梁井久江(2009.6)「役割語」としての〜チマウの成立
梁井久江(2009.6)「「役割語」としての〜チマウの成立」『都大論究』46
問題
- チマウは後発のチャウの使用拡大により現代ではほぼ用いられないが、シナリオではなお用いられる
- 困ろうが何しようが、とにかく、クーはお前を母親と思い込んじまってんだ、いや、おめでとう…(現代シナリオ)
- 歴史的には、明治期東京語では広く使用され、その後、チャウの拡大につれて次第に衰退し、下町専用形式となる
- 下町や関東周辺において地域語として使用されるが、フィクションでは地域が特定されないというギャップをどのように捉えるか?
- いわゆる役割語の観点から分析する
シナリオのチマウ
- 戦前・戦後・現代のシナリオでは、
- テシマウの割合の低下、チャウの上昇が見られ、チマウは一定数(1割程度)使われ続ける
- この点、話し言葉ではチマウは1%程度なので現実の使用状況と乖離する
- テシマウの割合の低下、チャウの上昇が見られ、チマウは一定数(1割程度)使われ続ける
- 戦前シナリオのチマウは、港町の人物(荒々しさ)の他、丁寧な会話にも使われる
- この点、広く使用されていた時代のチマウの姿を写し取ったものか
- 戦後シナリオのチマウは使用者が固定化。「中心部から離れた場所に居住、大胆不敵、大酒を飲むといった行動」*1
- 連母音長音化、ちゃ・にやなどの縮約、俺・お前、卑罵語などとともに用いられる、乱暴な言葉づかいの人物像を示す役割語
- 同一人物が通常はチャウ・シマウ、泥酔時にチマウという描写もある
- 現代においても戦後の特徴が引き継がれる他、現地語への吹き替えにも使用される
まとめ
- チマウの役割語化は、テシマウの文法化の過程で後進のチャウによって駆逐されることによって生じた再利用現象
- フォーマルか否かでテシマウと使い分けられていたチマウは、チャウの出現によってインフォーマルの場面で競合し、現実の話し言葉では競り合いに負けたが、粗暴さ・時代性などの特定の意味合いで役割語として再利用され、その命脈を保った
雑記
- 直感でわかるロジカルシンキングって本読んでる人いて「そういうとこじゃない?」って思った
*1:やだな