ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

尾上圭介(1983.10)不定語の語性と用法

尾上圭介(1983.10)「不定語の語性と用法」渡辺実編『副用語の研究』明治書院 前提 不定語の語性に「(その物なら物、人なら人、数なら数の)内容が不明、不定であること」という不明性・不定性を求める 「だれか」「なにか」のような不定称者指示を「不定…

村山実和子(2012.10)接尾辞「クロシイ」考

村山実和子(2012.10)「接尾辞「クロシイ」考」『日本語の研究』8-4 要点 近世を中心に見られる接尾辞クロシイの意味用法を記述した上で、 クルシイ→クロシイ説を否定し、むしろクロシイ→クルシイであったことを示す 問題 近世に「形容詞~クロシイ」が見ら…

楊瓊(2015.3)上代の接続詞「しからば」の発生について

楊瓊(2015.3)「上代の接続詞「しからば」の発生について」『同志社国文学』82 問題 日本語接続詞は中古においては未発達だが、シカラバの例が上代に既にある 万葉集唯一のシカラバの仮名書き例 人妻とあぜかそを言はむ然らばか(志可良婆加)隣の衣を借り…

森山卓郎(2017.11)意志性の諸相と「ておく」「てみる」

森山卓郎(2017.11)「意志性の諸相と「ておく」「てみる」」森山卓郎・三宅知宏編『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版 要点 「意志性」の語彙的意味について、事態のあり方に応じた整理を提示し、 無意志的事態とテオク・テミルとの結びつきについて、…

徳本文(2013.7)古典語複合動詞の後項「あふ」について

徳本文(2013.7)「古典語複合動詞の後項「あふ」について」『立教大学日本文学』110 要点 ~カハス、アヒ~との比較を通して~アフの意味と歴史的な変遷を考察 問題 古典語~アフは現代語のように相互動作として解釈しにくい 類義の後項動詞~カハスは現代…

乾善彦(2011.3)『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文

乾善彦(2011.3)「『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文」坂詰力治編『言語変化の分析と理論』おうふう 要点 三宝絵の諸本の関係性と、それを通して見る和漢混淆文のあり方について 前提 源為憲撰『三宝絵』(永観2[984]成)三伝本 平仮名本 関戸本(保安元[1…

菊田千春(2011.9)複合動詞テミルの非意志的用法の成立:語用論的強化の観点から

菊田千春(2011.9)「複合動詞テミルの非意志的用法の成立:語用論的強化の観点から」『日本語文法』11-2 要点 テミルの非意志的用法の成立に、語用論的推意の前景化による試行の意味の希薄化を想定 問題 テミルは主節において試行の意で用いられ、意志的行…

三宅知宏(2015.11)日本語の「補助動詞」と「文法化」・「構文」

三宅知宏(2015.11)「日本語の「補助動詞」と「文法化」・「構文」」秋元実治・青木博史・前田満『日英語の文法化と構文化』ひつじ書房 要点 三宅(2015)の続き 特に構文スキーマの観点による、補助動詞の分析の有効性を示す 前提 前稿では補助動詞の分析…

三宅知宏(2015.3)日本語の「補助動詞」について

三宅知宏(2015.3)「日本語の「補助動詞」について」『鶴見日本文学』19 要点 補助動詞として呼ぶべきカテゴリーを明確にし、 補助動詞の分析に「文法化」と「構文」の観点が有効であることを示す 前提 V1テV2の後項を指して「補助動詞」とする いわゆる複…

徳本文(2015.9)古代語複合動詞の後項「おく」について

徳本文(2015.9)「古代語複合動詞の後項「おく」について」『立教大学大学院日本文学論叢』15 要点 古代語のVオクには本動詞の意を残すものとそうでないものがあり、 補助動詞的Vオクには現代語のテオクとは異なり意図性の意がない 問題 古典語Vオクは現代…

