学部の教員に共有する用に手引きを作ったので、適当にマスキングして公開。現物にはリンクやスクリーンショットがぺたぺた貼ってあります。便利だなと思ったら勝手にご自身の環境に書き換えて再配布して頂いて結構です。
弊社(地方の国立大)の環境は以下の通り。
というわけで、Microsoft Teamsでの運用をすることをメインに置き、その導入を一緒に済ませられるよう、Teams内にWikiを開設し、そこに以下の文書を置きました。
目次
はじめに
…(前置き)
以下、遠隔授業の方針作りの参考になればと思い、本文書を作成しました。
遠隔授業には大きく分けて以下の1,2のタイプがあり(詳しくは「参考」)、3のような形態も、対面授業と同等の双方向性がある場合(後述)において、認められるようです。
- 同時双方向型:生配信
- オンデマンド型:前もって録画・録音
- 教科書・印刷教材の配布
また、どの場合においても以下の2点を満たす必要があるとのことです。
- 設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導
- 学生の意見の交換の機会
関わってくる変数としては、
- 講義のタイプ:演習か講義か
- 学生の受講環境:インターネット環境、プリンタの有無
- 参考:オンライン講義の通信量
- 「4月中は50ギガバイトまで追加料金を支払わなくても速度制限なしでインターネットに接続できるようにする」措置が取られることになったようです(4/3)
- 教員の情報機器に関するレベル
がありますので、諸点を勘案して、まずは教員個々人にとって無理のないところから試してみるのがよいかと思います。
特に学生の受講環境については取りこぼしのないよう、事前に知っておく必要がありますが、私の場合はMicrosoft Forms(後述)でアンケートフォームを作成しておき、履修登録後にシステム上で連絡を回そうと考えています。(見本の提示)
以上のことを念頭に置いて、以下、具体的な方法を提示します。より詳細な方法については適宜リンクや、別ページを作成します。
- 同時双方向型:Teams, もしくはZoomを利用する
- 演習向き、回線の負担高、教員の負担中
- オンデマンド型:moodle, もしくはTeamsを利用する
- 講義(座学)向き、回線の負担中~高、教員の負担中
- 教科書・印刷教材の配布:履修システム, moodle, もしくはメールを利用する
- 講義(座学)向き、回線の負担小、教員の負担小
どのような方法を取る場合でも待ち合わせの方法は大事であり、「講義をどのように行うか」と「受講者がどのように受ければよいか」を適切に伝えてあげる必要があります。例えばオンデマンド型の講義を行う場合、以下のような連絡を履修システム上で送信する予定です。
…(前置き)
そのため、本講義は初週からオンラインでの遠隔授業を行うこととします。 まず、受講前の確認としてこちらが把握しておきたいことがいくつかあります。 以下のURLにアクセスし、認証IDでログインした上で、ご自宅のインターネットやPCの環境について、回答をお願いします。
(URL)
講義は概ね以下の手順で行います。皆さんの協力がないと成り立ちませんので、是非、主体的に取り組んで下さい。
- ①講義資料(通常は紙で配るもの)をPDFで配布します。以下のいずれかの方法で準備して下さい。
- ◎家で印刷する
- ◎家にプリンタがない場合、コンビニ等で印刷する
- USBで持っていって印刷する。もしくは、こちらでもネットプリントの番号を準備します
- △PCで閲覧する:自分で作業することが多い講義ですので、なるべく紙で受講して下さい
- ×携帯で閲覧する:なるべく避けて下さい
- ②講義の動画と音声(podcastをイメージして下さい)の配信をmoodle上で行います。受講者の皆さんはご自身の環境に合わせて受講して下さい。例えば、
- 自宅にインターネット環境がある場合、動画を視聴
- 自宅にインターネット環境がなく、テザリング等で十分に帯域を使える場合、動画を視聴
- 自宅にインターネット環境がなく、しかも携帯の通信量(ギガ)も制限がある場合、音声を視聴
- ③講義中の指示に従って、課題・感想等を提出して下さい。
- moodle上の受講終了と、課題の提出をもって講義を受けたものと見なします。
同時双方向型
ビデオ通話などを用いて生で講義を行い、その場で質疑・ディスカッションをする形式の講義です。
オンライン会議のツールとしては以下のようなものがあり、
