ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

田中志瑞子(2007.3)伝三条西実隆筆『毛詩国風篇聞書』について

田中志瑞子(2007.3)「伝三条西実隆筆『毛詩国風篇聞書』について」『訓点語と訓点資料』118.

要点

  • 景徐周麟講、清原宣賢聞書による『毛詩国風篇聞書』(以下、『聞書』)の性格と、写真・翻刻
  • まず、概括的に。
    • 『左伝』の抄物との合冊。
    • 永正7[1510]の講義を宣賢が記録したものの転写本(実隆転写かとされるが、断言はできない)。
    • ナリ体が基調だが、ウズ・ウやサ行イ音便の例もあり、『左伝抄』とは性格が異なる。
  • 『聞書』には宋代の新注を、以下の方法で参照する例がある。
    • 人名・書名を示す:「宋儒ナトノ心得」「伊川カ義也」
    • 具体的な典拠を示さない:「古人語ニ」
    • まったく典拠を示さない
    • 参照されているのは、程伊川、欧陽修、朱熹、王応麟、劉瑾らの説である。
  • 『聞書』は『聴塵』と共通する抄文があることが指摘されている。新注の利用が巻5以降にないことと合わせると、宣賢の手元に『聞書』が巻4までしかなかった*1ことを示すか。
  • 『聞書』に「家説」という語が見られ、これは、景徐の「家」ではなく、景徐が常忠(業忠、宣賢の祖父)から学んだ説を指す。『聞書』は、宣賢が家学の伝統を受け継ぎ、発展させるための努力を示している重要な証拠といえるのではないか。

雑記

  • 聴塵読み放題!

rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp

*1:あほの子みたいな疑問だけど、これ、なんでなんだろう?