ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

亀井裕子(2003.12)近松浄瑠璃における接尾語「さ」

亀井裕子(2003.12)「近松浄瑠璃における接尾語「さ」」『国語研究』67 要点 標記の問題について、サを以下の用法に分けて考える 文末のサ:詠嘆 文中のサ: 名詞としての用法 原因・理由を表すサニ 文末のサは、詠嘆の他に、詠嘆を表しながら「行為に至っ…

青木博史(2003.3)「~サニ」構文の史的展開

青木博史(2003.3)「「~サニ」構文の史的展開」『日本語文法』3(1) 要点 原因・理由を表す「形容詞語幹+サ+ニ」について、句の包摂の観点から考える 消長について、 現代語で「特定の語彙に固定されてはいない」(影山1993)とされるが、 実質的にはほぼ…

木下書子(1997.2)係助詞「なむ」の表現性:『源氏物語』における結びの省略例を通して

木下書子(1997.2)「係助詞「なむ」の表現性:『源氏物語』における結びの省略例を通して」『国語国文学研究』32 要点 ナムの衰退過程について考えたい ナムに指摘される特徴3点に基づいて、結びの省略例を中心に考えると、 結びの省略例が多い 省略の場合…

木下書子(1993.12)「けん」から「つらう」へ:「る」「らる」を承ける場合を中心に

木下書子(1993.12)「「けん」から「つらう」へ:「る」「らる」を承ける場合を中心に」『国語国文学研究』29 要点 ケンからツラウへの交替について、特に上接語の制限を中心に考えたい 当初のツランはケンの領域を侵さないのだが、 これはツの上接語の制限…

山田潔(2020.5)『玉塵抄』における「らう・つらう・うずらう」の用法

山田潔(2020.5)「『玉塵抄』における「らう・つらう・うずらう」の用法」『国学院雑誌』121(5) 要点 標題形式について、以下の3点を考える ツラウが多くコソの結びとして用いられること ラウの上接語がアルに偏ること ウズラウがコソ・ゾと呼応せずにカと…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(4)助動詞「らう」「うずらう」の用法

山田潔(2001.9)「助動詞「らう」「うずらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出2001 要点 ツラウに引き続き、ラウ・ウズラウの意味用法について考える ラウについて、 ゾ・コソの結びが大半を占め、村上1979の言う通り、推量の強調をラウが担うと…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(3)複合助動詞「つらう」の用法

山田潔(2001.9)「複合助動詞「つらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1995 要点 室町のツラウについて考える 斯道本平家のケンは天草版ではツラウに交替する ケンの用法を以下の3種に分類すると、ケン→ツラウの例はA, Bしか見られない(木下書…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(2)複合助動詞「つらむ」の用法に関する一考察

山田潔(2001.9)「複合助動詞「つらむ」の用法に関する一考察」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1993 要点 平家のツラムについて、キ・ツの問題を踏まえながら考える キ・ツは意味的に近似し、キは現在との交渉を持たない過去を、ツは何らかの意味で交渉を…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(1)平家物語における助動詞「つ」の文章論的考察:助動詞「き」との比較を通して

山田潔(2001.9)「平家物語における助動詞「つ」の文章論的考察:助動詞「き」との比較を通して」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1986 これのつづき hjl.hatenablog.com 要点 ツの完了・強意以外の意味用法の分析を、(ヌではなく)キと比較する形で行う …

村上昭子(1979.2)助動詞ラウ:中世末期の用法

村上昭子(1979.2)「助動詞ラウ:中世末期の用法」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社 要点 中世末のラウに終止法が多く、しかも係助詞の結びが多いことについて、以下の2点から考えたい ラウと係助詞との関係 ラウとウとの意味上の関係 1点目、 ラ…

田中重太郎(1966)逆接仮定条件を示す接続助詞「と」の用例について

田中重太郎(1966)「逆接仮定条件を示す接続助詞「と」の用例について」『明日香』31(9) 要点 平安朝文法史のト・トモの項に、以下の例が引かれている さはれさまでなくと、いひそめてむことはとて、(枕) あいきやうなくと、ことばしなめきなどいへば、(…

月本雅幸(1992.11)院政期の訓点資料における助動詞

月本雅幸(1992.11)「院政期の訓点資料における助動詞」『国語と国文学』69(11) 要点 平安初期訓点資料に比して院政期訓点資料が活用されることは少ないが、価値が低いとは言い切れない 当時の口語を含む部分がありそうな一方で、移点などによる年代的重層…

小松光三(1992.11)体言に連なる助動詞「む」の表現:『枕草子』の場合

小松光三(1992.11)「体言に連なる助動詞「む」の表現:『枕草子』の場合」『国語と国文学』69(11) 要点 連体ムの「仮定・婉曲」の説明に問題があるので、統一的説明を目指して、(中古和文の代表としての)枕草子の連体ムについて考える 以下の5つの傾向が…

黄孝善(2020.3)近世江戸語終助詞の階層性と体系

黄孝善(2020.3)「近世江戸語終助詞の階層性と体系」『国語学研究』59 要点 標記の問題について、田野村1994が以下の分類を試みているが、説明できないものがある ワ(A)+サ(A)の処理の問題、ヤサ・ヤイの例があることなど p.415 承接順序を示すと以下…

