ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

釘貫亨(2014.12)上代語活用助辞と動詞語尾との歴史的関係について

釘貫亨(2014.12)「上代語活用助辞と動詞語尾との歴史的関係について」『国語国文』83-12 要点とこれまでの研究 上代助動詞(論文では活用助辞)成立に関する釘貫説 「す・さす」が自他対応の自動「~る」、と他動「~す」(ex.なる・なす、よる、よす)か…

釘貫亨(2018.3)奈良時代語における話者顧望マクホシをめぐる通時的諸相

釘貫亨(2018.3)「奈良時代語における話者顧望マクホシをめぐる通時的諸相」『国語語彙史の研究」37 これとの関連で同じ論文集から hjl.hatenablog.com 要点 「まくほし」(ムのク語法「マク」+「欲し」)を中心とする上代の願望表現について ムについては…

兪三善(2015.10)アーネスト・サトウ『会話篇』における言いさし表現について

兪三善(2015.10)「アーネスト・サトウ『会話篇』における言いさし表現について」『実践国文学』88 要点 サトウ『会話篇』に見られる言いさしについて ご ていねい に ありがとう ございます.さあ まず, まず, こちら へ どうか.わざと とそ を しとつ…

石田尊・田川拓海(2018.3)他動詞可能文における例外的格パターンの出現:主格保持の原則をめぐって

石田尊・田川拓海(2018.3)「他動詞可能文における例外的格パターンの出現:主格保持の原則をめぐって」『日本語文法』18-1 要点 存在しない(容認度が低い)とされてきた「ニ-ヲ」の他動詞可能文が、特定の環境では現れ得ることを主張するもの 他動詞可能…

高宮幸乃(2005.6)格助詞を伴わないカの間接疑問文について

高宮幸乃(2005.6)「格助詞を伴わないカの間接疑問文について」『三重大学日本語学文学』16 前記事の続き hjl.hatenablog.com 要点 ヤラより後発的なカの間接疑問文のうち、格助詞を伴わないものについて 私は何人がパーティーに出席したのか覚えていない …

高宮幸乃(2004.6)ヤラ(ウ)による間接疑問文の成立:不定詞疑問 を中心に

高宮幸乃(2004.6)「ヤラ(ウ)による間接疑問文の成立:不定詞疑問 を中心に」『三重大学日本語学文学』15 これと関連して hjl.hatenablog.com 要点 次のような間接不定疑問文について、注釈的二文連置による成立を想定する 何人がパーティーに出席するや…

ココスの「焼きしめる」

はじめに 久々にココスに行ってビーフハンバーグステーキを食べようと思ったら、「お召し上がり方」から「焼きしめる」が消えていた 2018/06/22撮影 やきしめるってなに?肉に絞め技かければいいの? pic.twitter.com/TRAGVkRFz2— まりこ (@mazueriatu) 2013…

岡村弘樹(2018.3)上代における動詞ホル(欲)の活用

岡村弘樹(2018.3)「上代における動詞ホル(欲)の活用」『国語語彙史の研究』37 要点 日国・角川古語・時代別などで四段活用とされる動詞「ホル」が、四段であると解釈しづらい。万葉集では「ホル」は「ホリ」のみ、もしくは「ホリス」(未・連体・已然)…

鳴海伸一(2013.11)副詞における程度的意味発生の過程の類型

鳴海伸一(2013.11)「副詞における程度的意味発生の過程の類型」『国立国語研究所論集』6 前記事の「けっこう」より前に書かれた、程度副詞の発生の類型化の論文(のうちの一つ) 要点 共時的観点から、工藤(1983)*1 スラッシュ以降は鳴海(2013)による…

鳴海伸一(2017.11)程度副詞「けっこう」の成立と展開

鳴海伸一(2017.11)程度副詞「けっこう」の成立と展開」『和漢語文研究(京都府立大学)』15 要旨 「けっこう」の主に、程度副詞用法の成立について述べるもの けっこうな物を着たがるは婬欲の心なり(六物図抄・形容動詞) それでもけっかう勤りますのさ(…

