モダリティ
菅のの香(2023.3)「和漢混淆文における複合辞「ニオイテハ」の構文」『上智大学国文学論集』56. 要点 和漢混淆文に見られるニオイテハを複合辞として認定し、以下の2点を主に検討したい。 ムが多く前接し、仮定条件を表すとされること。 限定・強調の意を…
三村一貴(2020.10)「上古漢語のモダリティーマーカー「蓋」について:その本質的機能」『中国語学』267. 要点 上古漢語の「蓋」の機能について考える。 太史公曰、「余登箕山、其上蓋有許由冢云。」(『史記』伯夷列伝2581) 「太史公曰く、わたしは箕山に…
田中志瑞子(2008.3)「『毛詩聴塵』の成立:『聞書』の利用を通じて」『訓点語と訓点資料』120. 要点 『毛詩国風篇聞書』(以下『聞書』)と『毛詩聴塵』との間には極めて類似する箇所があり、宣賢は『聴塵』の参考資料として『聞書』の記述も取り込んだも…
李知殷(2012.8)「副詞「多分」の史的変遷をめぐって」『立教大学大学院日本文学論叢』12. 要点 「多分」が「大多数」の意から、副詞へと変化する過程について。 中世の「多分」は、「ある集団、物事のなかの多い部分」を表す例が多く、一部、動詞に係る形…
吉本裕史(2020.11)「副詞「きっと」の語史:推量の用法の成立についての考察」『名古屋大学国語国文学』113. https://doi.org/10.18999/nagujj.113.168 要点 情態副詞のキット(きっと目元を引き締めた)が推量の用法(陳述副詞、きっと好転する)を獲得す…
古田龍啓(2022.3)「副詞タシカの語史」『日本語文法』22(1). 要点 副詞タシカが想起文でのみ使われ、タシカニと区別されるようになった経緯について考える。 日国では噺本(17C末)に見られる推量を伴うタシカが挙げられるが、洞門抄物に以下の例があると…
橋本博幸(1990.6)「漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合」『訓点語と訓点資料』84. 要点 サダメテをケースに、「(漢文)直訳語がどのように国語文に受容されていったか」(例えば、意味や用法はそれをそのまま踏襲するのか?)を考える。 訓…
高橋敬一(1991.3)「『宇治拾遺物語』における助動詞「むず」の用法」『活水日文』22. 要点 宇治拾遺物語におけるムズ・ムの異なり、 ムズには終止形終止の例が少なく(しかも「~ようとする」の意に偏り、テムズ・ナムズのみである)、ムには多い。 ムズに…
舩木礼子(2000.10)「幕末以降の土佐方言における意志表現・推量表現形式の変化」『地域言語』12. 要点 土佐方言の意志・推量のロウについて、武市瑞山書簡と『土佐の方言』によって確認したい。 幕末において、 意志・勧誘:未然形ウが多く、一段動詞の場…
高山善行(1997)「否定推量の諸相」『大手前女子大学論集』31. 要点 ジ・マジがある中で、ザラムが必要とされた理由と、ザラム・ザルラムとの関係について考えたい。 小松(1961)に「ザラムがジの文中用法の欠如を補完している」という指摘がある。 ザラム…
篠崎久躬(1993.3)「江戸時代末期長崎地方の推量・尊敬の助動詞」『紀要(長崎県立長崎南高等学校)』26. (篠崎久躬(1997.5)「助動詞:推量と尊敬」『長崎方言の歴史的研究:江戸時代の長崎語』長崎文献社 による) 要点 当期の長崎方言の助動詞について…
山本淳(2003.6)「近世庄内方言の文末助辞ケ」『米沢国語国文』32. 要点 近世庄内郷土本を用いて、文末助辞ケの用法を(渋谷1999と比較しつつ)調査する。 形式的な面から、 状態用言はル形のみ、動作・変化動詞はル・タに接続し、江戸語・東京語より接続先…
渋谷勝己(1999.10)「文末詞「ケ」:三つの体系における対照研究」『近代語研究10』武蔵野書院. 要点 文末詞ケについて、現代東京方言、山形市方言、江戸語の間で対照を行い、山形市方言の用法が広く、東京方言の用法が限定的であることを示す。 東京方言の…
高山善行(2021.3)「中古語助動詞の分類について:「連体ナリ」との承接の再検討」『国語国文学(福井大学)』60. 要点 北原の連体ナリの分類についての疑問点 ① 準体句内にモダリティが生起できるのにも関わらず、連体ナリに客体的表現だけが上接すること …
常盤智子(2013.10)「富田源太郎著『英和婦人用会話』にみられる助動詞「ウ」+終助詞「ワ」について」『近代語研究17』武蔵野書院. 要点 富田源太郎(1867?-1917)による英学会話書『英和婦人用会話』(1914刊)は、当時の口頭語が反映されるものと見られ…
