ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

堀畑正臣(2018.2)動詞の自他対応による方言の成立とその分布:「かたる」と「のさる」をめぐって

堀畑正臣(2018.2)「動詞の自他対応による方言の成立とその分布:「かたる」と「のさる」をめぐって」西岡宣明ほか編『ことばを編む』開拓社 要点 動詞の自他対立における、方言独自の発達事例について 「かたる」と「かてる」 「加わる」の意で用いられる…

高桑恵子(2015.9)「御覧ず」の関係規定性:源氏物語における

高桑恵子(2015.9)「「御覧ず」の関係規定性:源氏物語における」『国学院雑誌』116(9) 要点 「御覧ず」と「見たまふ」の違いについて、御覧ずには関係規定性が認められ、見たまふにはそれがないことを示す 前提 御覧ずは見たまふより敬意が高いとされるが…

坂井美日(2015.7)上方語における準体の歴史的変化

坂井美日(2015.7)「上方語における準体の歴史的変化」『日本語の研究』11(3) 要点 ゼロ準体からノ準体の移行について、 ノの付き初めには形状・事柄のタイプに差はなく、ノ準体化は形状タイプが先に進行したことを示し、 ノの起源に「属格句ノ」の、連体形…

松本昂大(2016.10)古代語の移動動詞と「起点」「経路」:今昔物語集の「より」「を」

松本昂大(2016.10)「古代語の移動動詞と「起点」「経路」:今昔物語集の「より」「を」」『日本語の研究』12(4) 要点 移動動詞の意味的特徴によって、起点を表す格助詞の用法が決定される 前提 ヨリ・ヲは概ね、起点・経路を表すとされている が、万葉集に…

佐藤嘉惟(2018.6)世阿弥自筆能本の表音的表記:表記の揺れと執筆過程

佐藤嘉惟(2018.6)「世阿弥自筆能本の表音的表記:表記の揺れと執筆過程」『能と狂言』16 要点 表音的とされてきた世阿弥能本に非表音的箇所があることを指摘し、 その表記揺れの生まれる過程に書写行為があったことを想定 研究史 能本への注目は、日本語史…

大鹿薫久(1999.3)「べし」の文法的意味について

大鹿薫久(1999.3)「「べし」の文法的意味について」『ことばとことのは 森重先生喜寿記念』和泉書院 要点 上代のベシの意味について 他のモダリティとの相違点について、対象的・作用的意味の両方を認めることで説明する 前提 上代語ベシに、推量周辺のム…

中沢紀子(2004.11)連体修飾節にみられるウ・ウズル

中沢紀子(2004.11)「連体修飾節にみられるウ・ウズル」『筑波日本語研究』9 要点 中世末期における連体用法のウ・ウズルについて、以下の点を示す タリ・テアル・ズとの共起が少ない 形式名詞を修飾しやすい 連体節の事態が主節より後のもの 前提 ウ・ウズ…

永田里美(2018.3)『源氏物語』における反語表現:会話文中の「ヤハ」、「カハ」について

永田里美(2018.3)「『源氏物語』における反語表現:会話文中の「ヤハ」、「カハ」について」『跡見学園女子大学文学部紀要』53 要点 いわゆる反語のヤハ・カハの差異を示す ヤハの結びは既実現要素、カハの結びはムなどの未実現要素に偏り、 ヤハは聞き手…

岡﨑友子(2011.11)指示詞系接続語の歴史的変化:中古の「カクテ・サテ」を中心に

岡﨑友子(2011.11)「指示詞系接続語の歴史的変化:中古の「カクテ・サテ」を中心に」青木博史編『日本語文法の歴史と変化』くろしお出版 要点 指示詞接続語カクテ・サテについて、カクテが衰退し、サテが指示詞の機能を失って接続語・感動詞として展開して…

木部暢子(2019.2)対格標示形式の地域差:無助詞形をめぐって

木部暢子(2019.2)「対格標示形式の地域差:無助詞形をめぐって」『東京外国語大学国際日本学研究報告』5 要点 対格標示形式の地域差、各地の出現要因について、方言コーパスを用いつつ示す 前提 主格・対格標示の地域間の差異 弘前:主格・対格ともに無助…