ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2021-01-01から1年間の記事一覧

吉田茂晃(2007.2)〈カラ〉と〈ノデ〉に関するノート

吉田茂晃(2007.2)「〈カラ〉と〈ノデ〉に関するノート」『山邊道』50 要点 永野の「カラ=主観/ノデ=客観」という図式を離れて、カラが原因理由全体、ノデに使用制限のあるということの解釈を行いたい カラが可能でノデが不可能な以下の用法は全て上の図…

菊池そのみ(2021.8)古典語における形容詞テ形節の副詞的用法の変遷

菊池そのみ(2021.8)「古典語における形容詞テ形節の副詞的用法の変遷」『国語語彙史の研究40』和泉書院. 要点 標記の問題について、以下2点を考える 通時的概観と、下接する動詞の特徴についての検討 形容詞テ形節の修飾のタイプに基づく各時期の様相の記…

新里博樹(1983.1)終止形を有する形容詞群の考察

新里博樹(1983.1)「終止形を有する形容詞群の考察」『国語研究』46. 要点 上代の形容詞における標記の問題について、以下の2点を考える Ⅰ 終止形を有する形容詞にはどのような語があるか Ⅱ それらの形容詞はどのような特徴を有しているか 万葉集の形容詞…

劉相溶(2000.9)形式名詞「ハズ」の意味転成:洒落本を中心に

劉相溶(2000.9)「形式名詞「ハズ」の意味転成:洒落本を中心に」『専修国文』67. 要点 ハズ関連形式を、元の名詞とのかかわりではなく、ハズ(ダ)内での意味変化内の問題として考察したい 対象資料は洒落本と、捷解新語、浮世床、遠鏡など 中世末期には…

吉田光浩(1990.3)主成分分析法による形容詞の活用分析:「枕草子」を資料として

吉田光浩(1990.3)「主成分分析法による形容詞の活用分析:「枕草子」を資料として」『大妻国文』21. 要点 形容詞の活用形の分布の偏りから、その機能の分布を検討したい 枕草子に出現する形容詞の、各活用形+補助活用の出現率を求めると、以下の相関があ…

安本真弓(2009.3)中古における感情形容詞と感情動詞の対応とその対応要因:中古前期・中期の和文作品を対象として

安本真弓(2009.3)「中古における感情形容詞と感情動詞の対応とその対応要因::中古前期・中期の和文作品を対象として」『国語語彙史の研究28』和泉書院. 要点 中古において、現代語よりも感情形容詞と感情動詞の対応(アサマシ・アサム、オドロカシ・オ…

小亀拓也(2021.3)連体修飾節中に生起しにくい述語形式について

小亀拓也(2021.3)「連体修飾節中に生起しにくい述語形式について」『間谷論集』15. 要点 連体修飾節の統語的制限についての三原(1995)の議論を定量的観点から再検討したい 「判断確定性が最高次である確言のムード表現は連体修飾節中に生起可能であり、…

菊池そのみ(2019.1)古代語の「ての」について

菊池そのみ(2019.1)「古代語の「ての」について」『筑波日本語研究』23. 要点 標記形式(飲みての後は・万821)について、以下2点を考えたい 1 古代語における、テノによる連体修飾と、連体形連体修飾との間の差異 2 古代語のテノと現代語のテノの差異 調…

山本佐和子(2020.3)中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考

山本佐和子(2020.3)「中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考」『同志社国文学』92. 要点 ゲナが「本体把握」「内実推定・原因推定」を主張し、ゲナリとの関係性からその意味が生まれる理由を考えたい cf. 大鹿1993, …

佐藤順彦(2011.3)後期上方語におけるノデアロウの発達

佐藤順彦(2011.3)「後期上方語におけるノデアロウの発達」『日本語文法』11(1). 要点 江戸語のノダロウについては明らかな点が多いが、上方語についてはそうではない 上方語における事情推量を表す形式の調査結果 前期→後期にかけて、モノジャ>ノジャの…

