ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

小島和(2012.1)キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に

小島和(2012.1)「キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に」『上智大学国文学論集』45 要点 ヨリについての説明のズレについて考える 大文典(やアルバレス)はヨリに主格と奪格を認めるが、 日葡は奪格、比較…

野村剛史(1996.5)ガ・終止形へ

野村剛史(1996.5)「ガ・終止形へ」『国語国文』65(5) 要点 「ガー終止形」の発達について考える 上代から中古に見られるノ・ガの下接語・構文の変化は以下の通り 係り結びが、連体形句と呼応する「〈ーカ・ヤ・ソ〉〈ーノ・ガー連体形〉」の語順を守らなく…

野村剛史(1993.12)古代から中世の「の」と「が」

野村剛史(1993.12)「古代から中世の「の」と「が」」『日本語学』12(10) 要点 上代のノ・ガの文法的性格まとめ(野村1993)、 ノは以下の5つの用法、ガは①④のみを持ち(野村1993)、 ①主格 ②比喩 ③同格 ④所有格 ⑤その他 主格ノ・ガは従属句の中に、「~は…

野村剛史(1993.3)上代語のノとガについて(下)

野村剛史(1993.3)「上代語のノとガについて(下)」『国語国文』62(3) 要点 ノとガの共通性を「原始的修飾」に求めた上で、ノの機能について考える ノの機能は、体言が属性的であるか実体的であるかという観点から、以下の4つにまとめられる 所有:(属性…

野村剛史(1993.2)上代語のノとガについて(上)

野村剛史(1993.2)「上代語のノとガについて(上)」『国語国文』62(2) 要点 標記の問題、まず上接語の差異について、ノの分布がより一般的であるのに対し、ガの分布は「一人称、二人称の指示代名詞を中心に、三人称指示詞、固有名詞に広がっている」 ワ・…

山本淳(1996.12)「古今集」俗言解に見える主格表示:『遠鏡』『鄙言』間の訳出の差異から

山本淳(1996.12)「「古今集」俗言解に見える主格表示:『遠鏡』『鄙言』間の訳出の差異から」『米沢国語国文』25 要点 山本(1996)の続き 遠鏡と鄙言の格表示を比べると、特に連体修飾のノの訳出に差異がある 遠鏡はノ>ガ 鄙言はガ・ノが拮抗 同時代の他…

山本淳(1996.9)『古今集遠鏡』訳文における主格助詞の取り扱いについて

山本淳(1996.9)「『古今集遠鏡』訳文における主格助詞の取り扱いについて」『国学院雑誌』97(9) 要点 遠鏡におけるガ・ノ・φの扱いについて考える 訳出の傾向として 無助詞で訳出される例は極めて少なく、 主格の場合はガで訳すことが多く、 連体修飾節(…

近藤泰弘(1998.2)平安時代の「をば」の構文的特徴について:『源氏物語』の用例を中心に

近藤泰弘(1998.2)「平安時代の「をば」の構文的特徴について:『源氏物語』の用例を中心に」『東京大学国語研究室創設百周年祈念国語研究論集』汲古書院 要点 中古のヲバ(<ヲ+ハ)について考える ヲバとヲの共通性 ヲバとハの共通性 ヲバ特有の機能 1点…

鈴木英夫(1985.5)「ヲ+自動詞」の消長について

鈴木英夫(1985.5)「「ヲ+自動詞」の消長について」『国語と国文学』62(5) 前提 「腹を立つ」の疑問から出発して、 ヲ+自動詞の消長について考える ヲ+自動詞 Ⅰ「太郎が川を渡る」類には消長はない 自動詞の移動動詞がヲ格を取る場合、自動詞主語が他動…

後藤睦(2019.6)『宇治拾遺物語』のノ・ガ尊卑の実態について:「ノ・ガ尊卑説」再考のための端緒として

後藤睦(2019.6)「『宇治拾遺物語』のノ・ガ尊卑の実態について:「ノ・ガ尊卑説」再考のための端緒として」『語文』112 要点 中世前期のガノに尊卑による使い分けはないが、 一部そう見えるために、過剰般化された規範も存した 前提 規範としてのガノ尊卑…

