ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

衣畑智秀(2005.4)日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に

衣畑智秀(2005.4)「日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に」『日本語科学』17

要点

  • ノニ・ケド・テモを適切に記述するための枠組みを考えたい
    • 従来説はノニの「予想」とケド・テモの「予想」の差異を説明し得ない
  • 以下の概念を導入する
    • 「知識」(個々人の中の情報)と「文脈」(知識よりもより一般的な情報)
    • 処理単位(processing unit):新しい情報と既存の情報との関連性どの単位で処理するか、ここでは、「文全体が処理単位となって,文脈仮定を強化したり否定したりしている」と考える
  • ノニは知識を否定し、ケド・テモは文脈を否定する
    • 「雪が降っているのに父は出かけた」は、「雪が降っている→出かけない](ので、父も出かけない)という推論による個人的な知識を否定する
    • ノニ文の後件に意志・命令・推量が来ないのは、自分の知識で自分の知識を否定するのはあり得ないから
  • ケドとテモは情報の処理単位により形式が分化している
    • ケドは前件と後件が独立した情報であり、
      • ケドは前件だけで文脈含意の導出を行うことができる:太郎は経済学者ではないけど、ビジネスマンだ。
    • テモは前件と後件が一つの情報である
      • テモの前件には文脈仮定の機能がない:*太郎は経済学者ではなくても、ビジネスマンだ。
    • なお、古代語のトモ・ドモの対立は「仮定などの意味による対立」であり(衣畑2004)、ケド・テモは処理単位による分化である

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    p.59

雑記

  • これすごく大事だな

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