佐藤順彦(2009.3)前期上方語のノデアロウ・モノデアロウ・デアロウ

佐藤順彦(2009.3)「前期上方語のノデアロウ・モノデアロウ・デアロウ」『日本語文法』9(1). 要点 前期上方語で未発達であったノデアロウの機能を、モノデアロウ・デアロウが担っていたことを主張する 現代語のノダロウの機能は事情推量であり、 前期上方…

大西拓一郎(1999.11)新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって

大西拓一郎(1999.11)「新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって」『日本語学』18(13) GAJ151の打消過去の分布と中央語史を比較したい p.100 GAJ151「行かなかった」では、 東にナカッタ、西にナンダ ナンダ類を囲むよ…

仁科明(2006.3)「恒常」と「一般」:日本語条件表現における

仁科明(2006.3)「「恒常」と「一般」:日本語条件表現における」『国際関係・比較文化研究』4(2) 要点 厳密に議論されてこなかった「恒常条件」「一般条件」の定義について考える 先行研究における定義はそれほどはっきりしないが、「結び付けられる二つの…

仁科明(1998.12)見えないことの顕現と承認:「らし」の叙法的性格

仁科明(1998.12)「見えないことの顕現と承認:「らし」の叙法的性格」『国語学』195. 要点 ラシの性格と、妥当な理解について考える まず、ラシを「根拠ある推量、確かな推量」という従来的理解、ひいては「推量」とする理解そのものに限界がある (この…

近藤泰弘(2005.11)平安時代語の副詞節の節連鎖構造について

近藤泰弘(2005.11)「平安時代語の副詞節の節連鎖構造について」『国語と国文学』82(11) 要点 現代語の書き言葉とは異なる、古典語の副詞節の問題について考える 古典語は従属節が連続する傾向があるが、特に副詞節は連続する傾向が強い 行く先多く、夜も更…

藤原あかね(2021.3)静岡県中部方言における推量表現「ラ」「ダラ」について

藤原あかね(2021.3)「静岡県中部方言における推量表現「ラ」「ダラ」について」『阪大社会言語学研究ノート』17. 要点 先行研究の指摘と話者(若年層)の内省とのズレ4点を踏まえつつラ・ダラの用法を記述したい 現在は、ズラ・ダズラ・ツラが使用されな…

高山善行(2021.6)連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して

高山善行(2021.6)「連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して」野田尚史・小田勝(編)『日本語の歴史的対照文法』和泉書院. 要点 ノダとの比較に基づき、連体ナリの記述分析を行い、以下の3点を主張する*1 連体ナリの性質はノダとの…

金水敏(2015.3)古代日本語の主格・対格の語順について

金水敏(2015.3)「古代日本語の主格・対格の語順について」江頭浩樹ほか(編)『より良き代案を絶えず求めて』開拓社. 要点 古代語において、Nノ・ガとNヲが一文に共起する場合に、ヲ>ガ(ヲがガに先行する)と考えたことがあるが(言語学会夏期講座2002…

岡村弘樹(2021.3)形容詞型の活用とミ語法

岡村弘樹(2021.3)「形容詞型の活用とミ語法」『国語国文』90(3). 要点 ミ語法を形容詞型活用の枠組みで考え、その位置づけを検討する 上代の形容詞型活用は、中古以降と以下の点で異なり、「動詞的なものと形容詞的なものという性格の異なる形態が混在し…

蜂矢真郷(2021.3)上代を中心とするバ行動詞とマ行動詞

蜂矢真郷(2021.3)「上代を中心とするバ行動詞とマ行動詞」『萬葉』231. 要点 上代を中心とするバ・マ行動詞の関係について、語構成の面から考える 阪倉はムとブを「同一の接尾語の子音交替」とし、 山口は「音変化より形態変化でないか」として、別途考え…