米田正人ほか(2019.9)鶴岡市方言における共通語の格助詞「に」にあたる用法:格助詞「サ」の用法を中心として(鶴岡の発展的調査から)

米田正人・佐藤亮ー・水野義道・佐藤和之・阿部貴人・津田智史(2019.9)「鶴岡市方言における共通語の格助詞「に」にあたる用法:格助詞「サ」の用法を中心として(鶴岡の発展的調査から)」『方言の研究 5』ひつじ書房 要点 鶴岡のニの用法差・年層差に、…

後藤睦(2017.12)上代から中世末期におけるガ・ノの上接語の通時的変化

後藤睦(2017.12)「上代から中世末期におけるガ・ノの上接語の通時的変化」『待兼山論叢. 文学篇』51 前提 古代語ではガ・ノは主格標示・連体修飾の両方に使われるが、 ガは固有名詞・代名詞・代名詞の代用形式(妹が名)に、ノはそれ以外にという分布があ…

菊田千春(2004.6)上代日本語におけるノ・ガ格と名詞性:規則性と例外の共存をめざして

菊田千春(2004.6)「上代日本語におけるノ・ガ格と名詞性:規則性と例外の共存をめざして」石黒明博・山内信幸編『言語研究の接点:理論と記述』英宝社 前提 LFG(Lexical Functional Grammar)を用いて上代の主格表示を分析する 上代のノ・ガの分布は野村…

小川志乃(2003.3)テヨリとテカラの意味的相違に関する史的研究

小川志乃(2003.3)「テヨリとテカラの意味的相違に関する史的研究」『国語国文学研究(熊本大学)』38 要点 天草平家と原拠本平家において、ヨリ→カラの交替は顕著だが、テヨリはテカラと対応しない テヨリとテカラには意味差があり、それが交替を許容しな…

竹内史郎(2008.3)助詞シの格助詞性について:非動作格性と品詞分類

竹内史郎(2008.3)「助詞シの格助詞性について:非動作格性と品詞分類」『語学と文学(群馬大学)』44 竹内(2008)の続き、助詞シの振る舞いについて、同じように活格性の下で理解できることを主張する 上代のシと中古のシ 特に体言シ、シ+係助詞の、名詞…

松本昂大(2016.10)古代語の移動動詞と「起点」「経路」:今昔物語集の「より」「を」

松本昂大(2016.10)「古代語の移動動詞と「起点」「経路」:今昔物語集の「より」「を」」『日本語の研究』12(4) 要点 移動動詞の意味的特徴によって、起点を表す格助詞の用法が決定される 前提 ヨリ・ヲは概ね、起点・経路を表すとされている が、万葉集に…

木部暢子(2019.2)対格標示形式の地域差:無助詞形をめぐって

木部暢子(2019.2)「対格標示形式の地域差:無助詞形をめぐって」『東京外国語大学国際日本学研究報告』5 要点 対格標示形式の地域差、各地の出現要因について、方言コーパスを用いつつ示す 前提 主格・対格標示の地域間の差異 弘前:主格・対格ともに無助…

彦坂佳宣(2006.10)準体助詞の全国分布とその成立経緯

彦坂佳宣(2006.10)「準体助詞の全国分布とその成立経緯」『日本語の研究』2-4 要点 方言における準体助詞について、 分布と問題 準体助詞に関連する用法を以下のように分類(狭義の準体助詞はc, d) a 連体格 b 連体格的準体助詞:今のあるじも前のも c 代…

田村隆(2007.12)いとやむごとなききはにはあらぬが:教科書の源氏物語

田村隆(2007.12)「いとやむごとなききはにはあらぬが:教科書の源氏物語」『語文研究』104 要点 桐壺冒頭部が、ほぼ逆接として読まれてきたことを示す 問題 「いとやむごとなききはにはあらぬが」の「が」についての教科書的説明として、同格の格助詞であ…

山田昌裕(2000.6)主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較

山田昌裕(2000.6)「主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較」『国語学』51-1 要点 原拠本平家と天草版平家に対照によるガの勢力拡大について、主に以下の3点を示す 対象を明示化する指向があること 疑問文におい…

