ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山本淳(1996.9)『古今集遠鏡』訳文における主格助詞の取り扱いについて

山本淳(1996.9)「『古今集遠鏡』訳文における主格助詞の取り扱いについて」『国学院雑誌』97(9)

要点

  • 遠鏡におけるガ・ノ・φの扱いについて考える
  • 訳出の傾向として
    • 無助詞で訳出される例は極めて少なく、
    • 主格の場合はガで訳すことが多く、
    • 連体修飾節(準体句構成を含む)の場合はノがガを上回る
  • 古今集本文とつきあわせると、
    • 古今集のガは基本的にガで訳される
    • 古今集の主格のノは、積極的にはガで訳さない
    • 古今集の無助詞は、全体的にガで訳されることが多い
  • 鄙言の訳と、浮世風呂と比較すると、
    • 鄙言は連体のガ・ノが拮抗するが、遠鏡はノの方が多い
      • 「古典的な昧わいを訳文に活かす『遠鏡』の訳出の手法」が想起される(cf. 準体助詞ノの少なさ)
    • ただし、浮世風呂でもノ>ガであるので、むしろ当時の口頭語を反映するものと考えられる
    • 浮世風呂には無助詞の例が多く、遠鏡は主格表示を明確にしようとする意図を持つと考えられる

雑記

  • 弊学、オンライン化の兆し、まるでなし