ノウハウとしてはZoomのものがよく集まっているのですが、弊学の場合、契約しているOffice 365にTeamsというソフトが含まれます。学生も普段の認証IDにログインすれば使えますので、利便性と継続性の観点から、Teamsの利用をおすすめします。今回この機会に初めて使用したのですが、とても便利です。
詳しい使い方は別ページを設けてありますので、以下を参照して下さい。
- (「ゼミ・卒論指導でTeamsを使う」へのリンク)
※Zoomは4/3現在、セキュリティ上の問題や部外者による妨害があることが指摘されています。落ち着くまでは使わない方が無難そうです。
- スペースX、ビデオ会議アプリ「ズーム」を禁止 安全性懸念で - ロイター
- 「Zoom」のWindows版クライアントに脆弱性、認証情報を盗まれるおそれ - ZDNet Japan
- 4/3、東大のオンライン講義に海外からの不適切なアクセスがあり、スライドへの落書きやマイクでの乱入などの妨害を受けたようです(URLを公開すると誰でもイタズラでき、公開していなくても総当りでアタックできる?)。
- 脆弱性は修正されたとのこと(4/4)ですが、結局来月以降は有料になります。利用する際はその点に御注意を。
オンデマンド型
教員側で事前に録画・録音等をしたファイルを用意しておき、学生がそれを視聴する形式の講義です。
※別途記事を書きました(4/22)
考えられる手段としてを大きく分けると以下の通り。
- 講義風景の録画(+講義資料)
- 情報量は対面講義に最も近いが、通信量大
- PC画面の録画+音声(+講義資料)
- PDFを表示しながら喋るなど、資料がメインの講義向け。通信量中
- Windows10であれば、Windowsキー+Rで画面の録画ができます。
- Powerpointのスライド+音声(+講義資料)
- 既にPowerpointの準備がある場合、最も負担が少なく、通信量も抑えられる
- 「音声の乗っかったpptファイル」として配布することもできますし、動画として出力することもできます
- 方法は以下参照
- 既にPowerpointの準備がある場合、最も負担が少なく、通信量も抑えられる
- 音声のみ+講義資料
- ただし、通信量についてはそこまで深刻に考えなくてもよくなったようです。(4/3)
どの場合においても、「1コマ丸ごと録画は見ている側が耐えられない」ということがよく言われています。これまで見聞きした工夫としては、
- 1つのファイルを10分程度に区切る
- ファイルごとにクイズなどの課題を出題
- 学生からの反応を求める機会を増やす
- などなど、「リンク」の個々人の事例も参照のこと
映像や音声の配信には、moodleが使用できます。ドラッグ&ドロップだけでアップロード可能で、映像を埋め込むことができます。
- Teamsでもwikiを使って同様の運用ができますが、動画の埋め込みができないようです
紙媒体の配布については次項、課題対応については「双方向性の担保」も併せて参照して下さい。
教科書・印刷教材の配布
PDF等のファイルを用意し、以下の手順により、履修システム上で配布するのが最も簡潔です。
- (手順)
- (マニュアルへのリンク)
- もっともとっつきやすいのはメール添付ですが、大人数の講義の場合は宛先の入力が億劫です。
なお、講義資料を紙で準備させたい場合、家にプリンタがない学生への対応をすると親切です(「はじめに」の連絡の例も参照)。コンビニのマルチコピー機はUSBメモリやSDカードから印刷できますが、家にネット環境のない学生は「ファイルをダウンロードしてUSBに移す」という行程ができません。こちらがファイルを事前にサービスにアップロードし、学生がコンビニで番号を入力すると印刷できる「ネットワークプリント」というサービスがありますので紹介しておきます。
双方向性の担保
以上のうち、「オンデマンド型」と、特に「教材配布型」は、このままでは以下の2点を満たしません(参考)。
- 設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導
- 学生の意見の交換の機会
「面接授業に相当する教育効果を有する」ための双方向性を担保する方策として、まず、以下のような方法でアンケートや小テストを作ることで対応することを考えます。
- Microsoft Formsで作る
- moodleで作る
- 「活動またはリソースの追加」 > 「アンケート」もしくは「小テスト」
- (moodleマニュアルへのリンク)
- 履修システムで作る
- (マニュアルへのリンク)
- メールでコメントを集める