藤田保幸(2016.2)引用形式の複合辞への転成について

藤田保幸(2016.2)「引用形式の複合辞への転成について」『国文学論叢』61 要点 「と」+「言う」「思う」「する」に由来する複合辞が種々あることについて、共時的観点から、「引用形式から複合辞がさまざま生まれるのには、それなりの契機というべきいき…

青木博史(2018.4) 可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について

青木博史(2018.4)「可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について」岡﨑友子他編『バリエーションの中の日本語史』くろしお出版 これの続き hjl.hatenablog.com hjl.hatenablog.com 要点 志波(2018)*1の仮説の検証として、可能の「る」の領域に…

深津周太(2018.5)上方・大阪語におけるコ系感動詞の歴史

深津周太(2018.5)「上方・大阪語におけるコ系感動詞の歴史」小林隆編『感性の方言学』ひつじ書房 要点 呼びかけ、とがめの機能を持つコレ、コリャ、コラ類の、近世の史的発達について 上方では、 コレ、コリャに比してコラの成立が遅れる コレに対してコリ…

吉見孝夫(2013.12)『後奈良院御撰何曽』「ははには……」の謎々はハ行頭子音の証拠たり得るか

今週のお題「おとうさん」 ということで、 吉見孝夫(2013.12)「『後奈良院御撰何曽』「ははには……」の謎々はハ行頭子音の証拠たり得るか 」『語学文学(北海道教育大学)』52 要点 ハ行子音の変遷に関してよく問題とされる、以下のなぞなぞについて (問)…

山田昌裕(2018.1)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:ヲ格名詞(対象)に下接する用法を中心として

山田昌裕(2018.1)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:ヲ格名詞(対象)に下接する用法を中心として」『国語と国文学』95-1 研究史(史的研究) 「水が飲みたい」に見られるガヲ交替の問題に関して 松村(1951)*1:室町以降に既に「水が飲みたい」「水を飲み…

三宅俊浩(2018.6)無意志自動詞と「可能」との関係からみた「読むる・読める」の位置づけ

この記事の続き hjl.hatenablog.com 要点 三宅(2016)説、可能動詞の中で成立の早い「読むる」が「特定の動作主を取らない」対象の属性としての可能であったことを、「自動詞と可能の連続性」という観点から観察するもの 無意志自動詞の分類 無意志自動詞を…

三宅俊浩(2016.4)可能動詞の成立 ほか

ほか とは 可能動詞関連の論文が同時期に2本出たので、二氏の論文を中心に 三宅俊浩(2016.4)「可能動詞の成立」『日本語の研究』12-2 三宅俊浩(2018.6)「無意志自動詞と「可能」との関係からみた「読むる・読める」の位置づけ」『国語と国文学』95-6 青…

楊瓊(2017.12)原因理由を表す「によりて」について:漢文訓読の影響をめぐって

楊瓊(2017.12)「原因理由を表す「によりて」について:漢文訓読の影響をめぐって」『表現研究』106*1 要点 原因理由を示すニヨッテが「おかげで」のようなプラスの意で用いられるようになるのは、漢文訓読(特に仏典)のおかげ ニヨッテ成立説諸説 漢文訓…

高山善行(2018.3)上代語の潜伏疑問文をめぐって:「知らず」構文の場合

高山善行(2018.3)「上代語の潜伏疑問文をめぐって:「知らず」構文の場合」『国語語彙史の研究』37 主旨 潜伏疑問文の史的なあり方の解明 潜伏疑問文:太郎は、次郎に、洋子の一番好きな作曲家を教えた(←一番好きな作曲家が誰かを教えた) 述語(西山2013…

柴﨑礼士郎(2017.12)談話構造の拡張と構文化について:近現代日本語の「事実」を中心に

柴﨑礼士郎(2017.12)「談話構造の拡張と構文化について:近現代日本語の「事実」を中心に」加藤重広・滝浦真人編『日本語語用論フォーラム 2』ひつじ書房、pp.107-133 主旨 漢語の文副詞化(論文では名詞の副詞化)に関して、特に「事実」が近代以降に文副…

ルール

何をするのか 言語学(特に日本語文法史)に関する論文を読み、メモとして残す どのような事実認定か その要因などに何を想定するか 特徴的な手法があればメモ 位置付けと関連する研究 感想・気づいたこと 一日一本ペース なぜするのか 視野が狭いので、お勉…