岡部嘉幸(2003.4)ハズダとニチガイナイについて:両者の置き換えの可否を中心に

岡部嘉幸(2003.4)「ハズダとニチガイナイについて:両者の置き換えの可否を中心に」『日本語科学』13 要点 ハズダ・ニチガイナイの置き換えの可否を「判断の根拠の確かさ」に求める(ハズダは確か、ニチガイナイは不確か)ことがある(三宅1993)が、問題…

古田龍啓(2020.9)清原良賢講『論語抄』の諸本について

古田龍啓(2020.9)「清原良賢講『論語抄』の諸本について」『訓点語と訓点資料』145 要点 東山本の良賢抄は『応永27年本論語抄』としてよく使われるが、誤写の問題については看過されている 東山本、米沢本、大東急本、両足院本と、良賢抄の書き入れがある…

舩木礼子(1999)意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論

舩木礼子(1999)「意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論」『待兼山論叢 日本学篇』33 要点 ①福島県喜多方、②宮城県鳴瀬、③秋田県大館、④秋田県五城目、⑤静岡県沼津、⑥兵庫県稲美の6地点のベーを対照する 接続において、 ①②③④はほぼ一段・カ変・サ…

江原由美子(2019.3)逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって

江原由美子(2019.3)「逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって」『岡大国文論稿』47 要点 トモ・トの歴史について考える 現代語では生産的でないが、かつては主要形式であったこと モの有無と、トの使用が中世末期以降に増えること ドモ・ドからの類推説…

坂詰力治(2002.3)中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に

坂詰力治(2002.3)「中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に」『文学論藻』76 要点 終止形連体形の統合が終止法以外の終止形にも及ぶことについて、特に室町におけるマジ・ラン・ベシを見る 室町…

小木曽智信(2020.3)通時コーパスに見るモダリティ形式の変遷

小木曽智信(2020.3)「通時コーパスに見るモダリティ形式の変遷」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 CHJを用いて、モダリティ形式の大きな変化を見る 古代語はム・ムズ・ジ、ケム・ベシ・マジ・ラシ・メ…

福田嘉一郎(2000.3)天草本平家物語の助動詞ラウ

福田嘉一郎(2000.3)「天草本平家物語の助動詞ラウ」『国文研究(熊本女子大学)』45 要点 原拠本との天草版との比較により、室町のラウの意味や機能について考える 天草版のラウは原拠本では、 ラウの場合:ラムの他、ムズラム、ツラム、ケムで、前接語は…

三宅知宏(1995.12)「推量」について

三宅知宏(1995.12)「「推量」について」『国語学』183 要点 推量という概念をめぐって、以下の3点について考える 過度に一般化された曖昧な「推量」の概念の明確化 「推量」概念を用いて説明される形式の限定 「推量」概念の「認識的モダリティ」体系内で…

神戸和昭(1999.10)黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に

神戸和昭(1999.10)「黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に」『近代語研究』10 要点 「必ずしも明確になっていない」黄表紙の資料性について考える 作者・版元が同一、刊年も近く、主要登場人物も借用する、以下2作品…

赤峯裕子(1989.6)「まだ~ない」から「まだ~ていない」へ

赤峯裕子(1989.6)「「まだ~ない」から「まだ~ていない」へ」『奥村三雄教授退官記念国語学論叢』桜楓社 要点 標記の2形式について、後者の形式は思いの外新しく、前者→前者+後者への移行は、分析的傾向の一つの現れと考えられる なんだ、湯はまだあかね…

江原由美子(2002.11)トモによる逆接条件表現

江原由美子(2002.11)「トモによる逆接条件表現」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』14 要点 逆接仮定条件のトモが事実を述べる場合に用いられることがある(大わだ淀むとも) このいわゆる「修辞的仮定」が何なのかを考えるために、トモの現象面を明ら…

小島聡子(1995.10)動詞の終止形による終止:中古仮名文学作品を資料として

小島聡子(1995.10)「動詞の終止形による終止:中古仮名文学作品を資料として」『築島裕博士古稀記念国語学論集』汲古書院 要点 動詞の終止形で言い切られる文を整理する そもそも、終止形終止の例は多くない 文体的に、消息文(評論文的)な文には終止形終…

土岐留美江(2005.10)平安和文会話文における連体形終止文

土岐留美江(2005.10)「平安和文会話文における連体形終止文」『日本語の研究』1(4) 要点 中古における表現性のない連体形終止の例は、先駆的な例として位置づけられているが、合一が室町に完了することを考えれば「直接的な走りと見るのはやや短絡すぎる」…

木部暢子(2019.3)諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差

木部暢子(2019.3)「諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 COJADSモニター版を使って諸方言の推量表現を整理する 述語のタイプ(名…

高梨信乃(2019.11)〈宣言・アナウンス〉の意志表現:書き言葉における「しよう」を中心に

高梨信乃(2019.11)「〈宣言・アナウンス〉の意志表現:書き言葉における「しよう」を中心に」『日本語/日本語教育研究』10 要点 「進行役がこれから行う行為を伝える意志表現」(宣言・アナウンス)があり、学習者が不自然な産出をすることがある 銀の匙…

高梨信乃(2017.11)「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から

高梨信乃(2017.11)「「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から」森山卓郎 ・三宅知宏(編)『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版 要点 しようと思う/しようと思っている/つもりだ の3形式を、BCCWJにおける使用実態…