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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

宮内佐夜香(2016.12)逆接確定条件表現形式の推移についての一考察:中世後期から近世にかけて

宮内佐夜香(2016.12)「逆接確定条件表現形式の推移についての一考察:中世後期から近世にかけて」青木博史・小柳智ー・高山善行(編)『日本語文法史研究3』ひつじ書房

要点

  • ドモ・ドからガ、ケレドモ・ケレドへの移行について考える
    • ドモ→ケレドモの過程が重要視され、ガの動向についてはあまり注意されてこなかった節がある
  • 噺本、歌舞伎狂言本の調査から分かること、
    • 使用率からは、
      • 第1段階「ガ」の増加、「ドモ」との均衡(中世後期・近世前期)
      • 第2段階「ケレド」類の発達、「ドモ」の衰退(近世中後期)
      • と、主形式の変遷は時間を空けて段階的に進行した
    • 上接動詞にも偏りはなく(固定化の傾向はない)、やはり、近世前期のドモは衰退傾向にない
  • ここで、ガの歴史について考える
    • 逆接でないガ(提示)が先行し、逆接のガは後発的であるが、
    • 提示のガは近世を通じて30-50%と、安定して出現する
  • ドモと比較するに、ガはドモと等価ではない
    • 対比的な逆接を表す
    • 後件を表す節が直接接続しない(しなくてもよい)
    • 主節の文末表現に制限がない(疑問、推量など)
  • 全体的な話として、条件表現史の中で逆接確定条件の流れは特異である
    • ガの増加は、ガそのものが発達したことによるもの(cf.格助詞→接続助詞、コト・モノ系)で、ドモと直接関わるわけではない
    • 従来形式の衰退が遅いという点で特異か

雑記

  • そういえば2年おきだからぼちぼち5が出るかな?2年早くないか?