ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

大鹿薫久(1997.2)助動詞「らし」について

大鹿薫久(1997.2)「助動詞「らし」について」『語文』67

  • ラシの以下の特徴について考える
    • 1 疑問文で用いられない
    • 2 ラシの根拠の事態を明示することが多い
    • 3 仮定条件句の帰結にならない
    • これをもとに、時代別は「確信的に推量する」とするが、確信的ならわざわざ根拠を示さないのではないか
  • ラシを以下の2種3類に分けて考える
    • 1 ば、~らし:見れば、~らし/思へば、~らし に限定
      • これは、「見れば」「思へば」と思考することを根拠として、帰結を「~らし」とする
    • 2-1 ~らし~{見ゆ/聞こゆ/なり}
      • その対象を根拠として、「~らし」とする
    • 2-2 「見ゆ」などによって根拠が明示されないもの
  • 「~らし」と把握された事態Aと、その根拠Bの関係性は、「AであるからB」のみであり、その逆はない
    • 「わご大君国知らす」であるから「野島の海人仕へ奉るが尊き」
    • この点、ム・ラム・ケムの「推量」における推論の方向とは全く逆
  • 「結果・帰結としての眼前の事態から原因・理由の方向へのことがらの把握」という性格を持つものと考えられる
    • 事態の原因・理由を推定するのであれば疑問文で使われてもよいはずだが、その例はない。これは、(推量というよりも)「私にはそのように見える・思える」と述べるのが「らし」の機能であるためであろう
    • 根拠を明示することが多いのは、「眼前の事態を共有しない聞き手にいきなり原因や理由に当たることを述べても理解しにくい」から
    • 仮定条件句を受けないのも、仮定条件が「原因理由→結果」という、「~らし」と逆の推論を行うものであるから

雑記

  • さよなら4月