ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

信太知子(2007.3)古代語終止形の機能:終止連体同形化と関連させて

信太知子(2007.3)「古代語終止形の機能:終止連体同形化と関連させて」『 神女大国文』18 要点 終止形連体形の合流について、連用終止同形の活用語が、その異形態化を目指したものであると考える 問題 終止形連用形が同形の語において、それがどちらである…

近藤泰弘(2019.2)平安時代の敬語の形態論

近藤泰弘(2019.2)「平安時代の敬語の形態論」『日本語学』38-2 問題 「敬語動詞の視点の中和」の問題 おはす・まゐるは非敬語形が行く・来・ありだが、敬語形になるとダイクシスが一見分からなくなる 行く・来の持つ方向性の視点と、おはす・まゐるの持つ…

矢島正浩(2018.5)逆接確定辞を含む[接続詞]の歴史

矢島正浩(2018.5)「逆接確定辞を含む[接続詞]の歴史」藤田保幸・山崎誠編『形式語研究の現在』和泉書院 要点 接続詞の発達には東西差があり、西は接続助詞を接続詞として転用する「並列性」、東は指示詞で先行文脈をまとめる「捉え直し性」として整理さ…

彦坂佳宣(2006.10)準体助詞の全国分布とその成立経緯

彦坂佳宣(2006.10)「準体助詞の全国分布とその成立経緯」『日本語の研究』2-4 要点 方言における準体助詞について、 分布と問題 準体助詞に関連する用法を以下のように分類(狭義の準体助詞はc, d) a 連体格 b 連体格的準体助詞:今のあるじも前のも c 代…

田村隆(2007.12)いとやむごとなききはにはあらぬが:教科書の源氏物語

田村隆(2007.12)「いとやむごとなききはにはあらぬが:教科書の源氏物語」『語文研究』104 要点 桐壺冒頭部が、ほぼ逆接として読まれてきたことを示す 問題 「いとやむごとなききはにはあらぬが」の「が」についての教科書的説明として、同格の格助詞であ…

日高水穂(2013.10)複合辞「という」の文法化の地域差

日高水穂(2013.10)「複合辞「という」の文法化の地域差」藤田保幸編『形式語研究論集』和泉書院 要点 「という」を事例として「文法化の地域差」を考える 前提 共通語において、トイウ/ッテ/ッチュウ・ッツウ 引用・伝聞に用いられるが、ッチュウ・ッツ…

松尾弘徳(2000.6)天理図書館蔵『狂言六義』の原因・理由を表す条件句:ホドニとニヨッテを中心に

松尾弘徳(2000.6)「天理図書館蔵『狂言六義』の原因・理由を表す条件句:ホドニとニヨッテを中心に」『語文研究』89 要点 ホドニ・ニヨッテの交替現象が、天理本内部で見られることを指摘し、 従来虎明本→虎寛本の時期での交替現象と見られたものを、むし…

岡部嘉幸(2011.3)否定と共起する「必ず」について:近世後期江戸語を中心に

岡部嘉幸(2011.3)「否定と共起する「必ず」について:近世後期江戸語を中心に」『千葉大学人文研究』40 問題 現代語においては必ずは肯定述語と呼応するが、江戸語に否定述語と共起する例がある 女房「そう仕なせへ。必(かならす)好男(いゝをとこ)を持…

釘貫亨(2016.3)上代語意志・推量の助辞ムの成立と展開

釘貫亨(2016.3)「上代語意志・推量の助辞ムの成立と展開」『訓点語と訓点資料』136 前提 活用助辞ム(いわゆる助動詞)が、精神的心理的意味を持つム語尾動詞から分出されて成立したと考える(釘貫2014) ムの意味は人称によって決まるのではなく、上接語…

釘貫亨(2016.3)上代語活用助辞ムの意味配置に関与する統語構造

釘貫亨(2016.3)「上代語活用助辞ムの意味配置に関与する統語構造」『万葉』221 要点 ムの意志・推量の意について、人称ではなく上接語の意志性がその意味の決定に関与することを示す 前提 活用助辞(いわゆる助動詞)ムが、ム語尾動詞のうち「精神的心理的…

栗田岳(2010.9)上代特殊語法攷:「ずは」について

栗田岳(2010.9)「上代特殊語法攷:「ずは」について」『万葉』207 要点 上代特殊語法ズハについて、その特殊性を、否定から離れ得る環境における「不望」の意の前景化にあると考える 前提と問題 特殊語法ズハを基本的には仮定条件であると考えた上で、その…

細川英雄(1982.7)『天草版平家物語』の「な—そ」をめぐって

細川英雄(1982.7)「『天草版平家物語』の「な—そ」をめぐって」『国語学研究と資料』6 前提 禁止表現「ナーソ」は室町末から江戸初期にかけて口頭語から姿を消す 否定の要素が文頭に来る構造が極めて稀であるため その過渡期の資料として天草平家を見ると…