ハイコ・ナロック(2004.10)「メリ、ベシの過去と「連体ナリ」」『国語国文』73(10). 要点 北原の連体ナリを基準とした分類に、承接順序がおかしいものがあることに注目して、メリ・ベシと過去の承接について考える メリ・終止ナリ > 連体ナリ かつ キ・ツ…
原まどか(2014.2)「推定伝聞「なり」と断定「なり」:終止形と已然形の場合」『国語研究(国学院大学)』77. 主張 以下の基準で区別できない2種のナリについて考える 終止連体同形の場合の終止形 已然形が助詞を下接する場合 p.37 已然形の場合、 形容詞本…
森野崇(1993.5)「奈良時代の終助詞「ぞ」について」『国語国文』62(5). 要点 前稿(森野1992)で述べた、中古の終助詞ゾの特徴が、上代のゾにも当てはまるのかを検証する 中古のゾ:「判断の対象として素材化されたモノ・コトについて、表現主体の断定の判…
鈴木薫(2020.2)「中古中世における「むとす」と「むず」」『国語研究(国学院大学)』83. 要点 以下の分類を用意し、ムトスとムズの用法差を記述する 以下、①⑤は現代語のヨウトスルにはなく、ムトス・ムズには存する 意志的 ①自身の意向(文末):(自身が…
劉相溶(2000.9)「形式名詞「ハズ」の意味転成:洒落本を中心に」『専修国文』67. 要点 ハズ関連形式を、元の名詞とのかかわりではなく、ハズ(ダ)内での意味変化内の問題として考察したい 対象資料は洒落本と、捷解新語、浮世床、遠鏡など 中世末期には…
小亀拓也(2021.3)「連体修飾節中に生起しにくい述語形式について」『間谷論集』15. 要点 連体修飾節の統語的制限についての三原(1995)の議論を定量的観点から再検討したい 「判断確定性が最高次である確言のムード表現は連体修飾節中に生起可能であり、…
山本佐和子(2020.3)「中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考」『同志社国文学』92. 要点 ゲナが「本体把握」「内実推定・原因推定」を主張し、ゲナリとの関係性からその意味が生まれる理由を考えたい cf. 大鹿1993, …
佐藤順彦(2011.3)「後期上方語におけるノデアロウの発達」『日本語文法』11(1). 要点 江戸語のノダロウについては明らかな点が多いが、上方語についてはそうではない 上方語における事情推量を表す形式の調査結果 前期→後期にかけて、モノジャ>ノジャの…
佐藤順彦(2009.3)「前期上方語のノデアロウ・モノデアロウ・デアロウ」『日本語文法』9(1). 要点 前期上方語で未発達であったノデアロウの機能を、モノデアロウ・デアロウが担っていたことを主張する 現代語のノダロウの機能は事情推量であり、 前期上方…
仁科明(1998.12)「見えないことの顕現と承認:「らし」の叙法的性格」『国語学』195. 要点 ラシの性格と、妥当な理解について考える まず、ラシを「根拠ある推量、確かな推量」という従来的理解、ひいては「推量」とする理解そのものに限界がある (この…
高山善行(2021.6)「連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して」野田尚史・小田勝(編)『日本語の歴史的対照文法』和泉書院. 要点 ノダとの比較に基づき、連体ナリの記述分析を行い、以下の3点を主張する*1 連体ナリの性質はノダとの…
山田潔(2021.5)「抄物における助動詞「べし」の変容:『毛詩聴塵』『両足院本毛詩抄』の本文比較」『国語国文』90(5) 要点 川村(1995, 1996)の分類にしたがって、毛詩聴塵のベシの両足院本での使用状況を分類する A 観念上の事態成立主張用法 A1 現実世…
幸松英恵(2015.2)「〈事情推量〉を表さないノダロウ:準体助詞ノを含む推量形式に見られる2種」『学習院大学国際研究教育機構研究年報』1 要点 ノダロウはこれまで〈事情推量〉を中心として論じられてきたが、そうでない、ダロウと可換ノダロウがある (彼…
市岡香代(2005.3)「栃木県岩舟町方言における意志・推量表現形式「べ」の用法」『日本語研究(都立大)』25 要点 ベ一形式で意志・推量を表す地域と意志にベ・推量にダンベを分担する地域があり、標題地域はその境界にあたる 形態的特徴、 名詞・形容動詞…
宮崎和人(2019.4)「モダリティーの主観化について:〈必要〉を表す文の場合」澤田治美ほか編『場面と主体性・主観性』ひつじ書房 要点 否定条件形+イケナイ・ナラナイの複合的な形式と、その「省略形」について、その差異を明らかにしつつ、主観化の観点…