ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

梅林博人(2017.4)滑稽本の接続詞「しかし」について

梅林博人(2017.4)「滑稽本の接続詞「しかし」について」『表現研究』105

前提

  • シカシはシカシナガラのナガラが落ちて近世に発生したもので、当初は逆接性がメインではなく、付加用法とでも言うべき用法であった
  • 逆接らしいものは近代以降に現れたとする説がありつつ、
  • 近世の滑稽本でも逆接に見える「がしかし」が少数存在し、「が」と併用されていなくても、逆接的に見えるシカシもある
  • このことをどう考えるか

滑稽本の「しかし」

  • 形式から逆接的に見える~ガシカシが少数あり、
    • 弥次「ハア成程そふおつしやればきこへましたが、しかしそれはおめへさまのほうの得手勝手、(東海道中膝栗毛
  • 文意から逆接的に見える例もある
    • 犬市「モシ川はひざきりもござりますかな 北八「さやう\/。しかし水が早いから、おめへがたアあぶない。用心してわたりなせへ(東海道中膝栗毛
  • これを逆接と考えない理由3点
    • ガシカシは滑稽本においては各作品で孤例であるので、逆接性は具備していなかったと考えたい
    • 近代においてはガ以外の逆接の接続助詞とも併用される(けれどもしかし)ので、多種類の逆接の接続助詞との結びつきがない段階である近世後期のシカシは、やはり逆接性を備えていないものと考える
    • シカシの使用例も会話文に限られており、地の文を持たない滑稽本は「論理的な意味関係を生み出しやすい」という環境ではない
  • これらのシカシは逆接ではなく、話題転換のマーカーとして考えるのがよい

雑記

  • 表現学会のサイト、いつの間にか変わってた