小レポート等を課す場合もこれに準じます。moodle, 履修システムはそれぞれレポート提出の機能を持ちますし、Formsも「ファイルをアップロードする」タイプの設問が設定可能です。 集計の手間などを考えると、操作が簡単で学生がログインするだけで個人同定が可能なFormsを使うか、学生が混乱しないように、上で使用したmoodleもしくはシステム上で完結させるのがよいでしょう。以上の方法がとっつきにくい場合、最も簡単なのはメールです。*1
以下、Formsの使い方を簡単に記しておきます。見本に使用したフォームはこちらからアクセスできます。
- https://forms.office.com/ にアクセスし、認証IDでサインイン
- 「新しいフォーム」または「新しいクイズ」を選択
- フォームはアンケート用、クイズは点数がつけられます。ここでは「クイズ」の例を示します。
- 設問のタイプを選択し、設問内容を入力
- クイズにする場合、正解の選択肢の右側の「✓正解」を選択
- 選択肢を増やす場合は「オプションを追加」
- ファイルのアップロードを求めることもできます
- 学生が作業した紙を撮影して提出、などということを考えています
- 右上の「共有」ボタンでリンクを取得し、学生に連絡する
- 右上の「・・・」→「設定」ボタンから、締切を設定することも可能です
- また、Teamsで運用する場合は、上の「課題」タブからフォームにリンクを貼って告知することができます
2点目の「学生の意見の交換の機会」については少なくとも、学生からのコメントを集約し、教員がフィードバックすることが必要となるでしょうか(要検討)。moodleは「チャット」機能と「フォーラム」機能(いわゆる掲示板)を有しますので、これを使って学生にお喋りをさせることができます。
リンク集
- オンライン移行を決定した大学のポータル
- オンライン授業・Web会議 ポータルサイト(東大・教員向け) https://utelecon.github.io/
- 東京大学 教養学部・大学院総合文化研究科 講義オンライン化に関する情報サイト(東大・学生向け)https://komabataskforce.wixsite.com/forstudents
- 京大Teaching Online | CONNECT https://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/connect/teachingonline/
- 著作権の問題について
- オンライン授業における著作権について|Teaching Online | CONNECT(京大)https://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/connect/teachingonline/copyright.php
- オンライン授業阻む著作権の壁、旧7帝大など新制度施行要請 | 大学ジャーナルオンライン https://univ-journal.jp/31382/
- 教育の情報化の推進のための著作権法改正の概要(文化庁著作権課・2018/12) https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_14.pdf
- 語学学習について
- 語学学習に特化した オンライン授業相談会(東大) https://utelecon.github.io/events/2020-03-27/talk_language_education.pdf
- Resources in Response to COVID-19 | ACTFL https://www.actfl.org/news/all/resources-response-covid-19
- COVID-19 Readiness: News + Events: Center for Language Excellence: Indiana University https://cle.indiana.edu/news-and-events/covid.html
- 具体的な事例
- みなさんのオンライン授業に向けた取り組み(人文情報学研究所・永崎研宣氏) https://digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2020/03/28/122006
- インターネットのアクセス環境が良くない学生への対応(モンタナ州立大・山口智美氏)https://orange.ap.teacup.com/yamtom/969.html
- オンライン授業をがんばりすぎないように(北星学園大・松浦年男氏)https://note.com/yearman/n/n8d8efbd780d5