山田潔(2021.5)抄物における助動詞「べし」の変容:『毛詩聴塵』『両足院本毛詩抄』の本文比較

山田潔(2021.5)「抄物における助動詞「べし」の変容:『毛詩聴塵』『両足院本毛詩抄』の本文比較」『国語国文』90(5) 要点 川村(1995, 1996)の分類にしたがって、毛詩聴塵のベシの両足院本での使用状況を分類する A 観念上の事態成立主張用法 A1 現実世…

池田來未(2021.3)複合動詞「~ヌク」の史的変遷

池田來未(2021.3)「複合動詞「~ヌク」の史的変遷」『国文』134. 要点 複合動詞Vヌクの完遂の用法(苦難を耐え抜く)の獲得について考える Vヌクの用法を姫野2018に倣って以下のように分類する p.76 調査結果、 上代は全てが〈貫通〉(踏み抜く) 中古に…

ローレンス・ウエイン(2011.10)琉球語から見た日本語希求形式=イタ=の文法化経路

ローレンス・ウエイン(2011.10)「琉球語から見た日本語希求形式=イタ=の文法化経路」『日本語の研究』7(4). 要点 本土日本語の=イタシ(タシ)には以下の経路が想定されているが、2つ目の変化は類型的には支持されない 痛し > 甚し > 希望 琉球語鳩間…

近藤泰弘(1992.3)丁寧語のアスペクト的性格:中古語の「はべり」を中心に

近藤泰弘(1992.3)「丁寧語のアスペクト的性格:中古語の「はべり」を中心に」『辻村俊樹教授古稀記念日本語史の諸問題』明治書院. 要点 ハベリは謙譲語的側面と丁寧語的側面があるが、そのアスペクト的性格については明らかでない ハベリと非敬語の対応と…

出雲朝子(1993.7)『玉塵抄』の会話文:文末の形について

出雲朝子(1993.7)「『玉塵抄』の会話文:文末の形について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂. 標記の問題について、会話文を以下のように分類 A 原漢文に該当する会話部があるもの 1 終結部が明示されている(「~」ト云) 2 明示されていな…

kepler.gl でGAJのデータをお手軽に可視化する

前提 WALS Online みたいなことが、方言文法全国地図(GAJ)でもできたらいいなあと思った。例えば、ズームできたり、クリックすると地点情報が出てきたり、フィルタがかけられたりしたらなんだか嬉しい。 kepler.gl というUberが公開しているオープンソース…

小田佐智子(2016.3)岐阜方言の原因・理由に表れるモンデ

小田佐智子(2016.3)「岐阜方言の原因・理由に表れるモンデ」『阪大社会言語学研究ノート』14 要点 岐阜のモンデの形式的・意味的特徴の記述、 形式的特徴、 デ・モンデのいずれも終止形接続(あるデ/モンデ)だが、モンデは連体形接続(簡単なモンデ)も…

金沢裕之(1995.5)可能の副詞「ヨー」をめぐって

金沢裕之(1995.5)「可能の副詞「ヨー」をめぐって」『国語国文』64(5) 要点 関西~中国・四国のヨーの歴史を明らかにしたい 江戸後期以降の調査、 戯作にヨーの例はなく(一荷堂半水作に偏るため?)、エは洒落本にのみ例あり 能力可能、外的条件可能、心…

三宅俊浩(2019.12)近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立

三宅俊浩(2019.12)「近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立」『日本語の研究』15(3) 要点 尾張のラ抜きについて論じたい 使用率の高い中国四国・東海東山が不連続であり、京阪・東京では使用率が低く、中央語史の観察だけでは成立過程の解明が困難…

内間直仁(1985.3)係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に

内間直仁(1985.3)「係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に」『沖縄文化研究』11 要点 中央語の係り結び衰退の要因は明らかでないが、琉球語が示唆する点がある 琉球の活用形について2点、 奄美・沖縄では終止形、連体形、du係結形が概ね区…