ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

近世

「ぬるま湯」の「ま」考

はじめに 「言語学フェス2023」に参加しました。運営のみなさま、ありがとうございました。 sites.google.com 主催のまつーらさんの「ぬるま湯でありたい」*1、「この、ぬるまの「ま」って何?」という発言を承けて、少し考えてみました。 「ぬる」が形容詞…

川瀬卓(2021.6)副詞「ひょっとすると」類の成立 : 副詞の呼応における仮定と可能性想定の分化

川瀬卓(2021.6)「副詞「ひょっとすると」類の成立 : 副詞の呼応における仮定と可能性想定の分化」『語文研究』130/131. 要点 ヒョットスルト類(スルト/シタラ/シテ)が擬態語に由来することと、類義語であるモシカスルトが同じ構成要素を持つことに注目…

中野伸彦(1996.12)Ⅲ型の確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語

中野伸彦(1996.12)「Ⅲ型の確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語」『山口大学教育学部研究論叢 第一部 人文科学・社会科学』46. 要点 「叙述内容を聞き手に対して獲得させようとするタイプ」(僕の勝手でしょ)のⅢ型の確認要求の平叙文について…

中野伸彦(1996.6)確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語

中野伸彦(1996.6)「確認要求の平叙文と終助詞「ね」:江戸語と現代語」『山口明穂教授還暦記念国語学論集』明治書院. 要点 現代語において、聞き手にも既に共有されている事柄を述べる平叙文ではネが必須になるが、ネがなくても、「まともに叙述内容を獲得…

中野伸彦(1993.2)江戸語の疑問表現に関する一つの問題:終助詞「な」「ね」が下接する場合の自問系の疑問文の形成

中野伸彦(1993.2)「江戸語の疑問表現に関する一つの問題:終助詞「な」「ね」が下接する場合の自問系の疑問文の形成」『近代語研究9』武蔵野書院 要点 現代語における自問系の疑問文には、カ・カシラ・ウ・ケなどがないとナ・ネを用いることができない(例…

金水敏(2012.3)理由の疑問詞疑問文とスコープ表示について

金水敏(2012.3)「理由の疑問詞疑問文とスコープ表示について」『近代語研究』16. 要点 必然的に焦点とみなされる「なぜ」の疑問詞疑問文を用いて、ノダ文の形成史を考える。 以下の、久野・田窪の一般化を踏まえる。 否定辞「ない」と疑問詞「か」のスコー…

樋渡登(2005.6)洞門抄物から見た疑問詞疑問文について

樋渡登(2005.6)「洞門抄物から見た疑問詞疑問文について」『日本近代語研究4』ひつじ書房(『洞門抄物による近世語の研究』おうふう を参照). 要点 外山(1957)、矢島(1997, 2002)を踏まえつつ、洞門抄物の疑問詞疑問文について検討する。 ① 体言性述…

矢島正浩(2002.3)疑問詞疑問文文末ゾの使用よりみた近松世話浄瑠璃

矢島正浩(2002.3)「疑問詞疑問文文末ゾの使用よりみた近松世話浄瑠璃」『日本近代語研究3』ひつじ書房. 要点 近松世話浄瑠璃の疑問詞疑問文におけるゾの使用状況と、近松世話浄瑠璃の資料性についても考える。 外山(1957)と矢島(1997)を踏まえる。 hjl…

矢島正浩(1997.7)疑問詞疑問文における終助詞ゾの脱落:近世前・中期の狂言台本を資料として

矢島正浩(1997.7)「疑問詞疑問文における終助詞ゾの脱落:近世前・中期の狂言台本を資料として」加藤正信編『日本語の歴史地理構造』明治書院. 要点 疑問詞疑問文のゾの脱落について、以下のことに注目しながら考える。 外山(1957)の「虎明本では第一類…

小林賢次(1996.10)大蔵流虎光本狂言集における疑問詞疑問文:終助詞「ゾ」を中心に

小林賢次(1996.10)「大蔵流虎光本狂言集における疑問詞疑問文:終助詞「ゾ」を中心に」『日本語研究領域の視点 下巻』明治書院. 要点 虎光本(1817写)の諸本の異同について、疑問文のゾに注目して比較する。 古典文庫本の底本・山岸清斎文政6書写本と、対…