- 動画授業による学生達のパケ死を防ぐ(同上)https://note.com/yearman/n/n2dbad7c064a8
- 遠隔授業の方法の検討メモ(角南北斗氏)http://withcomputer.jp/memo-learning-202003.html
- 「授業のオンライン化」とは、オンライン用に「もうひとつ別の授業」をつくることである!? | 立教大学 経営学部 中原淳研究室 http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11444
- 学生への情報共有がわかりやすい大学
考えなければいけないこと
- そもそも連絡を読まない学生をどうするか問題
- オンライン化が困難なタイプの講義をどうするか問題(語学や初年次の大きなグループワークがある講義など)
参考
本ページでは、「大学設置基準第二十五条第二項の規定に基づき、大学が履修させることができる授業等について定める件」(平成十三年文部科学省告示第五十一号→平成十九年文部科学省告示第百十四号)の「一」を同時双方向型、「二」をオンデマンド型と捉えて、
通信衛星、光ファイバ等を用いることにより、多様なメディアを高度に利用して、文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもので、次に掲げるいずれかの要件を満たし、大学において、大学設置基準第二十五条第一項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。
一 同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所(大学設置基準第三十一条第一項の規定により単位を授与する場合においては、企業の会議室等の職場又は住居に近い場所を含む。以下次号において「教室等以外の場所」という。)において履修させるもの 二 毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの
4/1付連絡に基づいて、双方向性の担保された「教科書・印刷教材の配布」を、遠隔授業に含めています。
問6 遠隔授業の実施方法として,教科書や教材による学修を一定時間自宅において行わせたうえで,メールや掲示板等を用いて質疑応答等を行うことは許容されるか。 ○ 法令上,遠隔授業の一部において,教科書や教材による学修を自宅において行わせることが禁止されるものではございませんが,面接授業に相当する教育効果を有するものである必要があることから,授業外の予習・復習に相当するような単に教科書を読ませるといった形態は想定しておらず,授業担当教員による事前のガイダンス等において,当該授業の目的やねらい,教科書を読むに当たっての留意点や,必要な視点・観点などを示すなどにより,授業中に課すものに相当する学修である必要があります。
○ また,大学通信教育設置基準第3条第1項においては,印刷教材その他これに準ずる教材を送付若しくは指定し,主としてこれにより学修させる授業(印刷教材等による授業),大学設置基準第25条第1項の方法による授業(面接授業),及び同条第2項の方法によるメディアを利用して行う授業(遠隔授業)が,別の方法として区別されていることを踏まえると,単に印刷教材等の送付により授業が完結することは想定しておらず,毎回の授業の実施に併せて質疑応答等による指導を行う必要があります。
※大学通信教育設置基準(昭和五十六年文部省令第三十三号)(抄)(授業の方法等)
第三条 授業は,印刷教材その他これに準ずる教材を送付若しくは指定し,主としてこれにより学修させる授業(以下「印刷教材等による授業」という。),主として放送その他これに準ずるものの視聴により学修させる授業(以下「放送授業」という。),大学設置基準第二十五条第一項の方法による授業(以下「面接授業」という。)若しくは同条第二項の方法による授業若しくは同条第二項の方法による授業(以下「メディアを利用して行う授業」という。)のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
なお、「学生等の意見の交換の機会」については、「大学設置基準の一部を改正する省令等の施行等について」(平成13年3月30日通知)に以下のようにあります(大学における多様なメディアを高度に利用した授業について)。
学生の意見の交換の機会については、大学のホームページに掲示板を設け、学生がこれに書き込めるようにしたり、学生が自主的に集まり学習を行えるような学習施設を設けたりすることが考えられること。