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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

村島祥子(2003.3)続日本紀宣命における〈名詞―ナガラ〉

村島祥子(2003.3)「続日本紀宣命における〈名詞―ナガラ〉」『日本文学誌要(法政大)』67

要点

  • 上代のナガラについて、続紀宣命を用いて考える
    • ナガラは名詞ナガラが先行し、連用形ナガラが後発的であることが知られるが、上代には平安初期の「露ながら」が見られず、「神ながら」類に偏る
  • 続紀の名詞ナガラは、
    • 神ナガラが多数、皇子・臣・君・山・海など
    • 万葉集のナガラが様々な述語を修飾するのに対し、続紀のナガラは「思ほしめす」にのみかかる(形式的)
    • 要するに、「天皇、(思惟内容)と、神ながら、思ほしめす」という固定的な構文で、これ以外は万葉集とさほど変わらない
  • 神ナガラの思惟内容は次の3パターンに偏る
    • 歴代天皇による治世の歴史を回顧する
    • 一大事に際して神意を推す
    • 天下太平のための一大政策をうちだす
  • いずれも、「神の血を受け継いだ最高権力者である天皇にしかとることができない行動」であり、「その時まさに天皇が神というにふさわしい行動をとったことを表す」
    • 天皇以外の名詞ナガラもこれに準じて考えることができる
    • 臣ナガラ、奴ナガラ(古事記)も、それぞれに相応した行動に用いられる

雑記