ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

Kees Hengeveld and J. Lachlan Mackenzie. 2008. Functional Discourse Grammar: A Typologically-Based Theory of Language Structure

夏休みなので(まだだけど)趣向を変えて、以下の本をゆっくり読んでいきます*1。 Kindle版を買ったんですが、タブの揃えが少しおかしいので普通に本家のe-bookを買ったほうがいいと思います。 www.oxfordscholarship.com しばらく新しい記事は増えずに、こ…

福島直恭(2020.3)後期江戸語の行為要求表現方式「ねえ」に関する一考察

福島直恭(2020.3)「後期江戸語の行為要求表現方式「ねえ」に関する一考察」『学習院女子大学紀要』22 要点 江戸語で行為要求に使われるネエが、正面切って扱われたことはなかった 機能と成立過程「にしか」関心がなかったのは問題である 江戸洒落本・滑稽…

瀬楽亨(2019.11)機能的談話文法における日本語の文法記述に向けて

瀬楽亨(2019.11)「機能的談話文法における日本語の文法記述に向けて」『日本語文學 (Journal of the Society of Japanese Language and Literature, Japanology)』87 要点 機能的談話文法(FDG)の日本語への適用を考える FDGのコミュニケーションモデルは…

衣畑智秀(2004.12)古代語・現代語の「逆接」:古代語のトモ・ドモによる意味対立を中心に

衣畑智秀(2004.12)「古代語・現代語の「逆接」:古代語のトモ・ドモによる意味対立を中心に」『語文』83 要点 古代語で、トモは仮定条件、ドモは恒常条件と確定条件を表し、現代語で、テモは仮定条件・恒常条件、ケドは確定条件を表す。このことについて考…

衣畑智秀(2005.4)日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に

衣畑智秀(2005.4)「日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に」『日本語科学』17 要点 ノニ・ケド・テモを適切に記述するための枠組みを考えたい 従来説はノニの「予想」とケド・テモの「予想」の差異を説明し得ない 以下の概念を導…

衣畑智秀(2001.12)いわゆる「逆接」を表すノニについて:語用論的意味の語彙化

衣畑智秀(2001.12)「いわゆる「逆接」を表すノニについて:語用論的意味の語彙化」『待兼山論叢 文学篇』35 要点 ノニとケドの差異2点に対する説明は「逆接」のカテゴリーでは十分に行えない 違和感・意外感 後件が既実現:雪が降っている{けど/*のに}…

森脇茂秀(2000, 2001)希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって

森脇茂秀(2000.12)「希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって(一)」『別府大学国語国文学』42 森脇茂秀(2001.3)「希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって(二)」『山口国文』24 要点 シカ系・カシは「詠嘆的希望表現」から「主体的希望表現」へと変…

酒匂志野(2002.7)源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味

酒匂志野(2002.7)「源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味」『国文』97 要点 源氏を対象に、Vシソムのアスペクト的な意味について考える 以下の観点から分類する 「短時間の具体的な動作・変化」か「長期にわたる大規模で複合的な動作・変化・状態」…

小島聡子(1999.4)複合動詞後項「行く」の変遷

小島聡子(1999.4)「複合動詞後項「行く」の変遷」『国語と国文学』76(4) 要点 Vユクの意味変化について考える ユクは空間の移動もしくは時間の移動を表すが、本動詞はほぼ空間の移動を表す 調査、 中古は時代が下るに従って、空間移動の意味で用いられるこ…

鈴木裕史(1999.3)接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合

鈴木裕史(1999.3)「接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合」『文教大学国文』28 要点 中世におけるツツについて考える 新旧語法の交錯する、とはずがたりを対象とする hjl.hatenablog.com まず、ツツの本義については反復・継続…

岩田幸昌(1990.2)源氏物語の接続助詞「つつ」をめぐって

岩田幸昌(1990.2)「源氏物語の接続助詞「つつ」をめぐって」『金沢大学国語国文』15 要点 ツツの意味には以下の2点が認められる 2つの状態が同時にあること 動作の反復・継続 すなわち、ツツの意味は、「動作の、反復・継続・複数を表しながら、その動作が…

信太知子(1998.3)「である」から「ぢゃ」へ:断定の助動詞の分離型と融合型

信太知子(1998.3)「「である」から「ぢゃ」へ:断定の助動詞の分離型と融合型」『神女大国文』9 要点 ヂャの成立にはニアリ>ニテアリ>デアル>デア>ヂャが想定されているが、文献にはデアル系(分離型)はそれほど多く見られない ヂャは15C後半、デアルは12…

上野隆久(2005.6)江戸後期から明治期における「~からのコトだ」と「~からだ」:『春色英対暖語』と『三四郎』を資料として

上野隆久(2005.6)「江戸後期から明治期における「~からのコトだ」と「~からだ」:『春色英対暖語』と『三四郎』を資料として」『日本近代語研究4』ひつじ書房 要点 接続助詞カラには、後件で原因・理由を述べ、「からだ」で締めくくる用法があるが、江戸…

森勇太(2018.5)近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に

森勇太(2018.5)「近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に」小林隆(編)『コミュニケーションの方言学』ひつじ書房 要点 申し出表現の地理的なバリエーションを考える (その荷物は私が)持たしてもらいます(GAJ320・京都…