栗田岳(2017.3)助詞ハの諸相

栗田岳(2017.3)「助詞ハの諸相」『萬葉』223 要点 主題でないハが「非存在対象」の言語化であることに基づき、 ハの本質的性格を「言語上のものとして定位された対象を提示すること」と位置づける 問題 文中の体言類+助詞ハによる主題の提示はあくまでも…

永澤済(2017.3)複合動詞「Vおく」の用法とその衰退

永澤済(2017.3)「複合動詞「Vおく」の用法とその衰退」『名古屋大学日本語・日本文化論集』24 要点 「Vおく」について、近代に用法が限定化し、生産性が低下したことを示す 問題 近代以前の「Vおく」は生産性が高いが、 現代においては、書き置く、取り置…

サフランを収穫してパエリアを作ろう

要点 サフランを球根から育ててパエリアを作った これは以前GABANのサフランで作ったパエリア サフランの収穫 8月某日某所にて、サフランが球根で売られているところに通りかかる。「部屋に転がしておくだけで自分の栄養で咲くよ」と言われ、面白そうなので3…

小田勝(2008.3)「しもは」考:「はしも」と「しもは」と

小田勝(2008.3)「「しもは」考:「はしも」と「しもは」と」『国語研究』71 要点 係助詞とされてきた「しも」が係助詞に上接する例「しもは」の検討 問題 助詞シは中古において、係助詞モと複合したシモのみが広く用いられ(この点で複合辞的)、副助詞で…

柴田敏(1998.2)提案への同意を表すヨカナリについて

柴田敏(1998.2)「提案への同意を表すヨカナリについて」『紀要(静岡英和女学院短期大学)』30 要点 終止ナリが持つ提案への同意(イイデショウ相当)の用法についての記述 ヨカナリ 終止ナリの用法の一つに「提案への同意」がある あこき、部屋の戸開きた…

吉田永弘(2001.3)平家物語のホドニ:語法の新旧

吉田永弘(2001.3)「平家物語のホドニ:語法の新旧」『国語研究』64 要点 吉田(2000)のホドニの用法を基準にした、平家諸本の位置付けの検討 hjl.hatenablog.com 前提 吉田(2000)によるホドニの三段階 平安において、前件と後件が時間的に重なる用法(…

小島聡子(2001.8)平安時代の複合動詞

小島聡子(2001.8)「平安時代の複合動詞」『日本語学』20-8 要点 古典語複合動詞について、その認定の方法と、V+V→VテVの移行の条件 平安時代の複合動詞 何をもって複合動詞とするか?の問題 意味的な密着性をもって「複合」と考え、補助動詞レベルのものも…

藤田保幸(2017.3)複合辞であることを支える共時的条件:動詞句由来の複合辞を中心に

藤田保幸(2017.3)「複合辞であることを支える共時的条件:動詞句由来の複合辞を中心に」『龍谷大学グローバル教育推進センター研究年報』26 要点 通時的視点ではない、「複合辞が複合辞であることの根拠付け」を考える 前提 複合辞が複合辞であることは通…

小川志乃(2004.6)カラニの一用法:接続助詞カラ成立の可能性をめぐって

小川志乃(2004.6)「カラニの一用法:接続助詞カラ成立の可能性をめぐって」『語文』82 要点 カラ成立の「カラニのニ脱落説」についての検討 従来逆接とされたムカラニを原因理由の一部と捉えることで、カラニが断絶しなかったものと考える 問題 カラ成立の…

山口佳紀(2016.3)『万葉集』におけるテハとテバの用法

山口佳紀(2016.3)「『万葉集』におけるテハとテバの用法」『成蹊大学文学部紀要』51 要点 上代におけるテハ・テバの用法整理と問題例の処理 テハの用法3種 A:前件として既定の事態を述べて、後件にその後に生ずる事態を述べるタイプ。してからは・したあ…

