ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

外山映次(1957.12)質問表現における文末助詞ゾについて:近世初期京阪語を資料として

外山映次(1957.12)「質問表現における文末助詞ゾについて:近世初期京阪語を資料として」『国語学』31. 要点 16世紀末まで、疑問詞を用いた質問表現の基本的形式は「疑問詞+ゾ」であるが、17世紀中葉に至って、ゾの消滅した形式が多く見られるようになる…

矢島正浩(2013.10)条件表現史における近世中期上方語ナレバの位置づけ

矢島正浩(2013.10)「条件表現史における近世中期上方語ナレバの位置づけ」『近代語研究17』武蔵野書院. 要点 ナレバ(<已然形+バ)において、活用型(雨降れば)に比して非活用形型(雨なれば)の変化(ホドニ・ニヨッテへの移行)が遅かったことについ…

野沢勝夫(1993.4)妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として

野沢勝夫(1993.4)「妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として」『妙一記念館本仮名書き法華経 研究編』霊友会. 要点 以下の8点の比較により、妙一本が足利本に先んずるものであることを主張する。足利本は1330写の識語を持つが、妙一本…

田中志瑞子(2008.3)『毛詩聴塵』の成立:『聞書』の利用を通じて

田中志瑞子(2008.3)「『毛詩聴塵』の成立:『聞書』の利用を通じて」『訓点語と訓点資料』120. 要点 『毛詩国風篇聞書』(以下『聞書』)と『毛詩聴塵』との間には極めて類似する箇所があり、宣賢は『聴塵』の参考資料として『聞書』の記述も取り込んだも…

大坪併治(2003.9)石山寺本『大智度論』天安点における文法上の諸問題

大坪併治(2003.9)「石山寺本『大智度論』天安点における文法上の諸問題」『訓点語と訓点資料』111. 要点 石山寺本『大智度論』天安点には、以下の文法上問題のある点がある。 動詞:サ変+キにおいて、セシ・セシカでなく、シシ・シシカとする場合がある。…

大坪併治(2008.9)石山寺本大智度論古点における「誰……者」の訓法について

大坪併治(2008.9)「石山寺本大智度論古点における「誰……者」の訓法について」『訓点語と訓点資料』121. 要点 石山寺本大智度論[858~]には、「誰…者」の構文が登場し、「たれか…するもの/ひと」と読む。 誰か当に治せむ者[もの]。 これが定着すること…

林禔映(2021.12)近世資料の文体差による叙法副詞の使用実態:「サスガ(ニ・ハ)」を例にして

林禔映(2021.12)「近世資料の文体差による叙法副詞の使用実態:「サスガ(ニ・ハ)」を例にして」『日本語教育(韓国日本語教育学会)』98. 要点 近世の副詞研究で手薄である文体的特徴に注目し、サスガニ・サスガハの文体差(ここでいう文体は、文末辞を…

李知殷(2012.8)副詞「多分」の史的変遷をめぐって

李知殷(2012.8)「副詞「多分」の史的変遷をめぐって」『立教大学大学院日本文学論叢』12. 要点 「多分」が「大多数」の意から、副詞へと変化する過程について。 中世の「多分」は、「ある集団、物事のなかの多い部分」を表す例が多く、一部、動詞に係る形…

吉本裕史(2022.3)副詞「ちゃんと」の語史

吉本裕史(2022.3)「副詞「ちゃんと」の語史」『Nagoya Linguistics』16. 要点 以下のチャント2種のうち、a は様態副詞、b は評価成分であり、a → b の派生が想定される。その派生過程を確かめる。 a [[ちゃんと動か]ない] b ちゃんと[[動か]ない] …

吉本裕史(2020.11)副詞「きっと」の語史:推量の用法の成立についての考察

吉本裕史(2020.11)「副詞「きっと」の語史:推量の用法の成立についての考察」『名古屋大学国語国文学』113. https://doi.org/10.18999/nagujj.113.168 要点 情態副詞のキット(きっと目元を引き締めた)が推量の用法(陳述副詞、きっと好転する)を獲得す…