森勇太(2011.4)申し出表現の歴史的変遷:謙譲語と与益表現の相互関係の観点から

森勇太(2011.4)「申し出表現の歴史的変遷:謙譲語と与益表現の相互関係の観点から」『日本語の研究』7(2) 要点 申し出表現の考察を通して、テアゲル・テサシアゲルなどの「与益表現」の運用の変遷について考える 前提、申し出における与益表現は、 現代語…

山口明穂(1969.3)中世文語における接続助詞「とも」

山口明穂(1969.3)「中世文語における接続助詞「とも」」『国語と国文学』46(3) 要点 トモの接続の様相を通して、文語行為について考えたい 詠歌大概註で宗祇は「ぬるとも」を「ぬるゝとも」に置き換えて説明する 当たり前のことのようであるが、宗祇自身の…

宮内佐夜香(2016.12)逆接確定条件表現形式の推移についての一考察:中世後期から近世にかけて

宮内佐夜香(2016.12)「逆接確定条件表現形式の推移についての一考察:中世後期から近世にかけて」青木博史・小柳智ー・高山善行(編)『日本語文法史研究3』ひつじ書房 要点 ドモ・ドからガ、ケレドモ・ケレドへの移行について考える ドモ→ケレドモの過程…

宮内佐夜香(2015.3)近世後期における逆接の接続助詞について:上方語・江戸語の対照

宮内佐夜香(2015.3)「近世後期における逆接の接続助詞について:上方語・江戸語の対照」『中京大学文学会論叢』1 要点 宮内(2007, 2013)を踏まえつつ、近世後期江戸語のドモ・ケレドモ・ガについて、特に、あまり考えられてこなかった上方の精査と、東西…

山口明穂(1972.3)中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程

山口明穂(1972.3)「中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程」『国文白百合』3 要点 ツツは秘伝書において以下のように記述され、あゆひ抄などでは認識されている「一つの動作の反復」についての説明がない 程経之心(動作の経過)/二事…

蜂矢真郷(1984.5)動詞の重複とツツ

蜂矢真郷(1984.5)「動詞の重複とツツ」『国語語彙史の研究』5 要点 終止形重複、連用形重複、ツツ、ナガラについて考える まず終止形・連用形の重複について、 終止形重複は、宇治拾遺・平家以降に副詞としてほぼ固定化(e.g. ナクナク)し、 一方で連用形…

来田隆(1993.11)洞門抄物に於けるホドニとニヨッテ

来田隆(1993.11)「洞門抄物に於けるホドニとニヨッテ」山内洋一郎・永尾章曹(編)『継承と展開2近代語の成立と展開』和泉書院 要点 洞門抄物のホドニ・ニヨッテを比較する 接続詞のホドニは区別する 接続詞ホドニは論理性の高い門参(報恩録、大中寺本参…

佐々木峻(1993.11)大蔵流狂言詞章の文末表現法:「……か知らぬ。」「……ぢゃ知らぬ。」等の言い方について

佐々木峻(1993.11)「大蔵流狂言詞章の文末表現法:「……か知らぬ。」「……ぢゃ知らぬ。」等の言い方について」山内洋一郎・永尾章曹(編)『継承と展開2近代語の成立と展開』和泉書院 要点 虎明本・虎寛本の「か知らぬ」系の形式について見る ひとまず、「ぞ…

村島祥子(2003.11)上代の〈名詞―ナガラ〉とカラ

村島祥子(2003.11)「上代の〈名詞―ナガラ〉とカラ」『上代文学』91 要点 上代の名詞ナガラには「として」「ままに」「心任せに」と注されるが、もう一歩踏み込んで、「比喩や形容表現の一種と位置づける」表現として捉えなおしたい 我が大君 神ながら 神さ…

村島祥子(2003.3)続日本紀宣命における〈名詞―ナガラ〉

村島祥子(2003.3)「続日本紀宣命における〈名詞―ナガラ〉」『日本文学誌要(法政大)』67 要点 上代のナガラについて、続紀宣命を用いて考える ナガラは名詞ナガラが先行し、連用形ナガラが後発的であることが知られるが、上代には平安初期の「露ながら」…

堀川智也(1994.11)文の階層構造を考えることの意味

堀川智也(1994.11)「文の階層構造を考えることの意味」『日本語・日本文化研究』4 要点 南のA~Dの分類は混質的で、各類の要素も「本質的な同質性を持ってまとまっているのではない」 従属節の従属度を本質的に考えるため、A類のテとナガラについて考える …

松田真希子(2000.11)ナガラ節の状態修飾性をめぐって

松田真希子(2000.11)「ナガラ節の状態修飾性をめぐって」『日本語・日本文化研究』10 要点 ナガラ節の用法について、 従来「付帯状況」とされてきたナガラ節に付帯と並立が存する 付帯:ボールを走りながら取った 並立:音楽学校に通いながら個人レッスン…

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1) 要点 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える 二人の関係について、 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高…

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7) 要点 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差…

豊島正之(1982.2)初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について

豊島正之(1982.2)「初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について」『国語と国文学』59-2 要点 現代語トモニの2用法 同格の場合にトモニ:AとBはともにデパートに買い物に行った 同格でないときにトトモニ:AはBとともにデパートに買い物に行った…

坂梨隆三(2001.5)ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」

坂梨隆三(2001.5)「ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」」宮下志朗・丹治愛(編)『シリーズ言語態3書物の言語態』東京大学出版会 要点 大文典の否定の記述に「上げないでござる」「申さないでござる」があるが、「なんで」とあるべきものではないか し…