大木一夫(2018.10)中世後期日本語動詞形態小見

大木一夫(2018.10)「中世後期日本語動詞形態小見」青木博史・小柳智ー・吉田永弘編『日本語文法史研究 4』ひつじ書房 要点 虎明本の動詞の形態論的分析と、古代語との接続 大木(2010) 分析手順は大木(2010)と同様 すなわち、 動詞と非自立形式を分け、…

近藤泰弘(2012.2)平安時代語の接続助詞「て」の様相

近藤泰弘(2012.2)「平安時代語の接続助詞「て」の様相」『国語と国文学』89-2 要点 近藤(2007)の補強と詳細な分析 hjl.hatenablog.com 問題 A類:て・ながら・ず(否定)・で(否定)・連用形 TAMを含まない B類:とも・ば(仮定)・は(仮定)・ば(確…

劉洪岩(2015.3)中古日本語の統語構造に対する漢文訓読の影響:主要部構造変容を中心に

劉洪岩(2015.3)「中古日本語の統語構造に対する漢文訓読の影響:主要部構造変容を中心に」『東アジア日本語教育・日本文化研究』18 要点 漢文訓読が日本語に及ぼした統語構造の変化について 問題 漢文訓読によって、基本的な構造(基本語順)は影響を受け…

迫野虔徳(2012.12)仮定条件表現「ウニハ」

迫野虔徳(2012.12)「仮定条件表現「ウニハ」」『方言史と日本語史』清文堂 要点 東国抄物に見られる「ウニハ」の再検討 問題 金田弘の指摘する、東国抄物の特徴語 コピュラのダ 助動詞ナイ 助動詞ヨウ 助動詞ベイ ハ行四段動詞連用形促音便 形容詞連用形の…

白井純(2001.9)助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として

白井純(2001.9)「助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として」『国語学』52-3 要点 ヨリ・カラの主格標示用法について、 キリシタン宗教文献類に多く用いられることを指摘し、 その要因として、上位待遇表現にル・ラルを用いず給…

吉田永弘(2007.7)中世日本語の因果性接続助詞の消長:ニヨッテの接続助詞化を中心に

吉田永弘(2007.7)「中世日本語の因果性接続助詞の消長:ニヨッテの接続助詞化を中心に」青木博史編『日本語の構造変化と文法化』くろしお出版 要点 ホドニからニヨッテへの交替について、 接続助詞化の過程を構造変化に求め、 交替の要因にホドニの用法拡…

川島拓馬(2018.1)近世・近代における「つもりだ」の用法変遷

川島拓馬(2018.1)「近世・近代における「つもりだ」の用法変遷」『筑波日本語研究』22 要点 つもりだの用法展開について 意志専用形式でなくなっていくことの指摘と、 新たな否定形式「つもりはない」の成立 川島(2018)とセット hjl.hatenablog.com 問題…

山田昌裕(2014.2)「デサエ」二種の由来

山田昌裕(2014.2)「「デサエ」二種の由来」『恵泉女学園大学紀要』26 要点 山田(2012)の続き hjl.hatenablog.com 問題 デサエには、連接「デ+サエ」と、融合化「デサエ」がある(山田2012) 連接デサエ:有名観光地{でさえ/で}、多言語での看板やパ…

間淵洋子(2000.6)格助詞「で」の意味拡張に関する一考察

間淵洋子(2000.6)「格助詞「で」の意味拡張に関する一考察」『国語学』51-1 要点 格助詞「で」の意味拡張について、 特に動作主格(自分でやる)、原因格(風邪で休む)が発達したことを示し、 付加的な格を示す「で」が、中心的用法要素へと参入したこと…

山田昌裕(2012.10)「デサエ」の融合化とその背景

山田昌裕(2012.10)「「デサエ」の融合化とその背景」『表現研究』96 要点 デ相当でないデサエについて、その発生の背景を考える 融合化したデサエ 融合化したデサエの問題を扱う ひっきりなしに通る電車の音{でさえ/*で/が}、ここでは商店街の活気をさ…