ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

上代

新里博樹(1983.1)終止形を有する形容詞群の考察

新里博樹(1983.1)「終止形を有する形容詞群の考察」『国語研究』46. 要点 上代の形容詞における標記の問題について、以下の2点を考える Ⅰ 終止形を有する形容詞にはどのような語があるか Ⅱ それらの形容詞はどのような特徴を有しているか 万葉集の形容詞…

菊池そのみ(2019.1)古代語の「ての」について

菊池そのみ(2019.1)「古代語の「ての」について」『筑波日本語研究』23. 要点 標記形式(飲みての後は・万821)について、以下2点を考えたい 1 古代語における、テノによる連体修飾と、連体形連体修飾との間の差異 2 古代語のテノと現代語のテノの差異 調…

仁科明(1998.12)見えないことの顕現と承認:「らし」の叙法的性格

仁科明(1998.12)「見えないことの顕現と承認:「らし」の叙法的性格」『国語学』195. 要点 ラシの性格と、妥当な理解について考える まず、ラシを「根拠ある推量、確かな推量」という従来的理解、ひいては「推量」とする理解そのものに限界がある (この…

金水敏(2015.3)古代日本語の主格・対格の語順について

金水敏(2015.3)「古代日本語の主格・対格の語順について」江原浩樹ほか(編)『より良き代案を絶えず求めて』開拓社. 要点 古代語において、Nノ・ガとNヲが一文に共起する場合に、ヲ>ガ(ヲがガに先行する)と考えたことがあるが(言語学会夏期講座2002…

岡村弘樹(2021.3)形容詞型の活用とミ語法

岡村弘樹(2021.3)「形容詞型の活用とミ語法」『国語国文』90(3). 要点 ミ語法を形容詞型活用の枠組みで考え、その位置づけを検討する 上代の形容詞型活用は、中古以降と以下の点で異なり、「動詞的なものと形容詞的なものという性格の異なる形態が混在し…

蜂矢真郷(2021.3)上代を中心とするバ行動詞とマ行動詞

蜂矢真郷(2021.3)「上代を中心とするバ行動詞とマ行動詞」『萬葉』231. 要点 上代を中心とするバ・マ行動詞の関係について、語構成の面から考える 阪倉はムとブを「同一の接尾語の子音交替」とし、 山口は「音変化より形態変化でないか」として、別途考え…

勝又隆(2005.10)上代「−ソ−連体形」文における話し手の認識と形容詞述語文

勝又隆(2005.10)「上代「−ソ−連体形」文における話し手の認識と形容詞述語文」『日本語の研究』1(4) 要点 上代におけるソの係り結び(論文では「ーソ―連体形」)が、推量系の助辞を結びに取りにくいことが何の反映であるのかを考える 機能の点から 上代の…

柳田征司(1989.6)助動詞「ユ」「ラユ」と「ル」「ラル」の関係

柳田征司(1989.6)「助動詞「ユ」「ラユ」と「ル」「ラル」の関係」『奥村三雄教授退官記念国語学論叢』桜楓社 要点 ヤ行音・ラ行音の交渉(流黄/由王)の問題と、ユ・ラユ、ル・ラルは別問題であることを示す ユ・ラユ、ル・ラルを同源とする説には問題が…

江原由美子(2002.11)トモによる逆接条件表現

江原由美子(2002.11)「トモによる逆接条件表現」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』14 要点 逆接仮定条件のトモが事実を述べる場合に用いられることがある(大わだ淀むとも) このいわゆる「修辞的仮定」が何なのかを考えるために、トモの現象面を明ら…

衣畑智秀(2004.12)古代語・現代語の「逆接」:古代語のトモ・ドモによる意味対立を中心に

衣畑智秀(2004.12)「古代語・現代語の「逆接」:古代語のトモ・ドモによる意味対立を中心に」『語文』83 要点 古代語で、トモは仮定条件、ドモは恒常条件と確定条件を表し、現代語で、テモは仮定条件・恒常条件、ケドは確定条件を表す。このことについて考…

蜂矢真郷(1984.5)動詞の重複とツツ

蜂矢真郷(1984.5)「動詞の重複とツツ」『国語語彙史の研究』5 要点 終止形重複、連用形重複、ツツ、ナガラについて考える まず終止形・連用形の重複について、 終止形重複は、宇治拾遺・平家以降に副詞としてほぼ固定化(e.g. ナクナク)し、 一方で連用形…

村島祥子(2003.11)上代の〈名詞―ナガラ〉とカラ

村島祥子(2003.11)「上代の〈名詞―ナガラ〉とカラ」『上代文学』91 要点 上代の名詞ナガラには「として」「ままに」「心任せに」と注されるが、もう一歩踏み込んで、「比喩や形容表現の一種と位置づける」表現として捉えなおしたい 我が大君 神ながら 神さ…

鴻野知暁(2018.12)上代日本語の複合動詞の項構造について:二つの内項を取る場合を中心に

鴻野知暁(2018.12)「上代日本語の複合動詞の項構造について:二つの内項を取る場合を中心に」『言語・情報・テクスト』25 要点 ONCOJを使い、複合動詞の取る項について考える 上代の複合動詞の項構造は以下の4つに分類される 3は影山の「主要部からの受け…

竹内史郎(2005.3)上代語における助詞卜による構文の諸相

竹内史郎(2005.3)「上代語における助詞卜による構文の諸相」『国語語彙史の研究』24 要点 「2つの事態がトで結ばれた文」(月を出でむかと待ちつつ居るに・1071)について、従来の研究が同列に扱ってきた、引用構文と並列文の2種の区別の必要性を論じる 里…

