ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

鶴橋俊宏(2013.1)宝暦期歌舞伎台帳にみられる推量表現

鶴橋俊宏(2013.1)「宝暦期歌舞伎台帳にみられる推量表現」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出2003『言語文化研究』2

要点

  • 明和以降の推量表現を調査する
    • 男伊達初買曽我(1753)、諸鞚奥州黒(1752))を資料とする
  • 調査、
    • 非活用語はデアロウなどのデが中心、
    • 動詞はウが多く、デアロウも用いられる
    • 形容詞は専らウ・ベイ
    • 過去推量でタロウが出るのはマシタロウのみで、常体はタデアロウ
      • ツロウ・タデアロウには確認要求の例があり、明和以降のダロウとの関連が注目される
  • 結果のまとめ、
    • ダロウはまだ現れず、デアロウ・ウが中心である
    • 過去推量はタロウよりタデアロウが目立ち、
    • デエショウ・ツロウなど明和以降に衰退するものや、準体助詞を伴うノジャアロウの例も見られる
    • 上接動詞からは、アロウの慣用化が読み取れる
  • デアロウ周辺について、
    • デアロウにタデアロウの例があるので、タダロウが出る可能性は十分にあるが、実際には明治期まで出ない
    • 「意志・勧誘と紛れることがあるものから順次ウ・ヨウに代わりダロウが使われるようになった」ため、紛れることのないタロウはタダロウとなる「誘因が乏しかった」のが要因であろう

雑記

  • ナカリセバ価格という語を知った