ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

小出祥子(2020.3)奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文

小出祥子(2020.3)「奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文」『名古屋短期大学研究紀要』58

要点

  • ム系助辞と終助詞カ・カモの接続関係について考える
  • ラム・ケムの出現環境をまとめると次の通りで、

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p.5

  • ラムカはあるのにケムカは少なく、ケムカモはあるのにラムカモはほぼない
    • これは、「疑問を含む詠嘆」などと説明されるム+カ・カモに性質の差があることを示唆する
  • ラムカの特徴:
    • 「情景がそのまま描写される場合が多く、その情景に詠み手が介入しない」
    • 「詠み手の感情が描写されることはなく、情景自体が詠み手の願望と関わることも少ない」
    • ラムが終止形終止で用いられる場合は2句の因果関係を成して用いられるが、ラムカの場合にはそれはないので、「他の句と因果関係を成して用いられるラムを、因果関係を成さない単文で使用することで感動を表現している」
  • ケムカモの特徴:
    • 「ただの情景の描写ではなく、詠み手の感情に働きかけるような事態が言表されている」
    • カモそのものがいわゆる詠嘆を表すので、辞書的には「疑問」と解釈されるが、意味的には疑問ではない

雑記

  • 文学通信の論文紹介、べんり~