」」『国語国文』73(10). 要点 北原の連体ナリを基準とした分類に、承接順序がおかしいものがあることに注目して、メリ・ベシと過去の承接について考える メリ・終止ナリ > 連体ナリ かつ キ・ツ…

原まどか(2014.2)推定伝聞「なり」と断定「なり」:終止形と已然形の場合

原まどか(2014.2)「推定伝聞「なり」と断定「なり」:終止形と已然形の場合」『国語研究(国学院大学)』77. 主張 以下の基準で区別できない2種のナリについて考える 終止連体同形の場合の終止形 已然形が助詞を下接する場合 p.37 已然形の場合、 形容詞本…

勝又隆(2021.3)中古散文における「連体形+ゾ」文の用法:ノダ文・連体ナリ文との共通点と相違点

勝又隆(2021.3)「中古散文における「連体形+ゾ」文の用法:ノダ文・連体ナリ文との共通点と相違点」『筑紫語学論叢Ⅲ』風間書房. 要点 ノダ文と連体ナリ文は比較検討されているが、これまで検討されたことのない連体形ゾも含めて考えると、以下の通り ゾが…

伊牟田経久(1976.12)ナムの係り結び

伊牟田経久(1976.12)「ナムの係り結び」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社. 要点 ナム・ナモを中心とした係り結びについて、 1 ナムの特徴に、「ナムの場合、ゾの違って、結びが連体修飾語となる場合がある」ことが挙げられる 2 上代のナモは、以…

勝又隆(2022.3)『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて

勝又隆(2022.3)「『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて」『福岡教育大学国語科研究論集』63. 要点 竹取中のゾ・ナムによる係り結びの役割が、以下の差異を持つことを主張する 「ゾは補足的な解説を挿入し、」 「ナム…

森野崇(1987.12)情報伝達と係助詞:「は」及び「ぞ」「なむ」「こそ」の場合

森野崇(1987.12)「情報伝達と係助詞:「は」及び「ぞ」「なむ」「こそ」の場合」『学術研究 国語・国文学編(早稲田大学教育学部)』36. 要点 情報伝達の側面から、係助詞の機能を考える 旧情報・新情報を以下のように定義しておく 「旧情報」とは、受容主…

森野崇(2021.12)奈良時代の係助詞「なも」に関する考察

森野崇(2021.12)「奈良時代の係助詞「なも」に関する考察」『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊』ひつじ書房. 要点 上代の宣命に見られるナモを、中古と比較しながら記述する まず前接語と結びについて、 前接語はト・テがほとんどで、中古…

森野崇(1987.12)係助詞「なむ」の機能:そのとりたての性質と待遇性をめぐって

森野崇(1987.12)「係助詞「なむ」の機能:そのとりたての性質と待遇性をめぐって」『国語学研究と資料』11. 要点 前稿(1987.6)で示した以下のナムの機能のうち、伝達性については前稿で論じたので、ここでは「とりたて」と待遇性について述べる 「「なむ…

近藤泰弘(1980)構文上より見た係助詞「なむ」:「なむ」と「ぞ――や」との比較

近藤泰弘(1980)「構文上より見た係助詞「なむ」:「なむ」と「ぞ――や」との比較」『国語と国文学』56(12).*1 要点 ナムを中心に係助詞の「強調」の内実について考える 阪倉のナムの「卓立(prominence)の強調」*2という指摘は、以下の3点によって妥当であ…

森野崇(1987.6)係助詞「なむ」の伝達性『源氏物語』の用例から

森野崇(1987.6)「係助詞「なむ」の伝達性『源氏物語』の用例から」『国文学研究』92. 要点 ナムが、「確定的なモノ・コトをとりたて、それを聞き手に対して丁寧に、穏やかにもちかける機能を有する」ことを主張する まず、先学の指摘する伝達性については…

中川祐治(2004.3)「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに

中川祐治(2004.3)「「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに」『文学・語学』178. 要点 大野(1993)の「副詞表現の発達が係り結びの衰退の要因となった」という指摘…

森野崇(1989.12)係助詞「ぞ」についての考察:『源氏物語』の用例から

森野崇(1989.12)「係助詞「ぞ」についての考察:『源氏物語』の用例から」『国語学研究と資料』13. 要点 係助詞ゾが、「表現主体による指定の判断を明示する」助詞であることを主張する どの部分をとりたてるかで、2通りがあり得る 上接する部分をとりたて…

森野崇(1993.5)奈良時代の終助詞「ぞ」について

森野崇(1993.5)「奈良時代の終助詞「ぞ」について」『国語国文』62(5). 要点 前稿(森野1992)で述べた、中古の終助詞ゾの特徴が、上代のゾにも当てはまるのかを検証する 中古のゾ:「判断の対象として素材化されたモノ・コトについて、表現主体の断定の判…

森野崇(1992.3)平安時代における終助詞「ぞ」の機能

森野崇(1992.3)「平安時代における終助詞「ぞ」の機能」『国語学』168. 要点 従来指摘される終助詞ゾの性質2つのうち、 「措定」「指示」「強示」など 聞き手を指向する性質(「教示」も含め) 後者の「聞き手指向性」は、以下の理由により認められない ナ…

山口佳也(2004.3)「連体形+ぞ」の文について:「源氏物語」の用例をもとに

山口佳也(2004.3)「「連体形+ぞ」の文について:「源氏物語」の用例をもとに」『十文字国文』10. 要点 前稿(山口2003)で、連体ナリがノダ文同様以下の4類型に分けられ、いずれも「ある事態Xについて、そのことはとりもなおさずYという事態であるという…