竹内史郎(2008.4)古代日本語の格助詞ヲの標示域とその変化

竹内史郎(2008.4)「古代日本語の格助詞ヲの標示域とその変化」『国語と国文学』85-4 問題 現代語の格助詞ヲは他動詞文の目的語標示で、自動詞などの述語の唯一項を標示しない。すなわちヲは、 少なくとも2つの補語が含まれる構文に現れる 複数の補語のうち…

白井純(2001.9)助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として

白井純(2001.9)「助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として」『国語学』52-3 要点 ヨリ・カラの主格標示用法について、 キリシタン宗教文献類に多く用いられることを指摘し、 その要因として、上位待遇表現にル・ラルを用いず給…

山田昌裕(2014.2)「デサエ」二種の由来

山田昌裕(2014.2)「「デサエ」二種の由来」『恵泉女学園大学紀要』26 要点 山田(2012)の続き hjl.hatenablog.com 問題 デサエには、連接「デ+サエ」と、融合化「デサエ」がある(山田2012) 連接デサエ:有名観光地{でさえ/で}、多言語での看板やパ…

間淵洋子(2000.6)格助詞「で」の意味拡張に関する一考察

間淵洋子(2000.6)「格助詞「で」の意味拡張に関する一考察」『国語学』51-1 要点 格助詞「で」の意味拡張について、 特に動作主格(自分でやる)、原因格(風邪で休む)が発達したことを示し、 付加的な格を示す「で」が、中心的用法要素へと参入したこと…

山田昌裕(2012.10)「デサエ」の融合化とその背景

山田昌裕(2012.10)「「デサエ」の融合化とその背景」『表現研究』96 要点 デ相当でないデサエについて、その発生の背景を考える 融合化したデサエ 融合化したデサエの問題を扱う ひっきりなしに通る電車の音{でさえ/*で/が}、ここでは商店街の活気をさ…

坂梨隆三(2015.2)春色梅児誉美の「腹を立つについて」

坂梨隆三(2015.2)「春色梅児誉美の「腹を立つについて」」『近代語研究』18 概観 近世後期に「腹を立つ」という言い方がある おまはんは腹をたゝしつたのかへ 腹が立つ/腹を立てる とありたいところ、以下の見方がある 自他両用の「立つ」を想定し、この…

榎木久薫(1996.9)平安初期訓点資料における使役の格表示:ヲシテの使用に着目して

榎木久薫(1996.9)「平安初期訓点資料における使役の格表示:ヲシテの使用に着目して」『訓点語と訓点資料』98 要点 平安初期訓点資料における使役の格標示は「~ヲ~シム」「~ニ~シム」「~ヲシテ~シム」の性格について これらは中期に「~ヲシテ~シム…

竹内史郎(2007.7)節の構造変化による接続助詞の形成

竹内史郎(2007.7)「節の構造変化による接続助詞の形成」青木博史編『日本語の構造変化と文法化』ひつじ書房 要点 ガ(格助詞→接続助詞)に代表される、節の構造変化による接続助詞の形成について、 他の事例の指摘 契機や要因の考察 ガ・ヲ ガ Xノ連体ガ:…

佐々木隆(2012.3)二つの目的語をもつ上代語の構文:助詞「を」の機能

佐々木隆(2012.3)「二つの目的語をもつ上代語の構文:助詞「を」の機能」『人文』10 要点 上代の「二重ヲ格」(に見える)構文についての分析 上代の場合、2つの目的語のうち1つめだけがヲを伴う「二重目的語構文」と呼ぶべきもの 上代の二重目的語構文 上…

佐伯暁子(2009.4)平安時代から江戸時代における二重ヲ格について

佐伯暁子(2009.4)「平安時代から江戸時代における二重ヲ格について」『国語と国文学』86-4 hjl.hatenablog.com と関連して 要点 近世以前では、現代で容認されない二重ヲ格が容認されることがある そのあり方の整理 現代語における二重ヲ格 ヲの組み合わせ…