中本茜(2016.2)天草版『平家物語』の副詞「まことに」の付加について

中本茜(2016.2)「天草版『平家物語』の副詞「まことに」の付加について」『国文学論叢』61. 要点 天草平家が評価の語にマコトニを付加するのは、「物語理解のため」という理由を超えた編纂態度であり、編者の関心の所在や主題の所在を窺うことができるので…

古田龍啓(2022.3)副詞タシカの語史

古田龍啓(2022.3)「副詞タシカの語史」『日本語文法』22(1). 要点 副詞タシカが想起文でのみ使われ、タシカニと区別されるようになった経緯について考える。 日国では噺本(17C末)に見られる推量を伴うタシカが挙げられるが、洞門抄物に以下の例があると…

中野遙(2019.9)キリシタン版『日葡辞書』の「id est」について

中野遙(2019.9)「キリシタン版『日葡辞書』の「id est」について」『訓点語と訓点資料』143. 要点 日葡辞書の語釈に付される id est (すなわち、以下{IE})注記は、以下の構造を持ち、 注記対象の語(D)、注記する側の語(E) Xeidan.(誓断) i. Chic…

鈴木博(1982.3)『勅規桃源鈔』の国語学的考察

鈴木博(1982.3)「『勅規桃源鈔』の国語学的考察」『滋賀大学教育学部紀要 人文・社会・教育科学』31. 要点 両足院本の『勅規桃源鈔』(雲章一慶講、桃源瑞山1462抄)の資料性について。 (「諸本の概略」は原論文参照) コソの結びにサフラウメが多く現れ…

橋本博幸(1990.6)漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合

橋本博幸(1990.6)「漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合」『訓点語と訓点資料』84. 要点 サダメテをケースに、「(漢文)直訳語がどのように国語文に受容されていったか」(例えば、意味や用法はそれをそのまま踏襲するのか?)を考える。 訓…

高見三郎(2001.1)国語資料としての『四河入海』

高見三郎(2001.1)「国語資料としての『四河入海』」『国語国文』70(1). 要点 四河入海には笑雲清三自筆本(東福寺本)と、古活字版の国会本(抄物大系の底本)が知られ、この他に、東福寺本に近い書き入れを有する東洋文庫本、内閣文庫本などがある。 内閣…

鈴木博(1977.12)医方大成論抄における用語の違いについて

鈴木博(1977.12)「医方大成論抄における用語の違いについて」『国語学』111. 要点 医方大成論抄の東大本・京大本の2本の間に見られる相違について。 京大本には「安芸道本」、東大本には「済庵」の奥書がある。 東大本・京大本は転写の関係になく、姉妹関…

国会図書館デジコレから全文テキストをダウンロードするだけのブックマークレット

リニューアルに際して、ブックマークレットの箇所も更新しました。(2022/12/21) 使えなくなってたのでまた更新しました。(2023/01/05) これは何の記事 国会図書館次世代デジタルライブラリーで古典籍が検索できるようになって、いよいよすごいことになっ…

杉山俊一郎(2016.9)古代日本語における「にして」の意味領域について

杉山俊一郎(2016.9)「古代日本語における「にして」の意味領域について」『訓点語と訓点資料』137. 要点 ニテとの比較と文体差を考慮しつつ、古代語のニシテの機能について考える。 上代は、 ニシテが多くニテは少なく、 ニシテの用法は場所・時・状態に限…

辻本桜介(2022.4)中古語における間接疑問文相当の引用句

辻本桜介(2022.4)「中古語における間接疑問文相当の引用句」『日本語の研究』18(1). 要点 古代語に間接疑問文は存在しないと考えられているが、間接疑問文に相当する用法を持つ引用句があることを主張する。 まず、間接疑問文の用法を持つことが妥当である…

山本佐和子(2021.3)中世室町期の注釈書における「~トナリ」の用法

山本佐和子(2021.3)「中世室町期の注釈書における「~トナリ」の用法」『筑紫日本語論叢Ⅲ』風間書房. 要点 杜詩抄に特徴的に用いられる、原典の登場人物の発話の解釈に用いられる「トナリ」について考える。 蘇源明トノハ去モノトヲ知リサウタホドニ、酒銭…