新沢典子(2003.3)古代和歌における呼びかけ表現の変化:希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって

新沢典子(2003.3)「古代和歌における呼びかけ表現の変化:希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって」田島毓堂・丹羽一彌(編)『日本語論究7』和泉書院 要点 標記の問題について考える 「歌謡段階で生きていた対詠的表現が歌の場の変化を反映して形式化…

新沢典子(1999.3)万葉集における希望の終助詞「な・ね・なむ」について

新沢典子(1999.3)「万葉集における希望の終助詞「な・ね・なむ」について」『美夫君志』58 要点 ナ・ネ・ナムについての問題、 ナ・ネは実現可能性の髙い希求、ナムは低い希求を表すとされるが、反例は多く、ナ・ネが中古まで残らないことの説明もできない…

新沢典子(2001.12)集団の声としての「いまは漕ぎ出でな」:願望の終助詞「な」に映る古代和歌史

新沢典子(2001.12)「集団の声としての「いまは漕ぎ出でな」:願望の終助詞「な」に映る古代和歌史」『名古屋大学国語国文学』89 要点 願望のナは主語が単数のときに願望を、複数のときに勧誘を表すとされるが、その定義に当てはまらない例がある。このこと…

野村剛史(1993.3)上代語のノとガについて(下)

野村剛史(1993.3)「上代語のノとガについて(下)」『国語国文』62(3) 要点 ノとガの共通性を「原始的修飾」に求めた上で、ノの機能について考える ノの機能は、体言が属性的であるか実体的であるかという観点から、以下の4つにまとめられる 所有:(属性…

野村剛史(1993.2)上代語のノとガについて(上)

野村剛史(1993.2)「上代語のノとガについて(上)」『国語国文』62(2) 要点 標記の問題、まず上接語の差異について、ノの分布がより一般的であるのに対し、ガの分布は「一人称、二人称の指示代名詞を中心に、三人称指示詞、固有名詞に広がっている」 ワ・…

近藤要司(2019.3)『万葉集』のハモについて

近藤要司(2019.3)「上代の感動喚体句について(2)『万葉集』のハモについて」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1999「係助詞の複合について(3)『万葉集』のハモについて」『金蘭国文』3) 要点 助詞ハは文末用法がないが、ハモは文末用法…

近藤要司(2019.3)『万葉集』の無助詞喚体句について

近藤要司(2019.3)「上代の感動喚体句について(1)『万葉集』の無助詞喚体句について」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(2000『親和国文』35) 要点 終助詞を伴わない無助詞の感動喚体句について考える ~思ほゆる君(915) 連体修飾部を伴…

近藤要司(2019.3)古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して

近藤要司(2019.3)「古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1998「古代語における感動喚体句表現の諸相について」『大阪市私立短期大学協会研究報告週』35) 要点 山田は感動喚…

小出祥子(2020.3)奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文

小出祥子(2020.3)「奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文」『名古屋短期大学研究紀要』58 要点 ム系助辞と終助詞カ・カモの接続関係について考える ラム・ケムの出現環境をまとめると次の通りで、 p.5 ラムカはあるのにケムカは少なく、ケムカモは…

衣畑智秀(2005.3)副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における

衣畑智秀(2005.3)「副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における」『日本語文法』5(1) 要点 極限の副助詞には最低限(≒だけでも)を示すものがないが、ダニはその両方を持ち、上代では最低限に限られていたことが知られる この歴史変化について…

大鹿薫久(1997.2)助動詞「らし」について

大鹿薫久(1997.2)「助動詞「らし」について」『語文』67 ラシの以下の特徴について考える 1 疑問文で用いられない 2 ラシの根拠の事態を明示することが多い 3 仮定条件句の帰結にならない これをもとに、時代別は「確信的に推量する」とするが、確信的なら…

須田淳一(2005.11)ミ語法の時と主体

須田淳一(2005.11)「ミ語法の時と主体」『国語と国文学』82(11) 要点 ミ語法のミは、意味的には属性と活動、機能的には修飾と述定に跨る(須田1997) これを踏まえて、統語論的振る舞いを考えたい (i) ミは形態的テンスを欠き、キ・ケリやムとも共起しない…

須田淳一(1997.7)「単語」をどう扱うのか:「を+ミ語形」構文の場合

須田淳一(1997.7)「「単語」をどう扱うのか:「を+ミ語形」構文の場合」『国文学解釈と鑑賞』62(7) 要点 ミ語法のミの位置付けについて、「品詞相互が緩やかに連続している」という考え方に基づいて考える 意味的・形態的・構文的に、動詞性・形容詞性を…

軽部利恵(2018.3)上代仮名遣いの「違例」について

軽部利恵(2018.3)「上代仮名遣いの「違例」について」『叙説』45 要点 上代特殊仮名遣の違例について考える 木簡にはツ婆木(椿)や波支(萩)などがあり、 「木簡は万葉集より書き分けがルーズ」とされてきたが、それは違例それ自体の意味づけにはならず…

山口堯二(1980.3)「て」「つつ」「ながら」考

山口堯二(1980.3)「「て」「つつ」「ながら」考」『国語国文』49(3) 前提 古代語のテ・ツツ・ナガラを、その前句・後句の関係性から考える テ テの基本的な意味は並列性 「二つ(以上)の事態がただ空間的または時間的に並列されているという関係」で、継…

堀川智也(1998.3)希望喚体の文法

堀川智也(1998.3)「希望喚体の文法」『大阪外国語大学論集』18 要点 山田が挙げる希望喚体の例には、「N+終助詞」という条件を厳密には満たさないものがある 別れの無くもがな/長くもがな/鳥にもがも これが、希望喚体のプロトタイプからのどのような拡…