ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

小松光三(1992.11)体言に連なる助動詞「む」の表現:『枕草子』の場合

小松光三(1992.11)「体言に連なる助動詞「む」の表現:『枕草子』の場合」『国語と国文学』69(11) 要点 連体ムの「仮定・婉曲」の説明に問題があるので、統一的説明を目指して、(中古和文の代表としての)枕草子の連体ムについて考える 以下の5つの傾向が…

黄孝善(2020.3)近世江戸語終助詞の階層性と体系

黄孝善(2020.3)「近世江戸語終助詞の階層性と体系」『国語学研究』59 要点 標記の問題について、田野村1994が以下の分類を試みているが、説明できないものがある ワ(A)+サ(A)の処理の問題、ヤサ・ヤイの例があることなど p.415 承接順序を示すと以下…

岡部嘉幸(2003.4)ハズダとニチガイナイについて:両者の置き換えの可否を中心に

岡部嘉幸(2003.4)「ハズダとニチガイナイについて:両者の置き換えの可否を中心に」『日本語科学』13 要点 ハズダ・ニチガイナイの置き換えの可否を「判断の根拠の確かさ」に求める(ハズダは確か、ニチガイナイは不確か)ことがある(三宅1993)が、問題…

古田龍啓(2020.9)清原良賢講『論語抄』の諸本について

古田龍啓(2020.9)「清原良賢講『論語抄』の諸本について」『訓点語と訓点資料』145 要点 東山本の良賢抄は『応永27年本論語抄』としてよく使われるが、誤写の問題については看過されている 東山本、米沢本、大東急本、両足院本と、良賢抄の書き入れがある…

舩木礼子(1999)意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論

舩木礼子(1999)「意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論」『待兼山論叢 日本学篇』33 要点 ①福島県喜多方、②宮城県鳴瀬、③秋田県大館、④秋田県五城目、⑤静岡県沼津、⑥兵庫県稲美の6地点のベーを対照する 接続において、 ①②③④はほぼ一段・カ変・サ…

江原由美子(2019.3)逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって

江原由美子(2019.3)「逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって」『岡大国文論稿』47 要点 トモ・トの歴史について考える 現代語では生産的でないが、かつては主要形式であったこと モの有無と、トの使用が中世末期以降に増えること ドモ・ドからの類推説…

坂詰力治(2002.3)中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に

坂詰力治(2002.3)「中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に」『文学論藻』76 要点 終止形連体形の統合が終止法以外の終止形にも及ぶことについて、特に室町におけるマジ・ラン・ベシを見る 室町…

小木曽智信(2020.3)通時コーパスに見るモダリティ形式の変遷

小木曽智信(2020.3)「通時コーパスに見るモダリティ形式の変遷」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 CHJを用いて、モダリティ形式の大きな変化を見る 古代語はム・ムズ・ジ、ケム・ベシ・マジ・ラシ・メ…

福田嘉一郎(2000.3)天草本平家物語の助動詞ラウ

福田嘉一郎(2000.3)「天草本平家物語の助動詞ラウ」『国文研究(熊本女子大学)』45 要点 原拠本との天草版との比較により、室町のラウの意味や機能について考える 天草版のラウは原拠本では、 ラウの場合:ラムの他、ムズラム、ツラム、ケムで、前接語は…

三宅知宏(1995.12)「推量」について

三宅知宏(1995.12)「「推量」について」『国語学』183 要点 推量という概念をめぐって、以下の3点について考える 過度に一般化された曖昧な「推量」の概念の明確化 「推量」概念を用いて説明される形式の限定 「推量」概念の「認識的モダリティ」体系内で…

神戸和昭(1999.10)黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に

神戸和昭(1999.10)「黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に」『近代語研究』10 要点 「必ずしも明確になっていない」黄表紙の資料性について考える 作者・版元が同一、刊年も近く、主要登場人物も借用する、以下2作品…

赤峯裕子(1989.6)「まだ~ない」から「まだ~ていない」へ

赤峯裕子(1989.6)「「まだ~ない」から「まだ~ていない」へ」『奥村三雄教授退官記念国語学論叢』桜楓社 要点 標記の2形式について、後者の形式は思いの外新しく、前者→前者+後者への移行は、分析的傾向の一つの現れと考えられる なんだ、湯はまだあかね…

江原由美子(2002.11)トモによる逆接条件表現

江原由美子(2002.11)「トモによる逆接条件表現」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』14 要点 逆接仮定条件のトモが事実を述べる場合に用いられることがある(大わだ淀むとも) このいわゆる「修辞的仮定」が何なのかを考えるために、トモの現象面を明ら…

小島聡子(1995.10)動詞の終止形による終止:中古仮名文学作品を資料として

小島聡子(1995.10)「動詞の終止形による終止:中古仮名文学作品を資料として」『築島裕博士古稀記念国語学論集』汲古書院 要点 動詞の終止形で言い切られる文を整理する そもそも、終止形終止の例は多くない 文体的に、消息文(評論文的)な文には終止形終…

土岐留美江(2005.10)平安和文会話文における連体形終止文

土岐留美江(2005.10)「平安和文会話文における連体形終止文」『日本語の研究』1(4) 要点 中古における表現性のない連体形終止の例は、先駆的な例として位置づけられているが、合一が室町に完了することを考えれば「直接的な走りと見るのはやや短絡すぎる」…