佐田智明(2002.3)副詞「決して」の成立について

佐田智明(2002.3)「副詞「決して」の成立について」『日本近代語研究3』ひつじ書房. 要点 「決して」は当初(近世文化頃まで)、「さだめて」「必ず」の意を持ち、否定とも呼応するようになる。 化政期以降、例えば八笑人では否定との呼応に偏り、文政期以…

樋渡登(2002.3)副詞「総別」「総じて」と洞門抄物

樋渡登(2002.3)「副詞「総別」「総じて」と洞門抄物」『日本近代語研究3』ひつじ書房.(2007『洞門抄物による近世語の研究』おうふう を参照) 要点 洞門抄物における「総別」「総じて」の差異を、以下の分類に従いつつ考える。 全体用法:全体を概括的に…

外山映次(1957.12)質問表現における文末助詞ゾについて:近世初期京阪語を資料として

外山映次(1957.12)「質問表現における文末助詞ゾについて:近世初期京阪語を資料として」『国語学』31. 要点 16世紀末まで、疑問詞を用いた質問表現の基本的形式は「疑問詞+ゾ」であるが、17世紀中葉に至って、ゾの消滅した形式が多く見られるようになる…

矢島正浩(2013.10)条件表現史における近世中期上方語ナレバの位置づけ

矢島正浩(2013.10)「条件表現史における近世中期上方語ナレバの位置づけ」『近代語研究17』武蔵野書院. 要点 ナレバ(<已然形+バ)において、活用型(雨降れば)に比して非活用形型(雨なれば)の変化(ホドニ・ニヨッテへの移行)が遅かったことについ…

林禔映(2021.12)近世資料の文体差による叙法副詞の使用実態:「サスガ(ニ・ハ)」を例にして

林禔映(2021.12)「近世資料の文体差による叙法副詞の使用実態:「サスガ(ニ・ハ)」を例にして」『日本語教育(韓国日本語教育学会)』98. 要点 近世の副詞研究で手薄である文体的特徴に注目し、サスガニ・サスガハの文体差(ここでいう文体は、文末辞を…

舩木礼子(2000.10)幕末以降の土佐方言における意志表現・推量表現形式の変化

舩木礼子(2000.10)「幕末以降の土佐方言における意志表現・推量表現形式の変化」『地域言語』12. 要点 土佐方言の意志・推量のロウについて、武市瑞山書簡と『土佐の方言』によって確認したい。 幕末において、 意志・勧誘:未然形ウが多く、一段動詞の場…

前田桂子(2017.3)近世長崎文献より見る接続詞バッテンの成立について

前田桂子(2017.3)「近世長崎文献より見る接続詞バッテンの成立について」『国語語彙史の研究36』和泉書院. 要点 バッテンの成立についてはバトテ説が一般的であるが、以下の問題がある。 意味の不連続性と、 バトテが已然形に接続する一方で、バッテンが終…

篠崎久躬(1996.10)江戸時代末期長崎地方の文末助詞「ばい」と「たい」

篠崎久躬(1996.10)「江戸時代末期長崎地方の文末助詞「ばい」と「たい」」『長崎談叢』85. (篠崎久躬(1997.5)「文末助詞:「ばい」と「たい」」『長崎方言の歴史的研究:江戸時代の長崎語』長崎文献社 による) 要点 当期の長崎方言資料には、バイ・タ…

篠崎久躬(1993.3)江戸時代末期長崎地方の推量・尊敬の助動詞

篠崎久躬(1993.3)「江戸時代末期長崎地方の推量・尊敬の助動詞」『紀要(長崎県立長崎南高等学校)』26. (篠崎久躬(1997.5)「助動詞:推量と尊敬」『長崎方言の歴史的研究:江戸時代の長崎語』長崎文献社 による) 要点 当期の長崎方言の助動詞について…

篠崎久躬(1964.3)幕末期佐賀地方に於ける「カ」語尾:『滑稽洒落一寸見た夢物語』を中心にして

篠崎久躬(1964.3)「幕末期佐賀地方に於ける「カ」語尾:『滑稽洒落一寸見た夢物語』を中心にして」『国語学』56. 要点 幕末佐賀方言資料の形容詞のカ語尾について、 形容詞終止形・連体形(イ)の箇所に広く用いられる。 「青ヲかきれの赤アかきれのテ」*1…