山本佐和子(2016.3)五山・博士家系抄物における濁音形〈候゛〉について

山本佐和子(2016.3)『五山・博士家系抄物における濁音形〈候゛〉について」『国語語彙史の研究35』和泉書院. 要点 杜詩抄などの五山・博士家系抄物に、濁音形「ゾウ」があり、 これは、他の文末形式(ヂャ・ゾ)と併用され、周辺的・補助的な注釈内容を示…

大秦一浩(2001.6)上代形容詞連用形の一側面:萬葉集においてミ語法との関係から

大秦一浩(2001.6)「上代形容詞連用形の一側面:萬葉集においてミ語法との関係から」『京都大学國文學論叢』6. 要点 ミ語法を形容詞連用形との関係性から考える。 形容詞連用形を修飾法と中止法に分けると、圧倒的に修飾法が多く、 中止法は並列法(前句と…

岩田美穂(2021.1)述語句並列におけるミ並列の位置づけ

岩田美穂(2021.1)「述語句並列におけるミ並列の位置づけ」『就実表現文化』15. 要点 完了形式系の並列形式は、鎌倉頃にヌ・ツ・タリ(まとめてタリ型)があり、最終的にタリ一形式となる。これ以前に見られるミによる並列が、並列表現史にどのように位置づ…

大秦一浩(2005.9)接尾語ミの並列用法:『あゆひ抄』所説をめぐって

大秦一浩(2005.9)「接尾語ミの並列用法:『あゆひ抄』所説をめぐって」『文芸論叢』65. 要点 「降りみ降らずみ」(後撰集445)のような「ーミーミ」は、動詞見るに由来する接尾語ミの並列と見るのが通説であるが、『あゆひ抄』は、「も家」に立て、「も」…

高橋敬一(1991.3)『宇治拾遺物語』における助動詞「むず」の用法

高橋敬一(1991.3)「『宇治拾遺物語』における助動詞「むず」の用法」『活水日文』22. 要点 宇治拾遺物語におけるムズ・ムの異なり、 ムズには終止形終止の例が少なく(しかも「~ようとする」の意に偏り、テムズ・ナムズのみである)、ムには多い。 ムズに…

木下書子(1991.9)係り結び衰退の経緯に関する一考察

木下書子(1991.9)「係り結び衰退の経緯に関する一考察」『国語国文学研究』27. 要点 係り結びにおいて、係りの語と結びの語との間に意味関係が成り立たない例があり、これは例は少ないものの、全てが異例であるとまでは言い難い。 隠れなき御匂ひぞ、風に…

舩木礼子(2000.10)幕末以降の土佐方言における意志表現・推量表現形式の変化

舩木礼子(2000.10)「幕末以降の土佐方言における意志表現・推量表現形式の変化」『地域言語』12. 要点 土佐方言の意志・推量のロウについて、武市瑞山書簡と『土佐の方言』によって確認したい。 幕末において、 意志・勧誘:未然形ウが多く、一段動詞の場…

近藤要司(2020.11)述部内部の係り結び:連体形ニアリに係助詞が介入する場合

近藤要司(2020.11)「述部内部の係り結び:連体形ニアリに係助詞が介入する場合」青木博史・小柳智一・吉田永弘編『日本語文法史研究5』ひつじ書房. 要点 ニアリ構文に係り結びが介入する例の変遷について考える。 間なく恋ふれにかあらむ草枕(万621) 上…

前田桂子(2017.3)近世長崎文献より見る接続詞バッテンの成立について

前田桂子(2017.3)「近世長崎文献より見る接続詞バッテンの成立について」『国語語彙史の研究36』和泉書院. 要点 バッテンの成立についてはバトテ説が一般的であるが、以下の問題がある。 意味の不連続性と、 バトテが已然形に接続する一方で、バッテンが終…