木部暢子(2019.3)諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差

木部暢子(2019.3)「諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 COJADSモニター版を使って諸方言の推量表現を整理する 述語のタイプ(名…

高梨信乃(2019.11)〈宣言・アナウンス〉の意志表現:書き言葉における「しよう」を中心に

高梨信乃(2019.11)「〈宣言・アナウンス〉の意志表現:書き言葉における「しよう」を中心に」『日本語/日本語教育研究』10 要点 「進行役がこれから行う行為を伝える意志表現」(宣言・アナウンス)があり、学習者が不自然な産出をすることがある 銀の匙…

高梨信乃(2017.11)「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から

高梨信乃(2017.11)「「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から」森山卓郎 ・三宅知宏(編)『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版 要点 しようと思う/しようと思っている/つもりだ の3形式を、BCCWJにおける使用実態…

近藤泰弘(1995)中古語の副助詞の階層性について:現代語と比較して

近藤泰弘(1995)「中古語の副助詞の階層性について:現代語と比較して」益岡隆志ほか編『日本語の主題と取り立て』くろしお出版 要点 中古語の副助詞の体系全体の特徴を、語順を中心に記述する ダニ・スラ・サヘ・ノミ・バカリ・マデ・ナド(・ヅツ) 格助…

福島直恭(2020.3)後期江戸語の行為要求表現方式「ねえ」に関する一考察

福島直恭(2020.3)「後期江戸語の行為要求表現方式「ねえ」に関する一考察」『学習院女子大学紀要』22 要点 江戸語で行為要求に使われるネエが、正面切って扱われたことはなかった 機能と成立過程「にしか」関心がなかったのは問題である 江戸洒落本・滑稽…

瀬楽亨(2019.11)機能的談話文法における日本語の文法記述に向けて

瀬楽亨(2019.11)「機能的談話文法における日本語の文法記述に向けて」『日本語文學 (Journal of the Society of Japanese Language and Literature, Japanology)』87 要点 機能的談話文法(FDG)の日本語への適用を考える FDGのコミュニケーションモデルは…

衣畑智秀(2004.12)古代語・現代語の「逆接」:古代語のトモ・ドモによる意味対立を中心に

衣畑智秀(2004.12)「古代語・現代語の「逆接」:古代語のトモ・ドモによる意味対立を中心に」『語文』83 要点 古代語で、トモは仮定条件、ドモは恒常条件と確定条件を表し、現代語で、テモは仮定条件・恒常条件、ケドは確定条件を表す。このことについて考…

衣畑智秀(2005.4)日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に

衣畑智秀(2005.4)「日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に」『日本語科学』17 要点 ノニ・ケド・テモを適切に記述するための枠組みを考えたい 従来説はノニの「予想」とケド・テモの「予想」の差異を説明し得ない 以下の概念を導…

衣畑智秀(2001.12)いわゆる「逆接」を表すノニについて:語用論的意味の語彙化

衣畑智秀(2001.12)「いわゆる「逆接」を表すノニについて:語用論的意味の語彙化」『待兼山論叢 文学篇』35 要点 ノニとケドの差異2点に対する説明は「逆接」のカテゴリーでは十分に行えない 違和感・意外感 後件が既実現:雪が降っている{けど/*のに}…

森脇茂秀(2000, 2001)希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって

森脇茂秀(2000.12)「希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって(一)」『別府大学国語国文学』42 森脇茂秀(2001.3)「希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって(二)」『山口国文』24 要点 シカ系・カシは「詠嘆的希望表現」から「主体的希望表現」へと変…

酒匂志野(2002.7)源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味

酒匂志野(2002.7)「源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味」『国文』97 要点 源氏を対象に、Vシソムのアスペクト的な意味について考える 以下の観点から分類する 「短時間の具体的な動作・変化」か「長期にわたる大規模で複合的な動作・変化・状態」…

小島聡子(1999.4)複合動詞後項「行く」の変遷

小島聡子(1999.4)「複合動詞後項「行く」の変遷」『国語と国文学』76(4) 要点 Vユクの意味変化について考える ユクは空間の移動もしくは時間の移動を表すが、本動詞はほぼ空間の移動を表す 調査、 中古は時代が下るに従って、空間移動の意味で用いられるこ…

鈴木裕史(1999.3)接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合

鈴木裕史(1999.3)「接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合」『文教大学国文』28 要点 中世におけるツツについて考える 新旧語法の交錯する、とはずがたりを対象とする hjl.hatenablog.com まず、ツツの本義については反復・継続…

岩田幸昌(1990.2)源氏物語の接続助詞「つつ」をめぐって

岩田幸昌(1990.2)「源氏物語の接続助詞「つつ」をめぐって」『金沢大学国語国文』15 要点 ツツの意味には以下の2点が認められる 2つの状態が同時にあること 動作の反復・継続 すなわち、ツツの意味は、「動作の、反復・継続・複数を表しながら、その動作が…

信太知子(1998.3)「である」から「ぢゃ」へ:断定の助動詞の分離型と融合型

信太知子(1998.3)「「である」から「ぢゃ」へ:断定の助動詞の分離型と融合型」『神女大国文』9 要点 ヂャの成立にはニアリ>ニテアリ>デアル>デア>ヂャが想定されているが、文献にはデアル系(分離型)はそれほど多く見られない ヂャは15C後半、デアルは12…