篠崎久躬(1962.12)幕末期佐賀地方の助詞:「滑稽洒落一寸見た夢物語」を中心にして

篠崎久躬(1962.12)「幕末期佐賀地方の助詞:「滑稽洒落一寸見た夢物語」を中心にして」『語文研究』15. 要点 『滑稽洒落一寸見た夢物語』、『伊勢道中不案内記』を用いて幕末期佐賀の助詞の記述を行う。 ガ・ノ: 一人称にガ、二人称にノ(軽蔑する場合に…

岩田美穂(2018.1)近世末期佐賀方言資料にみられる条件表現

岩田美穂(2018.1)「近世末期佐賀方言資料にみられる条件表現」『就実表現文化』12.*1 要点 佐賀方言の条件表現の史的調査を行う。 有田(2007)の枠組み(予測的、認識的、半事実的、総称的、事実的)に拠る。 現代佐賀方言のついての記述によれば、 ギが…

山本淳(2003.6)近世庄内方言の文末助辞ケ

山本淳(2003.6)「近世庄内方言の文末助辞ケ」『米沢国語国文』32. 要点 近世庄内郷土本を用いて、文末助辞ケの用法を(渋谷1999と比較しつつ)調査する。 形式的な面から、 状態用言はル形のみ、動作・変化動詞はル・タに接続し、江戸語・東京語より接続先…

渋谷勝己(1999.10)文末詞「ケ」:三つの体系における対照研究

渋谷勝己(1999.10)「文末詞「ケ」:三つの体系における対照研究」『近代語研究10』武蔵野書院. 要点 文末詞ケについて、現代東京方言、山形市方言、江戸語の間で対照を行い、山形市方言の用法が広く、東京方言の用法が限定的であることを示す。 東京方言の…

村上謙(2006.10)近世前期上方における尊敬語表現「テ+指定辞」の成立について

村上謙(2006.10)「近世前期上方における尊敬語表現「テ+指定辞」の成立について」『日本語の研究』2(4). 要点 近世前期上方に成立した、敬意を有するテ+指定辞(e.g. 聞いてじゃ)の成立に、「テゴザルからの変化」説を主張する 以下の従来説は、いずれ…

長崎靖子(2004.11)江戸語から東京語に至る断定辞としての終助詞「よ」の変遷

長崎靖子(2004.11)「江戸語から東京語に至る断定辞としての終助詞「よ」の変遷」『近代語研究12』武蔵野書院. 要点 前稿(2004.3)で示した江戸語の断定を表すヨの通時的変遷を、サとの比較も含めて考える 江戸語の断定のヨは女性の使用に(結果的に)制約…

長崎靖子(2004.3)『浮世風呂』『浮世床』に見る断定辞としての終助詞「よ」の位相:断定辞としての終助詞「さ」との比較から

長崎靖子(2004.3)「『浮世風呂』『浮世床』に見る断定辞としての終助詞「よ」の位相:断定辞としての終助詞「さ」との比較から」『会誌(日本女子大学)』23. 要点 江戸語で断定を表すヨの位相を、サ(長崎1998)との比較から考える ヨは、 男女ともぞんざ…

長崎靖子(1998.3)江戸語の終助詞「さ」の機能に関する一考察

長崎靖子(1998.3)「江戸語の終助詞「さ」の機能に関する一考察」『国語学』192. 要点 現代語では終助詞サは仲間内のぞんざいな会話に使用されるものとされるが、 江戸・東京語では、幕末までは丁寧な会話にも使用される (福助→金)さやうさ 是ぢやア豊年…

岩間智昭(2022.2)近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に

岩間智昭(2022.2)「近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に」『国文学論叢』67. 要点 以下の3点の分析より、『浄土勧化文選』(宝暦11[1761]刊)が、「「非中立的」な表現を内包する」資料であり、文語性の高い資…

矢島正浩(1989.1)近松世話物における断定ナリ終止形残存の意義

矢島正浩(1989.1)「近松世話物における断定ナリ終止形残存の意義」『文芸研究 文芸・言語・思想』120. 要点 旧形式ナリを以下のように分類すると、 A 文を完結させ得ない(いわゆる並列) B 文を完結させ得る イ 話手の判断の加わる余地無し ロ 話手の判断…